ちょいグローバル話

通訳を十年経験した現役エンジニアの感じる「通訳の使い方が分かっているクライアント」の共通点

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こんにちは。

バイリンガルエンジニアとなることを目指して、日々、英語を学ばれている方や、実際に最前線で活躍されている方は大勢いらっしゃると思います。

案外知られていないのは、世の中、通訳の使い方が、ものすごく上手な方と、その逆がいるということです。

本記事では、現役エンジニアとして働きながら、社内での通訳業務を十年以上経験してきた筆者の視点で、「通訳の使い方が分かっている人が備えている共通点」について語ったものです。

これからバイリンガルエンジニアを目指す上での参考にしていただいたり、あるあるネタとして共感していただけたりしたら幸いです。

筆者と英語の関わり

本職は社内SEですが、新興国にある海外子会社を活用してシステム協業開発を推進したり、全世界の拠点とテレビ会議をしたりする関係上、国内勤務でありながら一日の半分ほどは、英語で業務を推進しています。

そんな筆者は、外大で英語の専門教育を受けたわけでもなく(理系出身です)、ハタチを過ぎるまで海外へ行ったこともないため、「純ジャパ」英語ユーザです。

英語学習は社会人になってからスタートし、自力でTOEIC 900点突破した後、英語公用語圏へ海外駐在を経験しています。

通訳業務としては、メーカー業務全般(特に、経理・営業・物流・生産管理・製造)、ソフトウエア開発業務(要件定義、設計、プログラミング、テスト、リリース、運用サポート)の分野で十年ほどの実務経験を重ねてきました。

「通訳の使い方が分かっている人」の共通点

結論をひとことで言うと、気遣いのできる方というのが、通訳をしていて「この人は通訳しやすい」と感じる人たちです。

具体例としては、以下のようなポイントです。

いいタイミングで区切ってくれる

リアルタイムで話されるトピックを訳すだけでは、通訳としての仕事アウトプットとして、70点くらいだと思います。

残りの30点(もっと大きいかも……)は、話がどのような方向に向かっているのか、先を読みながら、適切な表現を選ぶことです。

通訳者にとって、話の先を読みやすいように論理構成を組み立て、適切なタイミングで区切ってくれる人には、気遣いを感じますし、通訳者としていい仕事ができたと満足感を味わえることも多いです。

日本独自のガラパゴス表現を意図的に避けてくれる

通訳者としての腕の見せ所でもあるのですが、日本語から英語への通訳で一番困るのは、日本独自のガラパゴス表現を使うクライアントです。

最たる例が「また検討しておきます」です。

多くの場合、日本では、遠回しにNOを意味する言い回ししですが、中には、けっこう前向きに発される場合もあり、「本気度」まで、通訳者が読み取ることはできません

こういった日本独自のガラパゴス表現を避けてくれるだけでも、通訳者としては気遣いを感じるポイントです。

同じ言葉を使い続けてくれる

通訳者として負担になるのは、自分が専門ではない分野の話になるとき、次から次へと違う単語を使われることです。

誤訳にならないよう、逐次クライアントへ確認することになりますが、同じことを意味するのなら、会議が終わるまで同じ単語を使ってくれた方がいいに決まっています。

あまりにも馴染みのない話題であれば、会議前に打ち合わせの場を持ち、よく使う表現を通訳者がリストアップするための大切なインプット情報となります。

結局は、通訳って、あまり特殊な業務ではない

英語を勉強するまでは、通訳者のことを特別な存在だと思っていました

どんな話題が振られても、サラリと短くまとめて伝え、会話の流れを乱すことのないプロフェッショナルぶりは、見ていて清々しいものもあります。

実際、通訳を本業とされる方には、卓越したレベルに到達しており、カリスマ的な能力を持った先輩方も大勢いらっしゃいます。

筆者のように、理系出身で、副業的に通訳をしている人間にとっては尚更なのですが、表面上は淡々とこなしているようでも、本記事では取り上げたような気遣いをしてもらえる場合と、そうでない場合では、通訳者にかかってくる負荷には雲泥の差があります

気遣いほぼゼロのクライアントに出会うことも少なくありませんが、そういった場合、難解な日本語から標準の日本語へ、標準の日本語から英語へと、瞬時的に多段階通訳を強いられることになります。

逆説的にいうと、こういったクライアントの仕事を終えた後には、通訳者として得られる経験値はグーンと高まるため、スキル育成的には「気遣いほぼゼロ」のクライアントに出会えることは、実は、ありがたいチャンスでもあります。

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(おしまい)

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Ajikichi

「美味しくなければ旅じゃない」が口癖。旨いものを求め、約三十か国を食べ歩く中で、台湾・ベトナムが誇る「感動的食文化」との運命的出会いを果たす。毎年、十回ほど「外食」と称して渡航。 仕事はエンジニアをしており、デザイン思考が気になる今日この頃。

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