目次
はじめに:「放水燈」の前提知識。関連記事をご紹介
本記事でご紹介する放水燈(fàngshuǐ dēng)は、ものすごく簡単に言うと、基隆の海岸から、灯篭を流すイベント。
そのイベントを理解する上で欠かせない、「オバケ月間」と「基隆中元祭」のことを、まず簡単にご説明する。
「オバケ月間」について
例年八月ごろ(旧暦の七月)、台湾は「オバケ月間」に入る。
一ヶ月という【期間制約】つきで、あの世にいる霊たちが、この世へ帰ってこられるという月間で、以前、記事にもした。
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台湾のいたる都市で、「おばけ」をもてなすための祭事が繰り広げられる。
台湾旅行中、外に置かれたテーブルの上に、色んな飲食物が並べられているのを目にした人もいるかと思うけど、アレだって「祭事」のひとつ。

オバケへの「ほどこし」
「オバケ月間」の風物詩とも言える、街角の光景である。
「基隆中元祭」について
「おばけ」をもてなす祭事の中でも、台湾で特に有名なのが「基隆中元祭」。
こちらの特集記事に、その雰囲気をご紹介している。
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基隆市内で、夜の七時ごろから4時間以上に渡り、盛大なパレード隊が練り歩くというもの。
ディズニーランド顔負けのド派手な電飾車が、続々とお披露目されるというもので、とても先祖を迎えるイベントだとは思えない。
「放水燈」について
パレードが終わるとバトンタッチするかのように始まるイベントこそ、本記事で特集する「放水燈」。
日本語にしたら、いわゆる「燈籠流し」だ。
本記事は、深夜十二時から夜な夜な行われる、ちょっと特殊な雰囲気を放つイベント、放水燈の様子を写真でご紹介すると共に、行き方・見学の注意事項などについても情報発信する。
「放水燈」参加レポート
「放水燈」を観に行かれるなら、きっと「基隆中元祭」とセットで見学、ということになるだろう。
以下は、四時間の大パレードを見学し終えた後の出来事だとして、読み進めて欲しい。
行き方
パレードが終わる時間帯(午後11:30過ぎごろ)になると、「放水燈」会場へ向かう、無料のシャトルバスが出ている。
2018年の場合、シャトルバスの乗り場は、基隆市役所の裏側だったが、年によって異なる可能性もあるので、会場で配布されているパンフレットを入手して確認しよう。
ちなみに、シャトルバスは十分間隔くらいの頻度でピストン運行しており、【満席だから乗れない】という心配はない。
シャトルバスは、道路の混雑具合にもよるが、三十〜四十分の移動時間になり、座席に座れる可能性は五十%といったところ(車内は満員状態)。
灯籠流しの光景
「放水燈」会場へ向かうのは、シャトルバスと、それに乗った観光客だけではない。
パレードを終えた山車も、その派手な電飾をONにしたまま公道を走り、「放水燈」会場へ向かう。

パレードの山車も会場へgo
深夜十二時ごろ、「放水燈」会場へ到着。
ただでさえ雨の多い基隆、このイベントは雨中催行となるケースも少なくないが、幸運なことに、2018年は気にならないほどの小雨。
アジ吉は、三本目のシャトルバスに乗り込んだので、【比較的、早めの到着】かと思ったが、「放水燈」会場の防波堤は、すでに満員。

すでに大混雑
防波堤のコンクリートに座ることができれば、燈籠流しの様子がクリアに見られるのだが、きっと、いい場所をゲットしている人たちは「常連客」で、午後十時頃にはスタンバイしているのだろう。
人々とともに、これから流されることになる灯籠がズラリと並べられている。

家のカタチをした灯籠たち
ド派手な打ち上げ花火と共に、燈籠流しのイベントが始まる。
あいにく、防波堤が「満席」で、かなり離れた場所から見学することになったアジ吉だが、灯籠に着火したことを示すケムリが見えて、イベントの始まりが分かった。

灯籠に着火
けっこうモクモク、すごいケムリが立っている。
灯籠は、いっぺんに沢山流すのではなく、一度につき、一個ずつ。

一つずつ流される
それもそのはず。
人と比較したら分かりやすいが、灯籠のサイズ、かなりデカいのである。

着火してから海面へ運ぶ
どれくらいの「重さ」があるかは分からないが、十人ちかくのメンバーが協力し合って運んでいるあたり、そんなに軽くないことは確かだろう。
何より大変そうなのは、メラメラ燃え盛る灯籠を海水の中で沖へ流れるよう、押し出す作業。

熱くて冷たい作業

燃え盛る炎を、冷たい海水の中、運ばなければならない
この【熱くて冷たい作業】こそ、灯籠をできるだけ沖へ流すための、重要ミッション。
遠くへ流れるほど縁起がよいらしく、せっかく手間ひまかけて制作した灯籠が、すぐに浸水することのないよう、みんな一生懸命。
なお、この灯籠は、同じ名字のメンバーで制作して、流すものと思われる。

たぶん、全員「林さん」
写真は「林さん」の例で、灯籠には名字が明記されている。
見学者たちは、燃えながら流れ行く灯籠を見て、何を考えるのだろうか。

流れ行く灯籠を見守る見学者たち
そもそもこの儀式、【水難事故で亡くなった人々の霊を、陸へと導く】という意味合いがあるそうだ。
見学者の中には、海の事故で亡くなった親族のことを思い浮かべている人々も、きっと含まれているだろう。
忙しい日常生活では思い出すことのない故人へ、思いを馳せるための「仕組み」として、このイベントが存続しているのかも知れないと思った。
帰りの交通機関
「放水燈」会場からは、シャトルバスが出ているので、これを利用すれば良い。
なお、「放水燈」が終わってシャトルバスに乗り、基隆駅かいわいへ戻ってこられるのは、深夜一時とか二時くらいだと覚悟しておこう。
台北駅へ向かう交通手段もないことはないが、基隆で宿を確保した方が、すぐに眠ることができて、体力的な負担は少ないので、こちらがオススメ。
まとめ:行った人だけ味わえる、幻想的な雰囲気
幻想的な雰囲気を味わえる、基隆の燈籠流しが見られるのは、年に一度、この「放水燈」だけ。
少し眠たい時間帯ではあるが、予定に都合がつくようであれば、是非思い切って参加するのはいかがだろうか。
参考)見学時の注意事項
オマケとして、「放水燈」見学時の注意事項も、ご紹介させていただく。
- 良い場所で見学したい場合、午後10時までには、防波堤へ行っておくべし
- 雨天決行だが、大雨の場合には、波が荒れる危険もあるので、無理をしないこと
- 座るための新聞紙やシート、レインコートなどの雨具があれば安心
余談になるが、「放水燈」が終わった後は、そこから徒歩で行ける距離にあるホテルへ滞在するのも一案。
翌朝、近くにある「国立海洋科技博物館」を見学するというプランを考えられても良いかと思う。