ハノイ

【ハノイ旧市街地の観光モデル】ハノイ「名もなき」すっぴん風景をめぐる街歩き《三部作》 第1話:朝のハノイ

投稿日:2018年12月1日 更新日:

はじめに:とびっきり近く、安くなったハノイ

意外と知られていない事実だが、ベトナムは日本に最も近い東南アジア諸国の一つ。

大阪からハノイへは、直行便利用だと、わずか4時間20分

■関空から東南アジアのフライト時間ランキング
※いずれも直行便

  1. マニラ(4時間20分)
  2. ハノイ(4時間25分)
  3. ホーチミン(6時間00分)
  4. バンコク(6時間15分)
  5. シンガポール(7時間)
  6. クアラルンプール(7時間10分)

2018年11月、関空・ハノイのLCC直行便就航により、フライト時間のみならず、フライト料金においても、ハノイが最安価格レベルで行ける旅先スポットになったことは、ベトナムファンとしても「福音」。

アジ吉
往復28,000円(諸税コミコミ)ぽっちの航空券で、本当にハノイまで行けるの? しかも直行便!?

答えはもちろんYESだが、古株のベトナム旅行者としては、なかなか実感が湧いてこない。

あまりにも長年、割高なベトナム航空の航空券や、第三国に立ち寄る経由便に慣れてしまったので、直行便が格安で飛ぶと言われても、素直に「はいそうですか」と反応できない。

関空でVietjetに搭乗後、眼下にハノイの街並みが姿を現したとき、ようやく「事実」として飲み込むことができた

眼下に広がるハノイの街並み

眼下に広がるハノイの街並み

ノイバイ空港に降り立ち、本当に、往復3万円を切るコスパでベトナム時旅行できる時代がやってきたと感動。

ところで、飛行機の窓から眺めると一目瞭然だが、ハノイは、街中が湖や川で満ちた「水都」である。

ハノイを漢字で書くと「河内」

実は、いまハノイがある土地って、ホン川を埋め立ててできたものであり、今日「湖」や「川」として残っているのは、もともとは大きな川(の一部)だという背景があり、漢字の由来にもなっていることは興味深い。

ホアンキエム湖

ホアンキエム湖

本記事では、そんな自然と歴史を感じられるハノイの街が持つ魅力を、以下3つの時間帯シーンに分割して、ご紹介しようと思う。

  • 朝のハノイ
  • 昼のハノイ
  • 夕方〜夜のハノイ

具体的コンテンツとしては、特定の有名観光スポットについてではなく、あくまで「すっぴん」のハノイ旧市街地に迫るという視点で書き下ろされた紀行文であることも、あらかじめご了承いただきたい。

朝のハノイ

ハノイは、例えるなら「おもちゃ箱」みたいな存在。

東洋のものとも、西洋のものともつかぬ、異国情緒あふれる多種多様な風景が、街という、コンパクトな「おもちゃ箱」に、ギュッと収納されたようなワクワク感がある。

朝のハノイは、そんな「おもちゃ箱」をひっくり返したかのように、いろんな楽しい風景が始まるひとときだ。

《午前7時》朝から「競い合う」ような働きっぷりの、ハノイっ子

およそ三十分くらいなら「誤差」の範囲内とみなされ、【タイムカード】なる窮屈なシステムも存在しないのだろう。

それでも、午前七時台には、ハノイの街に電動工具や金槌の音が響き出し、近隣店の職人と競い合うかのように働くハノイっ子たち。

働くハノイっ子 1

働くハノイっ子 1

働くハノイっ子 2

働くハノイっ子 2

働くハノイっ子 3

働くハノイっ子 3

働くハノイっ子 4

働くハノイっ子 4

店を持たない行商人も、品物を【大量に、かつ、整然と】荷台へ積み込んで、街中を歩いて行く。

少しでも気を緩めると、荷台の品物が崩壊しかねない、きわどいバランスを保ちながら、悠然と過ぎ去るフォームに一切の無駄はなく、「熟練」が感じられる。

働くハノイっ子 5

働くハノイっ子 5

働くハノイっ子 6

働くハノイっ子 6

商売道具さえあれば、どこでも商う「したたかさ」は、まるでドラマ『おしん』実写版の世界観

働くハノイっ子 7

働くハノイっ子 7

遠くない昔、日本でもこのような街角風景が見られたのかも知れないが、ここハノイでは、「日常風景」として今日にいたるまで繰り広げられるシーン。

彼ら彼女らの「稼ぎ額」は知る由もないが、そこは【ベトナムの物価】をもって、推して知るべしだろう。

外国人観光客が「安い!」を連呼し、【湯水のように】タクシーを使ったり、高級レストランをハシゴする様子を見ていて、面白いわけがない。

それでも、低賃金労働に耐え勤勉さを崩さないハノイっ子には、「一国の首都」に住まう者としての、凛としたプライドを感じさせるものがある。

《午前8時》本場で食べる「本物」のフォー

ねぼすけな観光客は、まだベッドで夢の中。

街へ繰り出してくるのは、比較的早起きな年配の観光客で、シクロに乗って、観光気分を満喫している。

早起きの観光客が活動し始める

早起きの観光客が活動し始める

あまり暑くないため、街歩きをするには、ちょうど気持ちが良いので、ハノイの早起きは、三文どころか、四文にも五文にも、オトクなのである。

教会前の銅像

教会前の銅像

日光がキツすぎることもないため、写真の発色もよろしく、インスタ映え狙いの観光客は「勝負」に出るべき時間帯でもある。

朝食は、多少並んででも【本場のフォー】を食したい。

どうせなら、ハノイでもトップクラスの実力を誇る、こちらの一軒をと思ってノコノコやって来たら、堂々たる繁盛っぷり。

行列が短くなることはない

行列が短くなることはない

行列は、まるで全員が【動く歩道】に乗ったかのように、ゆっくりではあるが、常に動き続けている。

何なのだろう、この異常に高い回転率は。

厨房を見て、謎はすぐに解けた ——— 客席に空きが出ようが出まいが、客から注文を取ってフォーを作り、できたフォーから次々、手渡してしまう「ワイルド」接客。

フォーを受け取った後、全てのサービスは、お客サイドの責任、客席をゲットするのは、あくまでも【自助努力】でというスタイルなのだ。

念願の本場フォー

念願の本場フォー

順番待ちの客がいることを知っているので、飲食中の客は皆、フォーの味を堪能しながらも、無口で素早く食べ終え、まるで「バケツリレー」のような滑らかさで、空席がうまい具合にリレーされている。

ハノイでしか味わえない食感の麺

ハノイでしか味わえない食感の麺

フォーは、包丁で縦横に無数のスジを入れられた牛肉が、あっさり風味の出汁をよく吸い込み、まるでスープに溶解しているかのよう。

シコシコやわらかい麺を口にすると、至福のひととき。

ベトナムでは、器に口をつけないと書くガイドブックが多いけれど、この店では、ベトナム人も、器を持ち上げて、最後の一滴までスープを飲んでいる

それだけ美味しいということなのだろう。

《午前9時》ことごとくジャンル細分化の進んだハノイの個人商店

まるで朝顔の開花みたいに「あいまい」なタイミングで、ちらほら営業し始める、ハノイの個人商店。

一店一店の「特定ジャンル化」が進んでおり、ニッチ度がものすごい

ハノイにある専門店の「百科事典」を書こうと思えば、それだけで文庫本一冊の分厚さになると思う。

極限にまで細分化された結果、圧倒されそうになる店舗数へ膨れ上がってしまったというのが、今日、いわば「旧市街地」と呼ばれるエリアを形作る下町風景なのだろう。

「フルーツジュース」専門店

「フルーツジュース」専門店

「マネキン」専門店

「マネキン」専門店

「将棋ボード」専門店

「将棋ボード」専門店

「扇風機修理」専門店

「扇風機修理」専門店

本当に需要があるのか?と、余計な心配をしたくなるマニアックな品物を、本当に、そのジャンルだけ扱ってる【潔さ】が素晴らしい。

ハノイで長年暮らしている地元民であれば、おそらく個人の顔(店主)と、商売(品物、サービス内容)が、ある程度、一致するのではないか。

《午前10時》長い夜が開け、一斉に「放たれる」ペットたち

ハノイの街が一段と活気づくのは、ほとんどの個人商店が開店準備を終える午前十時ごろ。

アジ吉
これだけの(数の)動物、ハノイの密集した住宅地、一体どこに「かくまわれて」いたんだろう?

早朝の静寂からは、その「気配」がまったく感じられなかったけれど、あきれるほど多くの動物たちが、軒先に「放たれ」始めるのも、この時間帯。

リス

リス

ヒヨコ

ヒヨコ

トリ

トリ

子ワンコ

子ワンコ

もふもふワンコ

もふもふワンコ

この子たちも、夕方になれば、ふたたび影も形も見えなくなってしまう。

動物たちが家屋の中へ【家族同然】しまい込まれるためであり、ハノイっ子が動物をどっぷり愛玩していることを垣間見られる。

余談をすると、食欲おう盛なハノイっ子のニーズを受けてか(?)、犬・猫・ハト・蛙など、日本では食さないような動物の肉を提供するレストランが点在しているが、ほとんどの観光客は、そういったスポットには立ち寄らないだろう。

ベトナム人と会話をしていると、「散歩中、気をつけないと、食用に誘拐されちゃうよ」というジョークも飛び出すほど……

第2話《昼のハノイ》へ続く。

眠そうなワンコ
【ハノイ旧市街地の観光モデル】ハノイ「名もなき」すっぴん風景をめぐる街歩き《三部作》 第2話:昼のハノイ

目次1 あらすじ:本記事について2 昼のハノイ2.1 《午後1時》ハノイっ子が昼寝をガマンしてでも食べたい一品2.2 《午後2時》地元ハノイっ子のボランティガイドに案内してもらう展示会2.3 《午後3時》ベトナム男子の特権? 「お茶タイム」 ...

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(おしまい)

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Ajikichi

「美味しくなければ旅じゃない」が口癖。旨いものを求め、約三十か国を食べ歩く中で、台湾・ベトナムが誇る「感動的食文化」との運命的出会いを果たす。毎年、十回ほど「外食」と称して渡航。 仕事はエンジニアをしており、デザイン思考が気になる今日この頃。

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