台北の朝はいい。
まだ空気が新鮮で、あちこちにて営業する朝食専門店からは、パンを焼くような香ばしいにおいが漂っており、幸せな気分になれる。
昔なら、ガイドブックで人気の朝食店で並ばないと気が済まなかったけれど、台湾を100回以上訪問した今となっては、地元っ子が通うような店で、サクッと済ませることが増えている。

朝食は「JSP呷尚宝」にて
中でも、アンパンマンそっくりのマスコットキャラで有名な「JSP呷尚宝」のハンバーガーは大好物 ── カリッとした表面を破ると、パンの下に埋もれているジューシーな野菜や肉が顔をのぞかせ、【一日の始め方】としては、このハンバーガーをかじる以上にパーフェクトな方法を知らない。
たったハンバーガー一つで幸福感を味わえる「燃費」良き価値観をもって生まれたことに感謝しつつ、朝食後、適当なバスに飛び乗った ── 最近では、適当なバスに飛び乗り、車窓が気に入ったエリアで下車するという、ランダムでユルく、かつ、安上がりな台湾の楽しみ方に目覚めた。

「海光新村」駅でバス下車

バス停の傍に吊るされていたペットボトル
この日、下車したバス停は、「海光新村」駅。
小さな商店街が車窓をかすめたことが、バスを降りようと思い立った動機だ。

商売の神様
下車してすぐの宝くじ屋には、いかにも金運がよくなりそうな、神様の絵 ── 宝くじは買わないけれど、金運にあやかりたいものである。
それでは、バスの車窓から気になった商店街と、そのかいわいエリアをそぞろ歩きしてみよう。
目次
「葫蘆堵市場」人々の生活に溶け切った、古くて、小さな商店街
台湾旅行を通じて感じる「不思議」の一つは、個人商店の強さ。
(個人商店の集合体である)商店街はもちろんのこと、道端でフラッと営業する屋台や、決まった場所・時間に開かれる朝市や夜市など、個人商店の存在感は圧倒的。
バスの窓から見つけたこちら、名を「葫蘆堵市場」と言うらしい。

「葫蘆堵市場」
ほとんど消えかけたペンキの文字から、商店街の名前を読めたときは、まるで古文書の解読に成功した考古学者の気分 ── それだけ読み出すのに苦労したし、つまりは、古いということだ。
市場の中で、食事を済ませる地元っ子。

食事は市場で
買い物スポットとしても、食事スポットとしても、地元の暮らしに溶け込んだ市場。
奥行きにして百メートルほどだろうか、小さな市場であることに変わりないが、なぜか、規模以上の賑わいを感じる ── それもそのはず、事実上閉店状態の店が点在する「歯抜け」な商店街ではなく、入居している商店街の大部分がキチンと営業している。

鴨の卵を発見

買い物客

ローカル度では、過去最高級の市場
客層としては年配者が目立ち、この市場へ通うことを習慣づける仕組みが、年配者の健康増進につながり、社会と接点を持ち続けるための「社会インフラ」になっているとも感じた。
ショッピングモールが進出していないから個人商店が元気なのか、逆に、個人商店が元気だからショッピングモールが進出しないのか、定かではないが、台湾の生活環境に感じる魅力ポイントの一つだ。
市場かいわいの散策
市場を出ると、すぐ傍の脇道には、カラフルな提灯。
まるで自分のことを導こうとしているかのようなパワーを感じたので、提灯が並ぶ方向へと、吸い込まれるように歩いていった。

カラフルな提灯
提灯に導かれたのは、何もない路地裏 ── これだけ派手なカラーの提灯が並んでいるからには、この先、ぜったい何かがあるに違いないという冒険心を掻き立てられる。
フィリピンの「サリサリストア」みたいに、品物を小分けの分量にして販売する、小さな商店。

営業中???
シャッターを開けようとしているのか、閉じようとしているのか、よく分からない上、店番の姿もない。
たまらなくユルい雰囲気の漂う、素晴らしき「路地裏」の世界。
ここまで来て、提灯の「理由」が分かった ── 「観音佛祖」という名の廟が建ち構えている。

「観音佛祖」
廟の前では、神様は捧げるための、神のお金を売る店が一軒、ポツンと営業している。
境内には「血圧計」が置かれるなど、高齢者の参拝者が多いことをうかがわせる ── 参拝ついでに健康管理もでき、一石二鳥。

境内も「提灯まみれ」
派手な提灯は、境内にまで続いている。

参拝者の姿も……
もともと信仰心の厚い方ではなく、日本では神社やお寺に通わないけれど、台湾へ来ると、なぜか律儀に祈ってしまう ── 台湾の廟には、カラフルな細工が施され、門戸は常に全開状態で「入りやすい」雰囲気があることも要因だと思う。
アジ吉はいつも同じことを祈っているが、それが何であるかは、秘密にしておこう。
まとめ:今回訪れたスポットの地図情報など
台北駅からでも、三時間あれば、行って帰ってくることができ、周辺の散策も楽しめるエリアだ。
ご参考に、今回訪問したスポットの地図も添付しておく。

地図(広域)

地図(拡大)
「すっぴん」の台北を歩いてみたいと感じたり、ディープな雰囲気を味わうアクティビティを盛り込みたいと感じたりしている旅行者には、ちょうど手頃な散歩スポットにもなると思う。
なお、今回ご紹介したエリアから至近の距離に、「社子島」と呼ばれる、台北市内なのに「島」扱いされている、ユニークなスポットがある。
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