こんにちは。
インターネット掲示板では、IT系資格難易度の上位ランキングを独占する、高度情報処理技術者試験。
圧倒的に受験料が安いのに、圧倒的な社会的知名度を誇ることが、人気の要因にもなっています。
- 試験時間は、朝から夕方まで
- 出題方式は、マークシート方式から記述方式まで
- 受験者の母集団がハイレベル(原則として、受験者全員が、応用情報を突破した相当)
これだけコッテリ絞られる試験って、そうそうないですし、チャレンジするからには、それなりの覚悟が必要ですよね。
本記事を読めば、以下のことが分かるようになります。
- 受験することによって、どのようなリターンを得られるか?
- 合格することによって、どのようなリターンを得られるか?
- 自分は、高度情報処理技術者試験を受験するべきなのか?
ここで触れるメリットは、合格、不合格に関わらず、得られるものです。
「不合格でもメリットがある」と書くと、エッ本当?と思われるかも知れませんが、メリットは確実にあるんです。
目次
- 1 高度情報処理技術者試験に【合格】することのメリット
- 1.1 午前Iが2年間にわたって免除される
- 1.2 入試優遇や、大学の単位認定に使われていることもある
- 1.3 就職活動を有利に進めるための武器になる
- 1.4 手当、一時金、報奨金が支給されることもある
- 1.5 生涯有効な国家資格として、会社を辞めても、ついてきてくれる
- 1.6 業務上、知らないことがあっても、不安に感じなくなる
- 1.7 「未経験だが、やりたい業務」を志願するアピール材料にもなる
- 1.8 上流工程の「視座」を獲得できる
- 1.9 経験してきたキャリアの棚卸しができる
- 1.10 学習能力や自己啓発意欲のアピール材料になる
- 1.11 国家機関誌「官報」に自分の受験番号が記載される
- 1.12 (論文系区分の場合)実務の文章作成能力が格段にアップする
- 1.13 他の資格受験における一部科目の免除
- 2 高度情報処理技術者試験を、結局、自分は受験すべきなのか
知識を体系的に整理できる
義務教育(小学校・中学校)や高校のときには、まずは教科書ありきで、求めなくとも知識を与えられました。
社会に出てからは「教科書」なんて存在せず、ほとんどの方は、直属の先輩からOJTスタイルで教わると思います。
業務に必要なスキルセットが効率的に身につく反面、この方法は、以下のような短所を抱えています。
- 知識が断片的になりがち(業務上、必要な作業領域しか習得できない)
- 学んだことが、自社独自ノウハウである可能性も除外できない(業界標準ではない)
- 身につく知識が、特定の開発言語に依存してしまう(一般性が弱い)
その点、高度情報処理技術者試験は、上述したような短所を克服しています。
国家試験という性格上、大勢の専門家がレビューを重ねた試験内容であるため、コンテンツが洗練されており、中立性も担保されています。
合格・不合格であろうと、こういったカリキュラムに沿って学習した体験は、今後の日常業務でヒントにできることも多く、決して無駄になることはありません。
ITエンジニアとしての表現力を向上させられる
IPAの過去問をチラ見するだけで分かりますが、文章構造はもちろん、文法の面においても「お手本」となるような美ドキュメント。
納期に追われるあまり、そこそこのクオリティで妥協してしまいがちなITエンジニアにとっては、大いに学ぶところがあります。
文章はもちろんのこと、図(組織、業務フロー、システム構成、ネットワーク、データベースなど)においても、その日から自分の業務でパクれそうなアイデアが散りばめられていることもありますので、要チェック。
大勢の専門家が集まって作成した、「お金のかかった」試験問題だから、ハイクオリティの成果物ができあがるのは、当然といえば当然のことですが、そこからアイデアやヒントをパクって、ITエンジニアとしての表現力を高めるという発想ができれば、かなりの成長につながります。
ある意味、高度情報処理技術者試験を受けなくとも、無料公開されている過去問に目を通すだけでも、市販の有料書籍に負けないコンテンツが盗める、お得な情報ソースと言えます。
「がんばり度合い」や「とりくんでいる感」を分かりやすくアピールできる
ITエンジニアとしてのスキルアップを目指して勉強へ取り組むことになった場合、高度情報処理技術者試験という、具体的かつチャレンジングな目標を設定することを是非ともオススメします。
たしかに、専門書を読んだり、ググったりすることでも、ITエンジニアとしてスキルアップを図ることは可能ですが、どうしても「インプット作業」だけで自己完結してしまいがち。
その点、高度情報処理技術者試験であれば、「インプット作業」と「アウトプット作業」の両方へ取り組む必要性があるため、ガチで取り組んでいるという姿勢をアピールできる効果もあります。
高度情報処理技術者試験には「合格」か「不合格」かの2段階しかありませんが、午前I・午前II・午後I・午後IIという4科目構成になっていることを活かし、残念ながら不合格だった場合でも「午前IIまで合格」などと報告をすることで、ポジティブな表現で、自分の取り組みを他者に伝えることができると思います。
高度情報処理技術者試験に【合格】することのメリット
ここで取り上げるメリットは、合格した場合に限り、発生するものです。
午前Iが2年間にわたって免除される
高度情報処理技術者試験のハードルを上げているのは、朝から夕方まで、4科目をすべてクリアしなければならない点。
1科目でも合格点を下回った場合、その時点で、(それ意外の科目を)採点すらしてもらえなくなる鬼畜仕様です。
たとえ全体(午前I+午前II+午後I+午後II)としての合否は「不合格」であっても、午前Iに合格できた場合は、それから二年間は、午前Iを免除してもらうことができます。
4科目が3科目に軽減されるだけでも、負荷の重さは、ぜんぜん違ったものになります(試験会場へ、ゆっくりめに到着できるのも大きな点)。
入試優遇や、大学の単位認定に使われていることもある
入学試験や、大学の単位認定で、評価してもらえるというケースもあります。
大学によっては、受験料を補助してくれるところもあるため、そういったメリットも忘れずに享受できるよう、学生課へ問い合わせるなどして、最新情報を入手しておきましょう。
就職活動を有利に進めるための武器になる
基本情報や応用情報を取得する学生さんは大勢いますが、高度情報になると、人数は一気に減ります。
高度情報処理技術者試験は、スペシャリスト系(三区分)と論文系(五区分)の、合計八区分から構成されますが、狙い目はスペシャリスト系。
◆論文系の高度情報処理技術者試験
- ITストラテジスト
- システム監査技術者
- プロジェクトマネージャ
- ITサービスマネージャ
- システムアーキテクト
論文系は、社会人としての実務経験がなければ、合格は難しいのが現状(来年、学生合格者数はヒト桁という世界)であり、かつ、新卒から、資格内容相当の業務を担当させられることは考えにくいです。
それよりは、ソフトウェア開発現場でフル活用できる、スペシャリスト系の資格を保有する方が、新卒のITエンジニアとして、実利にかなっています。
◆スペシャリスト系の高度情報処理技術者試験
- ネットワークスペシャリスト
- データベーススペシャリスト
- エンベデッドシステムスペシャリスト
スペシャリスト系でも、認知度と人気の高い、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリストを取得しておくと、就職活動を有利に進められるばかりか、 ITエンジニアとして駆け出しの頃から、周囲に一目置かれる存在になるでしょう。
手当、一時金、報奨金が支給されることもある
企業によって異なりますが、高度情報処理技術者試験へ合格することによって、(最高ランク相当の)手当、一時金、報奨金が支給されることが少なくありません。
安くても数万円、高額なところでは数十万円が支給されるというケースを見たこともあります。
興味がある方は、「エンジニア 資格 手当」などでググると、関連情報がヒットしますよ。
ほとんどの場合、「入社前」に取得した資格は支給対象外になるため、高額になる資格は、会社に入ってから取るなど、せっかくの「ご褒美」をゲットし損ねないように気をつけたいですね。
生涯有効な国家資格として、会社を辞めても、ついてきてくれる
生涯有効な国家資格として、会社を辞めた後でも持ち歩ける、心強い「武器」になります。
「資格と実務は無関係なので、取得する意味がない」と言うネガティブな方もいますが、本当にそうでしょうか?
転職時の面接試験、あるいは、フリーランスとしてやっていくとき、もし同じようなスペックの面接候補者が複数人いたら、国家資格保有者にチャンスを呼び込む「最後のイチオシ」になることも、十分に考えられます。
例えば、ネットワーク管理を十年間やってきた経歴に加え、ネットワークスペシャリストを保有していれば、理論に裏付けられた実務経験があることを客観的にアピールできます。
フリーランスになっても、名刺に有資格者であることのアピールができるなど、活用の仕方次第で、いろんな利用価値が生まれることにも着目しておきましょう。
業務上、知らないことがあっても、不安に感じなくなる
日進月歩のスピードで、テクノロジーが進歩するIT業界。
五年前の常識は、もはや「非常識」になっているということも珍しくなく、トレンドが激しく移り変わる状況です。
(他業界と比べて)変化が激しい分、知らない知識に出くわす可能性もそれだけ大きくなりますが、高度情報処理技術者試験へ合格している場合、「有資格者の自分でも知らなかったんだから、大丈夫」という、一つの判断基準を自分の中で持てるようになります。
知らなかったことは、その都度覚えればいいだけなのですが、資格を保有することは、心理的ゆとりを生み出す効果があると思います。
「未経験だが、やりたい業務」を志願するアピール材料にもなる
年功序列が色濃く残る日系企業では、若手の場合、なかなか上流工程を任せてもらえるチャンスが巡ってこないケースもあります。
そんな中、高度情報処理技術者試験(例:プロジェクトマネージャ)に合格することで、ただ単に「やりたい」という熱意だけで訴えるよりも、強い説得性を持ち、自らのポテンシャルを周囲へアピールできるようになります。
逆に、高度情報処理技術者試験に合格していても、熱意が十分伝えられなければ、新しいチャンスを獲得できないことも考えられます。
上流工程の「視座」を獲得できる
高度情報処理技術者試験は、上流工程エンジニアの業務領域に関する出題内容が多く、上司が考えていることの背景を、「深読み」出来るようになるというメリットもあります。
業務で与えられた指示を鵜呑みにしているだけでは、評価されるアウトプットをうみだすことはできないでしょう。
試験勉強で得られた知識を、日常業務に重ね合わせることで、アウトプットの品質を高め、本人の努力次第では、周囲から一目置かれる存在になるでしょう。
経験してきたキャリアの棚卸しができる
ベテランのITエンジニアの場合、高度情報処理技術者試験へ合格することは、過去の実務経験を体系的に棚卸したことの証しにもなります。
業務実績に加え、国家試験を獲得することにより、業界全体として標準的なスキルセットを保有していることを示せます。
また、実務経験に加え、国家資格を保有することで、発言内容に信頼性や重みを加えることが可能です。
学習能力や自己啓発意欲のアピール材料になる
高度情報処理技術者試験は、そんな簡単に合格できる資格ではありません。
受験者の母集団レベルが高い(ほぼ全員が応用情報をクリアしたレベル)ことに加え、合格率も、一割台です。
ハイレベルの資格はチャレンジ・合格することによって、学習能力や自己啓発意欲は、周囲の誰もが認めてくれるでしょう。
国家機関誌「官報」に自分の受験番号が記載される
合格者のほとんどはスルーしているようですが、合格後、国家機関誌である「官報」に、自分の受験番号が記載されます。
国家機関誌に掲載されるという人生体験って、そんなに多くないですよね。
人によっては、記念やネタになると思いますので、合格したあかつきには、忘れずにオンライン版を参照して、画面コピーを取っておくと、思い出になるかも知れません。
ちなみに、合格者へは、経済産業省の大臣サイン付きの賞状が進呈されます(六千円くらいの受験料で、これは破格と言える特権)。
(論文系区分の場合)実務の文章作成能力が格段にアップする
合格基準の論文が書けるようになれば、パワポや報告メールも、短時間で書けるようになります。
ストーリーの骨格を考えた上で、字数を自由自在に調整してアウトプットを出すスキルは、ITエンジニアにとって「コア」とも言える重要スキル。
高度情報処理技術者試験(論文系の区分)は、専門家に自分のアウトプットを評価してもらうという、普段、なかなか得られないチャンスです。
もともと文章が得意だったという方は、さらに自信を持って、業務文章の作成へ取り組めるようになるでしょう。
他の資格受験における一部科目の免除
高度情報処理技術者試験に合格すれば、中小企業診断士、弁理士、技術士といった、他の資格受験において、一部の科目が免除されるメリットが得られます。
科目免除のメリットはかなり大きく、自分が苦手とする科目の勉強へ、より多くの時間を投入できるため、受験戦略上、有利な立場になります。
せっかくなので、高度情報処理技術者試験を受ける際には、合格後のキャリアパスとして、他の資格受験についても、あらかじめ想定しておくと良いかも知れません。
高度情報処理技術者試験を、結局、自分は受験すべきなのか
日本社会では終身雇用のシステムが崩壊しつつあります。
人の寿命より、会社の寿命が短いという言われ方をされることもあるように、雇用され続けるための能力を維持するには、会社が倒産しても、自分の手元にスキルを残すことが以前にも増して重要になっています。
高度情報処理技術者試験は、自分のキャリアを手元に残す手段の一つに過ぎませんが、IT業界におけるデファクトスタンダードともいえる国家資格であり、コスパの良さにおいても、これ以上の自己研鑽はあり得ないでしょう。
本記事のメリットで、心にピンとくるものが3つくらいあれば、きっと、やりがいのある取り組みになると思いますし、受験するべきだと提言し、筆を置きます。