目次
はじめに:マニラ駐在員でも近づかないマニラ中華街【ビノンド地区】
マニラ旅行中、たまたまチャイニーズニューイヤーと時期が重なった(二月)ので、「春節」でにぎわう中華街を見に行こうと思った。
困ったのは、マニラ中華街のある【ビノンド地区】について、「治安が悪い」という噂が、インターネットはもちろん、マニラ駐在員をやっている友人、フィリピン人の友人から多数寄せられることである。
まれに観光客が【ビノンド地区】へやって来ることがあっても、大通りにある「ビノンド教会」だけを見て、あとはササッと車で帰ってしまう程度らしい。

「ビノンド教会」にて
どうしようか一晩迷ったけれど、警戒心よりも好奇心が上回ってしまい、自己責任のもと【ビノンド地区】を訪れてみた。
【虎穴に入らずんば虎子を得ず】精神で現地入りし、そこで触れたフィリピン流「春節」の雰囲気について、情報発信してみたいと思う。
【マニラ中華街での春節】体験レポート
マニラの超巨大ショッピングモール、SM Mall Of Asiaで乗り込んだタクシーを走らせること二十分弱、「ビノンド教会」前にて降ろしてもらったら、そこはもう、【ビノンド地区】である。
はやい話、【ビノンド地区】って、スラム街なのである。

「ビノンド地区」の風景
ゴミの浮かんだ運河からは、鼻が折れ曲がりそうになる、不快なにおいが放たれている。
かと思えば、そのすぐ近くでは、イキイキ元気に遊ぶ子どもたちの姿。

ビノンド地区の子どもたち
どうやら、子どもの「遊び相手」になっているのは、かわいそうな小鳥。
飛べなくて、ずんぐりむっくりしているので、おそらくウズラだろうか。

子どもの「遊び相手」、ウズラちゃん
少年の手のひらの中におさまる、ウズラちゃんの「運命」やいかに。
無邪気な少年は、飛べるハズと思ったのだろうか、ウズラちゃんを空中に「ジャンプ」させている。

ウズラを空中にジャンプさせて、大はしゃぎ
もう、まさにリアル「三丁目の夕日」を見ている気分。
日本だって、戦後にはこういう光景が日常的に見られた時期もあったのだろう。
「春節」の中華街ストリートの雰囲気
五感にインプットされてくる情報、最初はすべてショッキングな体験だったが、十分もすれば慣れてしまった。人間の感覚って、案外テキトーなもんだ。
さっそく、【ビノンド地区】へやってきた目的である、マニラ中華街の「春節」の雰囲気を味わうツアーを開始。
馬車を引いたウマが、出迎えてくれた。

目の前にウマが登場
ビーチリゾートをのぞいて、見るべきスポットが両手の指でカウントし終えられるほどしかない、観光資源の乏しいフィリピン。大して見るものがない「中華街」でさえも、【観光地あつかい】されている。
外国人はほとんどやってこないが、フィリピン人の中には、アジ吉と同じことを考えて「春節のチャイナタウンの雰囲気を味わおう」との発想にいたるツワモノがいるようである。
この馬車は、そういった「観光客」をゲットするために待機している。
こちらが、中華街のメインストリートとも言える「Ongpin Street」。

中華街のメインストリート「Ongpin Street」
あきらかに東洋系の風景ではあるが、純粋なチャイナタウンと呼ぶには抵抗がある、なんとも混沌としたカオスな街並み。
果物を扱う商店がちらほら視界に入ってくるのは、さすが常夏の国、フィリピンというだけある。

果物を扱う商店も
マンゴーに関しては、フィリピン産のものが一番美味しい。甘みだけではなく、絶妙な苦みが含まれており【引き締まった甘さ】がするためである。
機会があれば、ぜひ入手して、味わってみて欲しい。
「春節」に「商機」を見出そうと頑張る露天商たち
道ばたには、新年シーズンに「商機」を見出そうと、目をドルマークにして、商売を繰り広げる人々の姿。

「ヒヨコ屋」さん
色とりどりのカラフルなヒヨコを販売する露天商。
近くで見ると、ビックリするくらい綺麗に染められている。

ちょっと可哀想なヒヨコちゃんたち
どうやって、これだけ綺麗に染めているのか質問してみたら、塗料の中にヒヨコを放り込むらしい。豪快というか……かるく動物虐待な気がする。
こちらは、花飾りを売る露天商。

「花飾り屋」さん
いろんな国の中華街をいろいろ巡ってきたが、こんな花飾りの小物を見るのは初めて。ひょっとしたら、ここフィリピンの中華街で限定の「レアもの」アイテムかも知れない。
風船を売る露天商も、多数待機。

「風船屋」さん
小さな子どもがねだっては、親に買ってもらっている。
みるからに金運を呼び込みそうな、キンキラキンの飾りを売る露天商。

「金運よびつけアイテム屋」さん その1
よく見ると、洗濯物を干すアレに商品をぶら下げている。ここらへんは、すごくフィリピンらしさがあって、嫌いではない。
こちらの露天商も、自宅で使っている「ラック」をそのまま持ってきたような感じ。

「金運よびつけアイテム屋」さん その2
キンキラキンのアイテムを扱うお店であれば、たいていの国の中華街で見かけるが、よく観察すると、微妙な違いもあって、なかなか楽しい。
「春節」の催し物。ヤル気のなさげなライオンダンスなど
中華街には、それなりにチャイニーズな雰囲気は醸し出されているが、何かが足りない。

せっかくの「春節」といえど、何かしらの「催し物」がなければ、気分も盛り上がらない。ワサビなしの寿司を食べるような、【致命傷的な物足りなさ】がある。
そう思っていると、にぎやかな太鼓の音とともに、ライオンダンスを繰り広げるパフォーマーがやってきた。

ライオンダンス その1
普通にノロノロ歩いて、口をパカパカ開閉させるだけの、少々ヤル気がたりない演技ではあるが、それでも、あるのとないのとでは、全然違う。一気に「春節」感がしてきた。
こっちのライオンダンスは、もっと手抜き。

ライオンダンス その2
口をパカパカすることさえせず、単に行進しているだけである。フィリピンっぽい。
こちらは「龍舞」。

龍がぜんぜん舞わない「龍舞」
マニラの灼熱でバテたのか、ぐったりした「龍」さん。
異彩を放っていたのが、「火噴き」。

「火噴き」
可燃性の液体を飲み込んで、それに着火して炎をつくる、字面どおり「体をはった」大変な商売である。
(余談)世界有数の「写真好き」な国民性のフィリピン人
ところで、フィリピン人は、世界有数とも言える「写真好き」な国民性をしている。

集団セルフィーを決め込むグループ
幼少時から、毎日何枚もの家族写真を「空気を吸うようなアタリマエ感覚」でこなしている彼ら・彼女らは、表情をつくるのがうまい。どの角度で撮影してもらうのがベストなのか「マイ・ベストアングル」を知っている。
恥ずかしがって、妙な表情で映ってしまうことの多い日本人からしたら想像しづらいほど、フィリピンの人々は写真撮影に慣れているのだ。
カメラを向けると、たちまち写真撮影に応じてくれる。

写真に応じてくれる その1
日本文化で言うところの、アレと似ているのかも知れない。
大阪人に撃つフリをすると、たとえ初対面の人であっても、かなりの高確率で「や……やられたぁぁぁ」とリアクションが返ってくるという現象。

写真に応じてくれる その2
レンズを向けた三秒後には、「決め」のポーズ、「マイ・ベストアングル」などの【各種設定】を終わらせてしまう素早さは、本当にフィリピンの「国技」だと思う。
気のせいか、ワンコも「セルフィー慣れ」しているように感じた。

「セルフィー慣れ」したワンコ
こういう光景を目にしていると、日本人は、もっと「写真写り」の英才教育をバシバシ受けないといけない気がして来るのである。
(余談)マニラ中華街で食べてみたもの
マニラ中華街にも、いくつかの中華料理店があったのでトライしてみたが、「合格ライン」だと思うことはできなかった。決してマズくはないのだが、ハイレベルな台湾の中華料理を食べ続けて、舌が肥えてしまったのかも知れない。
店名は本ブログで紹介する価値がないので、写真だけの紹介にとどめておく。

チャーハン

揚げ物

肉系の料理
まとめ:治安、楽しみ方、他国中華街との比較
「マニラ中華街」|結局、心配していた治安はどうだったのか
結局、ひとりで【ビノンド地区】を訪問している間、身の危険を感じるような出来事はなかったし、「どこにでもある発展途上国の街」という印象であった。
たまたま運が良かっただけなのか、それとも、「治安が悪い」との情報そのものを、ガセネタあつかいして良いのかは、正直のところ分からない。
ただ、現地事情を熟知したフィリピン人の間で、【ビノンド地区】はマニラでも危険なエリアとして認知されている以上、気軽に立ち寄るべき場所ではないし、自己責任で訪問するとしても、できれば信頼できるフィリピン人に同伴してもらうに超したことはないと感じた。
「マニラ中華街」|このエリアの楽しみ方
まずは、チャイナタウンの雰囲気を味わってみよう。中華街のメインストリート「Ongpin Street」は、道脇のショップ巡りも十分に満喫しながら歩いても、小一時間ほどで見終えられるコンパクトなエリアである。
歩き疲れたら、隣接したエリアにある市場やショッピングモールをのぞくのも楽しい。
ところ狭しと密集する商店をながめていると、たとえ欲しいアイテムが見つからなくても、日本では目にすることがないような「珍品」と出会えることもあり、興味は尽きないだろう。
特に、上述した二つのショッピングモールは、フィリピン人でも「安い」を連呼するほど激安のショップが集まるスポットなので、日本帰国後、ちょうどよい「お土産話」になるし、バラマキ用のお土産を調達するのにも適していると思う。
「マニラ中華街」|他国中華街との比較
まずは、中華系フィリピン人は、他国の中華系と違って、漢字の読み書きができず、口語による日常会話もおぼつかない人が大半である。
フィリピンが、アジア最大にして随一のキリスト教国であることからも分かるように、フィリピン人の国民性は、西洋文化に影響された部分が多い。たとえ中華系フィリピン人といえど同じで、学校教育を英語で受け、英語に慣れ親しんだ人がほとんどである。シンガポール人やマレーシア人のように、英語も中国語もできて、中華文化をしっかり理解しているという「両立」ではないことを理解しよう。
そういう意味で、マニラ中華街が、純粋な中華文化であると思うことは難しいという結論に帰結せざるを得ない。
お店の人は、漢字で書かれたパッケージ商品を売買しているが、実際のところは、あまり意味が分かっていない。
「春節」のお祭りも、ライオンダンスにしろ龍舞にしろ、見よう見まねでやっている雰囲気であった。
だからといって、マニラ中華街が楽しめない訳ではなく、むしろ、他国の中華街よりも、はるかにローカライズ(カスタマイズ)された個性的中華街を楽しむというのが、このエリアを楽しむコツだと感じた。