ハノイ

【ハノイから日帰り可能、おすすめ穴場観光スポット】古き良き「ベトナムの原風景」を求め、フォトジェニックなドゥオンラム村(Duong Lam Ancient Village)を訪問する旅

投稿日:2018年12月3日 更新日:

はじめに:「ベトナムの原風景」を求める旅へ

一体、どれくらい走ってきたのだろう。

ひたすら北西方向へ進むルートのはずだが、不覚にも、タクシーを走らせて間もなく熟睡してしまい、どれくらい眠ったかも分からなかった。

車窓の景色は、いつの間にか、ごみごみとした「ハノイ市街地」の街並みから、農村地帯のような田園風景へと変わっている。

のどかな風景

のどかな風景

運転手のおじさんは、ところどころ、地元っ子に道を聞きながら「目的地」である、ドゥオンラム村(Duong Lam Ancient Village)ヘ車を走らせてくれた。

片道およそ90分という、Google Mapsの予想時間どおりにドゥオンラム村へ到着。

■タクシーのルート

  • A地点(スタート):ハノイ市街地(旧市街地)
  • B地点(ゴール):ドゥオンラム村
ハノイ市街地からドゥオンラム村へのルート

ハノイ市街地からドゥオンラム村へのルート

タクシーをチャーターしてまで、ハノイ市街地から北西へ50kmも離れた「片田舎」へやってきた理由とは?

早い話、ドゥオンラム村に残るという、古き良き「ベトナムの原風景」見たさであった。

本記事では、ドゥオンラム村にて撮影してきた「ベトナムの原風景」のうち、ハイライト部分を中心にご紹介し、その雰囲気を皆さんとシェアしたい。

ドゥオンラム村

村へ入るには「門」があり、30,000ドン(約145円)の入場料徴収があった。

「ベトナムの原風景」と言いながら、ここもいわゆるレプリカ的に復元された【ヤラセ感】のするスポットか ——— 一瞬、嫌な予感がしたけれど、訪問してみると、それは良い意味で裏切られた。

集落の「シンボル的存在」カトリック教会

「頭一つ」分、ひょこっと飛び抜けた高さがあるため、集落のどこにいても視野に映り込んでくる。

そんな「のっぽ」な建物こそ、ドゥオンラム村の「シンボル的存在」とも言える、カトリック教会。

集落中、大抵のスポットから見える「シンボル的存在」

集落中、大抵のスポットから見える「シンボル的存在」

方向オンチなアジ吉が、ドゥオンラム村を、地図なしに散策できたのは、集落のコンパクトさに加え、このカトリック教会を「コンパス」がわりにできたおかげであると言っても良い。

「ヨーロッパの風景」として考えるにはアジア的すぎるし、「アジアの風景」として考えるにはヨーロッパ的すぎる ------ そんな雰囲気を放つ、異質空間である。

東洋的とも西洋的ともカテゴリできない風景

東洋的とも西洋的ともカテゴリできない風景

フランス統治時代には、この小さな集落に、百家庭もの信者がいたという。

そんなフランス当時時代が終わろうとしている1953年、信者の力を集結して建てられたのが、この教会だった。

ドゥオンラム・カトリック教会

ドゥオンラム・カトリック教会

いわば、フランス統治、最後の「置き土産」と言ってもよかろう。

この教会、決して役割を終えて「引退」したわけではない。

今なお「現役」で、毎週水曜日、礼拝のために集う人々で賑わうのだとか。

ドゥオンラム・カトリック教会(内部)

ドゥオンラム・カトリック教会(内部)

フランス統治が終わってから長い年月を経た今日でも、近隣住民の「心の拠り所」として、あるいは、観光客を楽しませる「ランドマーク」として、人々に影響を及ぼしつづけている。

レンガ造りの古い街並み

赤茶けたレンガ屋根の家が、これまたレンガで組まれた道路沿いに建ち並ぶ街並み。

ノイバイ空港上空へ近づいた飛行機の窓から見る「ハノイの街」、そのもの

アジ吉
飛行機の窓から見た、あの『ハノイの街』はどこにあるのだろう?

外国人観光客の宿泊する、コンクリート製の細長いホテルが建ち並ぶハノイ市街地で過ごしていると、そう頭をかしげることになるのだが、こんなところにあったとは……

道路もレンガで組まれている

道路もレンガで組まれている

ベトナム人の「国技」とも言える、【手先の器用さ】が存分に活かされたレンガ組みの道路。

絵本の世界を【実写版】にしたかのような、雰囲気ある民家のドア。

「おとぎ話」的な世界観の木製ドア

「おとぎ話」的な世界観の木製ドア

小柄なベトナム人の背丈に合わせ、ドアがちょっと小さめに作られているあたりも、まるで「テーマパーク」にいるような気分を味わわせてくれる。

道路脇では、物売りのオバサンたちが、自分の「売り場」を広げている。

道路脇で商売する、物売りのオバサンたち

道路脇で商売する、物売りのオバサンたち

そもそも、このドゥオンラム村キョロキョロ周囲を見渡しても、ベトナム人観光客を「ちらほら」見かける程度なあたり、かなりマイナーなスポットであることは確か。

めったに通りかからない観光客だからこそ、一人ひとりにしっかり声をかけ、言葉が通じない外国人相手であっても、物怖じせず、品物の良さをアピールするメンタルの強さはすごい……

集落「ほのぼの感」アップ、動物たちとの出会い

集落散策中、あちこちで出くわす、かわいらしい「住民」たち。

警戒心は強いが、「気だて」の良い子が多く、写真撮影までならギリギリ許してくれる。

ニャンコとにらめっこ

ニャンコとにらめっこ

警戒心が強く、鍋・食器ごしを「条件」に撮影へ応じてくれたニャンコ。

こちらは、首輪で「犬」のように拘束され、若干、ご機嫌ななめのニャンコ。

首輪で拘束されたニャンコ

首輪で拘束されたニャンコ

産まれた家庭によって、どういう「生涯」を過ごすことになるか、少なからず左右されてしまうのは、人間もニャンコも一緒ということだろうか。

ニャンコほど頻繁には遭遇しないが、集落の道路がいたるところ【デカ糞】まみれになっているあたり、そこそこの頭数がいらっしゃるであろうのが、こちら、ウシさん。

ウシさん

ウシさん

ベトナムには、小柄でやせている人が多いけれど、ウシさんも、どことなくそういうカンジ。

「漢字圏」であったことの名残

集落には、ベトナムがかつて「漢字圏」であった名残が散見される。

1800年代後半、フランス統治が始まり、「クォックグー」と呼ばれるアルファベット式のベトナム語表記が普及したことにより、漢字は次第に使われなくなってしまう。

漢字で寺院名が表記されている

漢字で寺院名が表記されている

知識層の中には、「クォックグー」誕生後も、好んで漢字を使い続けた人々もいたようだが、人間の平均寿命が80歳だとすれば、1900年代終盤には、ほぼすべての「漢字が使えるベトナム人」が鬼籍に入ったと考えるのが自然だろう。

今日のドゥオンラム村では、おそらく漢字が読める村民は一人もいないだろうが、漢字のモニュメント類は大切に残しておこうという気風がある。

1933年とある。まだまだ、漢字を使える世代が多く残っていたのだろう

「一片氷心」のモニュメント

「一片氷心」と達筆な漢字で刻まれたモニュメント。

一片氷心 …… 俗塵に染まらず清く澄みきった心、また心境のこと。名利を求めず、汚れなく清らかな品行のたとえ。ひとかけらの氷のように清く澄んだ心の意から。

モニュメントには1933年とあり、この時代には、漢字を使える世代がまだ多くいたのだろう。

スピードに「縛られない」スローライフ

ドゥオンラム村では、(バイクを持っている人もいるが)バイクを持っていない人も大勢

集落がとても小さいので、「自転車で十分」だと言えるし、高齢化の進むドゥオンラム村では、自転車に乗ることで健康が増進されるという【好循環】を生み出している。

自転車で買い物へ?

自転車で買い物へ?

「ノンラー」と呼ばれる、円錐形の帽子。

なぜだか、自転車と「ノンラー」は、大変よく似合う

自転車に乗る人は、皆「ノンラー」を被っている

自転車に乗る人は、皆「ノンラー」を被っている

ゆっくり自転車をこぐ地元っ子からは、「そんなに急いでも、仕方ないじゃない。急ぎ過ぎたら、集落の外に行ってしまうわ」という声が聞こえてきそう。

ドゥオンラム村の人々は、お金はなくとも、時間はたくさん持っていそうな雰囲気。

民家の軒先で見かけたのは、昼寝をしているのか、読書をしているのか、よく分からないほど【動きのない】おばぁさん。

軒先で読書中のおばぁさん

軒先で読書中のおばぁさん

ひょっとしたら、昼寝と読書を交互に重ねていて、同じ箇所を何度も読み返しているのかも知れない。

日本で、馬車馬のように働かされる日々を過ごしていると、こういう【人間らしい】過ごし方が許される場所で、年に一週間でもいいから余暇を過ごせたらいいのにと思う。

人間が知ることのできない「別世界」への入口

集落の中心あたりに、立派な井戸があった。

直径2メートル程度のものだが、地上部分の、いわば「筒」にあたる部分がけっこうゴツゴツしており、近寄らないと、井戸の中まで見えない。

「知らない世界」が広まっている井戸

「知らない世界」が広まっている井戸

「見えそうで見えないもの」は余計、気になってしまうという人間の習性に背中を押されるように、近づいて、井戸を覗き込んだ。

チャポンッ! ビシャビシャ!!

覗き込んだ瞬間、何かの【生命体】が大慌てで隠れた音が聞こえる。

しばらく「いないふり」して、また、そ〜っと覗き込む。

……チャポンッ! ビシャビシャ!!

今度は、亀と魚が水面で泳いでいるのがチラッと見えたけれど、すぐさま気づかれ、水面奥深くへと去って行ったのだった。

井戸は底が見えないほど深く、おそらくドゥオンラム村にも、井戸の中に広まる「別世界」を見たことがある人は一人もいないだろう。

集落には、いくつかの井戸があり、それぞれの井戸の下には、「別世界」がつながっている ------ そう考えると、このちっぽけな集落が、ものすごく広大な空間であるように錯覚されてくる不思議さ。

井戸の数だけ「別世界」がある?

井戸の数だけ「別世界」がある?

「井の中の蛙」という表現があるけれど、逆に、大海の生物はもちろん、人間だって、【井戸の中の世界】のことが分からないのである。

そう考えると、ずいぶんと一方的で、傲慢な表現である。

まとめ:和洋折衷ならぬ越洋折衷の街並みこそ「ベトナムの原風景」

ドゥオンラム村へ来るまでは「ベトナムの原風景」とは何か、鮮明にイメージすることは難しかった。

厳密に言うと、フランス統治によって、ベトナム人が大切にしてきた「ベトナムの原風景」と呼べるものは、とっくの昔に失われているのかも知れない。

それでも、和洋折衷ならぬ越洋折衷のエキゾチックな街並みこそ、フランス統治時代のベトナム人に選択可能だった最大限の【自己主張】手段であったと考えれば、往時の姿がそのままに近い形で残されているドゥオンラム村は、「ベトナムの原風景」と呼ぶに相応しい。

いつまでも、この美しい風景が世代継承されていくことを切に願いながら、筆を置くこととする。

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「美味しくなければ旅じゃない」が口癖。旨いものを求め、約三十か国を食べ歩く中で、台湾・ベトナムが誇る「感動的食文化」との運命的出会いを果たす。毎年、十回ほど「外食」と称して渡航。 仕事はエンジニアをしており、デザイン思考が気になる今日この頃。

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