南国ベトナムでも、朝夕は冷んやりする都市、ハノイ。
だからこそ、ハノイでは鍋料理の文化は大変盛り上がっているのだろうし、暖かいものを口にしたい人々の願いは切実だ。
そんなハノイで、セント・ジョセフ教会から徒歩三十秒という至近距離に、アツアツの揚げ物スナックを扱うお店がある。

「セント・ジョセフ教会」

教会前の銅像
大きな教会の「お膝元」という立地条件も手伝ってか、いつ来ても、地元っ子でにぎわいを見せる。
こじんまりとした店舗のため、店頭(店先)で調理している。
息が白くなるほど冷んやりとした屋外で、アツアツの揚げ物を調理する ── これほど効果的な宣伝はないと思う。

店頭で調理している
実際、最初は「買い食い」予定がなかった通行人も、ハートを鷲掴みにされ、次々お買い上げする光景が繰り広げられるのであった。
こんな「トラップ」が帰宅途中にあるのは、ハノイの人々も大変だなぁと同情。

店頭キッチン「トラップ」にひっかかる人々
最初は同情していた筆者も、まんまと、トラップに引っかかる ── ミイラ取りがなんちゃらというやつである。
タイミングよく店内が空いているのを目ざとく発見し、そのまま吸い込まれるように入店。

店内の様子

店内メニュー
外国人客も多く訪問するのか、店内メニューには、英語が併記されており、分かりやすい。
店内といえど、窓もドアも全開状態なので、実質、屋外で食べているようなものである。

ハノイの朝は、ひんやり
調理場では、次から次へと揚げたての品物がトレイに並べられていくのだが、できあがる以上のスピードで売れていくから、増えるどころか減っていく様子を見るのは愉快だった。

ハサミでカットしてくれる
どうせならアツアツのものが食べたいと思い、揚げたてのものを指差したら、テーブルまで持ってきて、その場でハサミを入れてくれる。

たっぷりハーブ
ベトナム名物、まるで観葉植物のような、もっさりハーブも健在。
これにビールを合わせて、白昼からできあがれるという背徳感・幸福感がたまらない。

Banh goi
一品目は「Banh goi」。
英語ではPillow Cake(枕型ケーキ)というが、その名の通り、枕のような形状をしている。

Banh goiの断面
春雨を短く切ったものと、細かな肉片が、カリカリの殻に包まれた一品だが、なによりもイイのは、食べやすいよう、一口サイズに切ってくれている点 ── ビールも、揚げ物も、進んで進んで困ってしまう。
そのまま突入した二品目は「Banh tom」という、エビ天のようなシロモノで、カリカリのエビが最高。

Banh tom
唯一残念なのは、大間晦日の今日、日本からどん兵衛のそばを買ってこなかった点である ── 上に乗せて食べたら、まちがいなく、絶対に美味しい
三品目は「Banh ran ngot」という、ゴマのまぶされた団子。

Banh ran ngot
中身は、甘いポテトのようなコーンのような味のする、とろとろコロッケみたいな味わいで、もう昇天。
美食レストランが鈴なりになって営業しているハノイでは、いくら胃袋があっても足りない。
そのような中、このお店のように「ひとくちでサクッと」気軽に楽しめるグルメは、貴重な存在といえよう。
ハノイ訪問の際は、食べ歩きルートで、ぜひ立ち寄ってみてはいかがだろう。