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「バンチャンヌン」という名の、ダラット発祥フード
ダラット滞在中は、「ピザ」をよく食べた。
オシャレなレストランで食べる「ピザ」ではなく、露天商が炭火を使ってその場でカリッと焼きあげる、ダラット発祥のB級グルメで、その名を「バンチャンヌン」という。

「バンチャンヌン」の例。色とりどりの一枚
今やベトナム全土に広まった人気フードでもあるが、あくまで、発祥はここダラット。
それを物語るかのように、ダラットに夜がやって来ると、バンチャンヌンの露天商が鈴なりに営業する風景が目に飛び込んで来る。

ダラットには、随所に「バンチャンヌン」売りが路上営業
推測の域を出ないが、おそらくダラットは、バンチャンヌン売りの数と共に、バンチャンヌンの消費量も全国トップではないだろうか。
食べ物にはいっさいの妥協を許さぬ友人が選んだ、本場ダラットの「最高峰」

洋菓子パティシェをしている友人(ベトナム人)が、そう切り出した。
ホテルから十五分以上歩いただろうか、スルーしたバンチャンヌン売りの数は、ひかえめにカウントしても十を超えている。

坂道が多いダラットの街を、なおも歩き続ける友人。
シビレをきらしたアジ吉、つい、妥協をそそのかそうと一声かけたのが失敗だった。

職業料理人をやっている友人は、普段は温厚なのだが、食べ物の話になると、急に手厳しくなる。アジ吉の「妥協」提案も、バッサリ却下されてしまった。
そこまで言うなら着いていこうと「覚悟」し、さらに五分ほど歩いたら、友人が立ち止まった。


これが伝説の「一軒」らしい
プロの料理人である友人に選ばれた「一軒」は、意外や意外、フツーの露天商。
ちょっと拍子抜けしてしまったが、立地に恵まれないわりには、人だかりができている。これは期待できるかも、だ。
一応、地図情報を付与しておく。
当然のことながら、露天商なので、いつもここで営業しているという保証はないが、ベターな情報提供方法を思いつかない。

青いマルの箇所で、夜間に営業している
ひんやり乾燥した「夜の高原」でいただく、最高のアツアツ感、カリカリ感
早口のベトナム語で、おばさんに注文を済ませる友人。

お気楽に一人旅スタイルをメインにやってきたアジ吉も、こういうときばかりは、「ツレ」がいることの心強さを感じずにはいられない。
露天商のおばさんがライスペーパーを炭火にかけると、パチパチという音と共に、香ばしいにおいが、ぷーんと漂ってくる。

ライスペーパーを炭火にかけ、見事な手さばきで調理する
ライスペーパーの上に、バター、チーズ、チキン、乾燥牛肉、卵など、驚くほど多種類の具材が、次から次へと投入されていく。
おそらく、投入するのには決まった順番があるのだろうが、これだけ種類が多いとなれば、レシピを暗記するのだけで、数ヶ月かかってしまいそうだ。

単純に思えたバンチャンヌンだが、調理するには、かなりの手間がかかる

次第に、きつね色に焼き上がるバンチャンヌン
最初は透明色だったライスペーパーが、次第に黄ばんで、きつね色になれば、もう少しで完成の「合図」だ。
最初は「二〜三分で仕上がるだろう」と思っていたバンチャンヌンも、けっこう調理手順が複雑。十分くらい待ったと思う。

これが「ダラット最高峰」の一枚
焼き上げた後は、クレープのように丸めて、食べやすい形にして手渡してくれる。

厚さ1ミリ未満の極薄せんべいといった感じだろうか。カリカリ食感を伴う皮をやぶると、中から、具材が顔を覗かせる。
カリカリ、具、カリカリ、具という食事体験が口の中に広がるというレシピ仕様だ。

「再生紙」で包まれているあたり、ローカルさを感じる
見かけから、「ベトナム風ピザ」と表現されることもあるが、日本で流行している「ピザ」みたいなモチモチ風の食感ではない。こちらは、ライスペーパーに十分な炭火を通して仕上がったカリカリ、ヘルシーな味わい。
そして、これは、ひんやり乾燥した夜の高原で食べるからこそ、美味しいのだと思った。
アツアツ感、カリカリ感が、高原の気候によって、見事に強調され、パンチの効いた味わいとなっており、アツアツの皮をやぶる一口一口が、楽しい。蒸し暑いホーチミンの夜だと、こうもいかないだろう。
ダラットを訪れるすべての人に、味わって欲しい「至福の一枚」だ。