はじめに:「台湾本」のおかげで、ネタ切れせずに済んでいる
ツキイチ頻度で訪台する生活が十年以上つづいている。

毎年そう思っているが、なかなかネタは枯渇しない。産油国のオイルみたいである。

産油国って、こんなイメージ
競争が活発化し、良質コンテンツの「台湾本」が増えている
ネタ切れせずに済んでいる要因は色々あるが、台湾に関するコンテンツを扱う書籍「台湾本」は、その一つである。
近年の台湾ブームもあり、書店では、「台湾本」が平積みにされている光景も珍しくない。「台湾」自体、読み手が豊富にいると同時に、競争の激しい出版ジャンルとなったおかげで、世の中に出る書物のクオリティは確実にアガっていると思う。そして、今後もアガり続けて、どんどん興味深い書物が出てくれることだろう。
読者にとっては、ありがたいことである。
今回オススメの「一冊」
「台湾本」が飽和状態の中、ミスのない選定作業で「一冊」を買いたいところである。
今回は、こちらをご紹介したい。
光瀬憲子著『美味しい台湾食べ歩きの達人』
カラー写真をがっつり掲載した「台湾本」が多いが、「カラフル」本の正反対路線を行く本書。
本書は文庫本であり、冒頭十ページほどカラー写真ページが続いた後、残る二百五十ページはすべて白黒印刷である。
出版不況のご時勢、コンテンツによっぽど自信がなかったら、白黒のグルメ本なんて企画が通らないはずなので、これは相当スゴいこと。
Amazonで現物が届いたときは「ミスったかも」と思ったが……
アジ吉はこの本をAmazonでポチった。

現物が届き、ページをペラペラめくったときは、後悔の念にかられた。
もちろん「文庫本」であることを知った上での購入だったが、実際、手にしてみると、「食べ歩き本」ジャンルで白黒印刷というのは、想像以上にテンションがサガったのである。
その考え方を改めたのは、本書を台湾へ持ち込み、現地で使ってみてからだった。
次項目で詳しく触れるが、実は、大正解の買い物だったのだ。
本書を持参して、台湾旅行が「どう」変わったか
本書をポケットに忍ばせて台湾を歩いてみた。
全七章。基本、一章でひとつの街を食べ歩くストーリー構造になっている。
- 雙連市場、城中市場
- 公館
- 板橋
- 三重
- 淡水・北投
- 基隆
- 左営・美麗島
各章の冒頭に「導入部」があるのは、良かった。
文庫本三〜四ページくらいの長さで、その街の、ちょっとイイ話が綴られている。
ちょうど、MRTでそこへ向かっている移動時間で読み切れる長さので、目的地に到着したら早速、光瀬サンの言葉を景色に重ねて、街歩きを楽しむことができた。語られているストーリーも、有名観光スポットや、名産地といったありきたりコンテンツではなく、台湾生活経験もある光瀬サン独自の視点によるものであり、オリジナル性は高い。

伝説級にウマかったイカスープ
推薦されていた店も、試してみたところは全部美味しく、百回をこえる訪台回数でも出会えなかった「一軒」をたくさん紹介してもらえて、七百円ちょっとという情報料は、破格だと思う。
どういう読者に向いているか
以下のような方は、本書を買ってもゼッタイ後悔しないと思う。
- 台湾は何度も行ったことがある。あるいは、旅慣れており、一人でローカルの店へ行くことにゼンゼン抵抗感がない。本書では……まさに、あなたが喜びそうな店をてんこ盛りで紹介してくれているので、満足行くはずである
- 台湾旅行をすることになった。二泊三日くらいしかないので、あまり台北から離れていない範囲で「食べ歩き」をしたい。本書では……台北そのものに加え、MRT台北駅から十五分ほどでアクセスできる近隣スポットの紹介がメイン。短期滞在でも、台北から手軽にいける街を中心に紹介されているのは、非常に便利
- コンパクトな荷物で旅をしたい。かさばる「台湾本」はうんざり。本書では……サイズそのものが「文庫本」なので、ポケットへ入れて持ち歩くことも可能だ。ただ、小さいから落として紛失したり、置き忘れたりしように注意したい。アジ吉は、二度紛失して、けっきょく本書を三回購入した。三回買っても、ゲットできる情報量のことを思うと、まだ安い
どういう読者に向いていないか
以下のような方は、他の「台湾本」を探した方が良いと思う。
- 台湾旅行は初めて。あるいは、初めてじゃないけれど、旅慣れていないので、ガイドなしで現地の店へグイグイ入るのは抵抗感がある。本書では……観光客は知らないが地元っ子は誰もが知っているような、隠れた「一軒」をガツガツ楽しむかんじ。「上品な店」の紹介本ではない
- 台湾旅行をするかどうか検討するための本を探している。カラフルな写真で、現地に行かなくても、イメージできる「一冊」がよい。本書では……テキストと白黒写真が中心のため、現地へ行かずに「想像力」で読む「一冊」としては限度がある
- 食べ歩き以外の観光要素を求めて「一冊」を探している人。本書では……観光スポットについての情報は、限定的(廟や市場など)。博物館めぐりや、景勝地めぐりといった要素はゼロだと考えたほうが良い
おわりに:本書を片手に台湾を歩いてみた旅行記
アジ吉も、本書を買って、実際に台湾旅行へ持参してみた。
営業時間や定休日の関係で、光瀬サンが綴る「体験」のすべてをなぞらえることは難しかったが、それはむしろ良かったかも知れない。
結果論になるが、本に書いてあることができない変わりに、自分で旅を「カスタマイズ」する場面がぽつぽつ出てきて、旅のオリジナル性、旅後の満足感が両方とも高まったと思う。
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本書を手にした台湾旅行は、きっと、生涯何度も振り返ってみたくなるような、暖かさと深さのある「旅」に仕上がると思う。
値段は七百円くらいと手頃な上、サイズは文庫本なので、旅の荷物としてもかさばらないので、是非購入されてはいかがだろう。