こんにちは。
インターネットのおかげで、世界のどこにいてもフリーランスのITエンジニアとして、仕事を受注できるという、少し前なら考えられなかったような選択肢が登場している時代です。
会社員を十年以上続けている筆者としても、このようなライフスタイルへ憧れる気持ちは強く、いつかは独立するということを目標に、会社員生活を通じてスキルアップに励んでいます。
水を差すようですが、現在まだ学生さんである場合、卒業していきなりフリーランスのITエンジニアを志すのは、避けておくべきという記事を書きたいと思います。
本記事の内容については十分自覚しており、それでも覚悟ができているという場合には新卒からフリーランスのITエンジニアを目指すのもありですが、少しでも後悔のないキャリア選択ができるよう、筆者の社会人経験を交えながら記事にまとめました。
目次
会社員時代を経験することで身につくスキルがある
いくら自由な就労スタイルを重視するからフリーランスを目指すといっても、社会とのつながりをゼロにすることはできません。
一定の社会性がなければ、仕事を成立させられないのは、会社員だけではなく、フリーランスとしても、同じことです。
そして、社会性を効率よく育むには、会社員生活ほどコスパが良い選択肢はないと思います(失敗をしようが給料をもらうことができ、同時に、社会性を鍛えてくれるという場でもある)。
具体的には、以下のようなスキルは、会社員生活を通じて無償(むしろ給料つき)で学ばせてもらうことができるものです。
ビジネスマナー
顧客と接する際の言葉遣い、提案の仕方など、幅広い言い方をすると、いわゆるビジネスマナーというものです。
フリーランスとして駆け出す前には、一通りのビジネスマナーを身につけておくことは必須。
どれだけ技術力の高いエンジニアであっても、その人にビジネスマナーが欠けていた場合、仕事を頼もうとするクライアントはいないと思います。
集団で仕事を進めるスキル
フリーランスには、一人でアウトプットを出していくイメージを抱くのではないでしょうか(筆者もそうでした)?
実際には、フリーランスと言えど、一人で完結できる仕事なんて、ほとんどないと思います。
条件の良い仕事を回してもらうためには、フリーランス仲間でのネットワークを構築することが大切ですし、一人で受注できるビジネスには限りがあるため、ある程度の規模になると、一部の仕事を外注さんに請け負ってもらうこともあるでしょう。
会社員であれば、自分のお金を使わずに、外注さんをうまく活用するノウハウ・スキルがどんどん身につきます。
一方、フリーランスとして外注を活用するとなれば、失敗すると身銭を切ることになるため、思い切って色んなパターンを試行錯誤することが難しくなり、得られる経験値も目減りしてしまいます。
このことから分かるように、会社員であれば、失敗するというパターンを数多く「無料で」経験でき、その豊富な失敗経験から圧倒的スピードで成長できるという強みがあります。
もっとも、会社員だと自分のお金を失うという痛みを伴わないため、学び取るものも少ないのでは?という指摘があるかも知れませんが、そもそも痛みが伴わないと成長できないような人は、フリーランスとして世の中を渡るのに必要なフットワークの軽さに欠けていると言わざるを得ません。
会社員とフリーランスの差として、フリーランスであれば、付き合う人間を自分で(ある程度)選べるという違いはあるものの、人の輪を大切にしなければビジネスを継続することが難しくなるのは、共通しています。
有料の開発ツールに関するスキル
開発ツールの中には、有償である製品が少なくありません。
無料版の開発ツールでもフリーランスをしていくことは可能だと思いますが、有償の開発ツールは、間違いなく使いやすいですし、生産性を高めることに大きく貢献してくれるものです(だからこそ、有償でも使いたい人が出てくる)。
会社員エンジニアをすることの利点には、(会社の経費で)そういった有償の開発ツールを利用する経験を積むことで、自分の技術知識ストックを深めることができる点にもあります。
フリーランスとして、経費を切り詰めてエンジニアをやっていると、世の中に、どれだけ便利な開発ツールがあるかに気づけないままかも知れません。
新卒ほど、いい条件で就職口を見つけられるという日本社会の構造
新卒で企業へ就職し、数年間の実務経験を得てから、フリーランスに転向。
それとは逆に、新卒でフリーランスとして出発し、数年間の実務経験を得てから、会社員へ転向。
いずれも似たようなキャリアパスで、「順番」が違うだけのようにも思えます。
ある意味、その通りなのですが、実際には、「実現困難度」という大きな違いがあることを忘れるべきではありません。
いまの日本社会が売り手市場であるといえど、企業が欲しがっているのは、大学を卒業したばかりの優秀な人材です。
年齢が高かったり、一定ブランクのある経歴であったりすると、まだまだ買い手市場というのが実情。
フリーランスというキャリアが、「実務経験」として認知されるかどうかは企業によってまちまちですが、労働条件・給与待遇の良い(いわゆる大企業とされる)会社の人事部ほど、伝統的・保守的な考え方を持つ傾向にあり、フリーランスとしてのキャリアを評価してもらえるためのハードルも高いと言えます。
新卒時ほど、有利な条件で就職活動を進められるという日本社会の構造上、やはり、第一のキャリアは会社勤めを経験することが安全です。
フリーランスが向いていなかった場合
当然のことながら、フリーランスとして生きていくには、会社員以上に、高い自立心(自律心とも)が必要です。
仕事を獲得するためのアクションを起こすことから、受注した仕事を納期以内に完遂させることなど、会社員以上にシビアな感覚をもって取り組める人間でなければ、フリーランスとして大成することは難しいでしょう。
そして、フリーランスとして成功するための能力が自分にあるかどうか、新卒時には、冷静かつ客観的に判断することは、まだ難しいのではないでしょうか?
社会人経験を数年間積んでみて、週末に副業を手掛けたりしながら、自分にフリーランスとしてやっていくための基礎力ができているかを確認してからでも、キャリアパスを変更することは遅くありません。
ソフトウエア設計と同様、人生設計も、念入りに
新卒時、いきなりフリーランスとしてやっていくことには、思わぬ機会損失が生じ得るというお話でした。
インターネットには、フリーランスとして成功したエンジニアの体験談が派手に出回っている分(多くの失敗談も存在するはずですが、書きたくない・読みたくないという心理が働いてか、インターネット上でほとんど議論されません)、こういった側面にもスポットライトを当てる記事で、警鐘を鳴らしたいという気持ちで執筆させていただきました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。