はじめに:タイ vs. 台湾。どっちも「たい」で始まる仏教国だけど……
七月の三連休、本当は台湾に行きたかったけれど、LCC航空券(往復)が三万円近くする。
一方、飛行機で片道6時間という「遠距離アジア」のタイが、どういうわけか台湾よりも安い。バンコクへのLCC航空券(往復)が、たった二万三千円で販売されていた。

バンコク行きフライトが格安だった
タイは台湾よりも物価が安い。
そして、今回はラッキーにも、現地の友達がホームステイさせてくれることもあり、予算三万三千円(航空券や現地滞在費すべてコミコミ)でタイ旅行できる算段がついたので、出発に踏み切った。
本記事は、そのタイ旅行から帰国後、

というコンセプトで、キーボードに向かった一稿である。
タイという国のこと
本ブログのリピーター読者層には、きっと、美味しいものに目がない人や、「美味しい国」台湾・ベトナムに造詣が深い人が多いのだと思う。タイには馴染みが薄い方が多いかも知れないので、ひとつ補足しておきたい。
「微笑みの国」タイには、13種類のスマイルがあることを、ご存知だろうか。

タイの笑顔は非常に奥深い……
日本人にとってのタイの「相場イメージ」としては、とってもユルく、とってもフレンドリーといったところに落ち着くであろう。それはそれで、決して間違いではないのだが、やや偏った見方だと思う。
タイ人は悲しいときでも微笑むことがある(13種類のスマイルの外部リンクを参照)ように、タイって、意外と「第一印象」がアテにならない国なのだ。
旅のスタートは、バンコク最強のパワースポットから
「30回目」を超えたあたりから、タイの訪問回数をカウントするのをやめてしまった。
今回が「何回目」のタイ旅行になるかは知らないが、最近では、行き先を決めず、空港から電車やバスに乗り、【気が向いた駅で】下車することが多い。

BTSプラットフォームの警備スタッフ
タイ旅行は、思いがけぬアクシデントがつきものなので、どうせ、思い通りにいかないのである。それならば、最初からテキトーに行動するのが、一番ストレスにならなくて、合理的だと気づいたのだ。
今回は、バンコク都心部、BTSのChit Lom駅で下車。

オフィス街の空中を走るBTS線路
このバンコク一等地にある、エラワンの祠(エラワン廟、プラ・プロム)が、最初の立ち寄りスポットとなった。
「一辺15メートルの正方形」という敷地におさまる、ビックリするほどこじんまりとした廟であると同時に、「バンコク最強のパワースポット」として名高い観光名所でもある。
台湾好きの方ならピンと来たかも知れないが、「バンコク版の龍山寺」といった立ち位置だろう。

龍山寺 (注:こちらは台湾の写真)

そう考えながら、「エラワンの祠」を参拝しようという試みである。
【エラワンの祠】バンコク最強のパワースポットを「台湾視点」で参拝
いかんせん「15メートル四方」という、窮屈すぎる敷地である。
「一周」するだけなら三十秒もかからない廟だが、不思議にも、参拝客の人足が途絶えることはない。退屈するどころか、気持ちがワクワク高揚してくるのは、境内を彩る、タイならではの鮮やかな色彩も影響しているだろう。

黄色やオレンジのマリーゴールド
「黄色」はタイの人々が大好きなカラー。
われわれ日本人は、「血液型」から性格判断しようとするが、これは世界的にみても珍しい文化である。たとえば、フィリピンの人々は、そもそも自分の血液型に興味がなく、自分の血液型が何型か知らない。
同じような「珍文化」がここタイにもあって、タイの人々は、自分の生まれた「曜日」を知っている。そして、曜日ごとに「ラッキーカラー」があり、その色の服やアクセサリを見につけることで、運気を上げる効果があるという迷信がある。
曜日 | ラッキーカラー |
月曜日 | 黄色 |
火曜日 | 桃色 |
水曜日 | 緑色 |
木曜日 | オレンジ色 |
金曜日 | 青色 |
土曜日 | 紫色 |
日曜日 | 赤色 |
タイの人々が「黄色」を好む背景には、彼ら彼女らが絶大な信頼を寄せ、大好きだったプミポン前国王の影響が大きい。
プミポン前国王は月曜日生まれなので、そのラッキーカラー「黄色」を身につけることで、プミポン前国王への敬意を払うという意味合いもあった。ちなみに、新国王も月曜日生まれなので、プミポン前国王の崩御後も、タイの風景から「黄色」がなくなることはないだろう。
■タイ国王の誕生日(前国王、新国王)
- プミポン前国王 1927年12月5日(月)
- ワチラーロンコーン新国王 1952年7月28日(月)
「お供えもの」に見る【タイ vs. 台湾】対決
エラワンの祠では、花・ろうそく・線香がセットになった「お供えキット」が販売されている。
花もろうそくも「黄色」なので、エラワンの祠が、まるで「お花畑」のように一面黄色。インスタ映えである。

ローソクまで黄色
いちどお供えしたものは、もちろん、そのまま神様に差しあげて参拝を終えるというのが「タイ方式」。
一方、龍山寺をはじめとする「台湾方式」はどうか。

台湾のお供え物 (注:こちらは台湾の写真)
台湾では、自分が欲しい品物を購入して、一時的にお供えし、参拝や儀式が終わったら、各自で持ち帰るというスタイルが主流である。
お供えものでみると、【タイ vs. 台湾】対決は、台湾のほうがユルいということになる。
「信仰のシビアさ」に見る【タイ vs. 台湾】対決
エラワンの祠、「ご神体」はこちら。
『タイ一択』のサイトに詳しいので、そちらを参考いただきたいと思うが、そもそもエラワンの祠、「仏教国」タイでありながら、ヒンドゥー教の宗教スポットである。
当然、その「ご神体」も、ヒンドゥーの神「ブラフマー」である。

顔が四つ
顔が四つあり、それぞれに対して祈りを捧げることになる。タイの人々の様子をみると、「敬虔」という語義そのもの。間違っても、横からジョークを入れたりすることは許されない神聖さがそこには漂っているのが「タイ方式」である。
神様に接する人々の様子という観点でみたとき、「台湾方式」はどうか。

ハローキティの「ご神体」 (注:こちらは台湾の写真)
少々極端な例になってしまうが、ハローキティの「ご神体」が仏教イベントに出場することもある台湾。
台湾の人々が、崇高なる信仰心で参拝していることは否定しないが、そもそも台湾の仏教、いろいろユルめなのである。
「信仰のシビアさ」でみても、【タイ vs. 台湾】対決は、台湾のほうがユルいということになる。
なお、台湾の宗教観・カミサマ観については、以下の2記事で詳しく書いたので、参考にしていただきたい。
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【レポート】ハローキティも「ご神体」となる、イケイケドンドンな台湾仏教?のお祭りとは
目次1 はじめに:台北下町で迎える、祭りの朝1.1 ジェット機の轟音が轟く下町1.2 祭りの朝2 祭りパレードの構成員たち2.1 ほどこし隊員2.2 京劇メイクっ子2.3 神将:神様のボディガード2.4 山車2.5 イタ車3 ミュージシャン ...
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【廟めぐりの前に知りたい】小さいことガタガタ言わないわりに、「カースト」設定ありの台湾カミサマ【矛盾ワロタ】
目次1 はじめに:台湾旅行必須のアクティビティ、「廟めぐり」を120%楽しんでみる2 台湾のカミサマをとりまく生活環境2.1 台湾のカミサマ住宅事情2.2 設置ポジションで分かる、カミサマ・カースト3 まとめ:同居は大丈夫だけど、上下関係は ...
「課金オプションのガチ度合い」に見る【タイ vs. 台湾】対決
エラワンの祠で、ひときわ存在感を放っていたのは、エキゾチックな衣装をまとったダンサーの姿である。
参拝者は、所定の料金を支払うと、祈りをささげる間、「専属バックダンサー」として、数人の踊り子が舞ってくれる仕組みがあるらしい。

専属バックダンサーという「課金オプション」
これが大盛況で、早朝なのに五メートルほどの順番待ちができている。
参拝者によってダンサーの人数が違うと思ったら、ダンサーの人数は、おさめた料金によって増減する「従量課金方式」という課金オプションだったわけだ。

ダンサー人数は「従量課金方式」
どうやらこれ、祈りの効果を高めたり、あるいは、祈りが叶ったから「お礼」をささげたりする意味合いがある様子。
専属バックダンサーとは別に、「専属バンド」も待機しており、ダンスが始まると、パフォーマンスを披露してくれる。

BGM音楽隊 その1
バンドは「基本料金」に含まれているのか、ダンサー人数の多少に関わらず、音楽を奏でている。
ひょっとしたら、「大口顧客」にはもっと豪華な編成によるパフォーマンスが提供されるのかも知れないが、いち短期旅行者には知る由もない。

BGM音楽隊 その2
エラワンの祠における「課金オプション」がかなりガチだったのには、正直、驚いてしまった。
個人の参拝者に対する「課金オプション」という観点でみたとき、「台湾方式」はどうか。
台湾の廟には、専属のダンサーがつくという話は聞いたことがないし、せいぜい、個人の寄付金か、あるいは、廟内に名前プレートを飾ってもらう程度なのではないか。

廟内で、個人の名前プレートが飾られている様子 (注:こちらは台湾の写真)
以前、台北旅行中に、特定の廟の「檀家」をやっている個人商店が、神将・音楽隊・爆竹隊をセットで派遣してもらう風景を目撃したことはあるが、それ以上の「個人サービス」は見聞きしたことがない。
「課金オプションのガチ度合い」でみても、【タイ vs. 台湾】対決は、やっぱり台湾のほうがユルいということになる。
まとめ:意外とユルくないタイ、意外とユルい台湾
冒頭に、タイって、意外と「第一印象」がアテにならない国なのだということを書いた。
宗教スポットに目を向け、タイと台湾を比較してみたが、タイは意外とユルくないし、台湾は意外とユルいというのが、両国を何度も訪れたことがあるアジ吉の、偽らざるホンネ、感覚である。