バンコクに三日ほど滞在できるのであれば、ぜひとも、半日強の時間を割いて、立ち寄りたいテーマパークがある。
その名を「ムアンボーラーン / Muangboran Ancient City」という。
なんでも、タイ全土の有名な遺跡をギュッと敷地内に再現させ、バンコクから一歩も出ることなくタイ全土観光が味わえるという、忙しい外国人観光客おあつらえ向きの施設だ。
バンコク市内の空を走る電車へ乗る。

「きびしい」駅員
プラットフォームには、少しでも黄色ラインから外のはみ出すと笛を鳴らす監視員がいて、ここだけはタイの「ユルさ」を感じない空間である。
電車の終点駅からは、「ソンテウ」と呼ばれる、タイのローカル乗り物を利用する。

36番の「ソンテウ」
地元っ子にジェスチャー交えて質問したところ、36番に乗るようアドバイスされて乗車。
途中から、完全に舗装されていない車道があったので、砂ぼこりが大変だったこと以外、特に苦労することなくムアンボーラーンへ到着。
目次
「ムアンボーラーン / Muangboran Ancient City」訪問レポート
入場チケットの販売ブースへ。
冷房から暴風が吹き出ており、頭痛がするレベルまで、ガンガン冷やされた室内。

入場チケットの販売ブース
まさかここで、入場前から、ドッキリさせられることになるとは、夢にも思っていなかった。
驚愕の入場料金
ある意味、この日で一番驚いたかもしれない。
入場料、なんと700バーツ(約二千五百円ほど)。

せいぜい数百円だと思っていたので、あまりにも高い入場料へ動揺を隠せなかった。

入場チケット
バンコク中心地から、電車と「ソンテウ」を乗り継ぐこと、一時間半ほどかけてやってきた苦労のことを思うと、今ここで引き返すわけにはいかない。
タイへは数十回訪問したことがあるけれど、タイで「高い」と驚く経験をしたのは、ここが最初で最後だった。
どれも欲しくないんですけど……
清水の舞台から飛び降りるつもりで入場料金を支払って、園内へ。
そこでは早速、次なる試練が待ち構えていた。

係員のおじさんから、「好きなの」を選ぶように指をさされたのが、レンタサイクル。

レンタルサイクル。「好きなの」を選ぶ方式だが……

レンタルサイクルの「在庫」はたっぷりだが……

泥よけは、メッキが禿げ上がっている
在庫は台数豊富なのだが、どれひとつとして「正常」と呼べる状態のものがない。
あれだけの入場料金を徴収しておいて、この仕打ちはひどすぎやしないかと思いつつも、「ベスト」ではなく、少しでも「ベター」な一台を選ぶ作業に着手。

まだ状態がマシだった一台でも、この有様

「住所」、「名前」ってwww
選ぶというよりか、妥協するに近いかんじだったが、選んだものはこちら。
なんと「名前」というステッカーが貼られており、おそらく、昭和時代の日本で活躍したと思しき、数十年前の車体であった。

MTB(マウンテンバイク)

「施錠ルール」がある
ちなみに、追加料金を支払えば、いくぶんか状態がマシなマウンテンバイクを借りるというオプションも用意されていた。
それでも、聞くところによれば、園内で利用するにも、降車時は常時施錠するよう口酸っぱく注意されるあたり、盗難事件に巻き込まれたときのややこしさが脳裏に浮かび、マウンテンバイクはスルー。
それに、園内なのに盗難事件が発生するリスクがあるって、どんだけ治安がやばいんだとツッコミをいれるのに忙しく、テーマパークを楽しむどころではない。
園内ツアー開始
入場前の「イベント」が多すぎて、もう、結構お腹いっぱいな状態でツアー開始。
敷地は莫大な広さを誇り、高額な入場料を支払っただけあってか、かなり見ごたえありそう。

テーマパーク内の様子
園内には大きな木が植えられており、日差しにギブアップしかけたときの、ちょっとした休憩スポット。
入り口からすぐ近くに、「アユタヤ」っぽい石像を見つけて、テンション上がる。

「アユタヤのやつ」っぽい
もちろん「本物」ではないと頭の中では分かっていつつも、想像以上のクオリティ。
来場前は、きっと、あからさまに「レプリカ」と分かるチートな展示品だと思い込んでいただけに、満足度が急上昇。

円錐形の塔
どれ一つとして手を抜いたものはなく、見ごたえたっぷり。

手のひらを返すかのように、さっきまであれほど高いと不満に思っていた気分が晴れ渡っていくのを感じる。
こちらは、なにやら恐ろしい展示物。

「怪物に追われる」の図

モンスターに追われ絶体絶命?
モンスターに終われ、絶体絶命のはずだが、なぜか女性はかなり落ち着いた様子。
莫大な敷地内を走るのは、電気モーター式のカート。

敷地内を走る乗り物
平日であるため、園内はガラガラだったのだが、途中から大量の小学生がやってきたのであった。
おそらく、学校の遠足か何かであろう。

遠足でやってきている小学生
案の定、静寂のムードが根こそぎ失われるが、そういうハプニングも、海外旅行の面白さ。
こちらは、「人」でできた塔?

「人」でできた塔

かなり細かいところまで作り込まれている

ファイターたち
蒸し暑い天候のバンコクが、余計に暑く感じられそうな、むさくるしい戦士たち。
こちらは、珍しいデザインの建物。

少し風変わりなデザインと思ったら……

キリスト教会
キリスト教会らしい。
木陰から顔を出す石像。

木陰の石像
夜に見たら、人影に見えてギョッとしそうである。
テーマパーク内には、街並みが「再現」されたような一角もある。

テーマパーク内に「再現」された街並み
とにかくスケールがでかい。
バンコクからは屋台が排除される動きが進んで久しいけれど、ここテーマパーク内では健在。

タイ名物「路上レストラン」もアトラクション?
タイの屋台も、いつかは、こういったテーマパーク内でしか見ることのできない、「伝説」になってしまうのだろうか。
土産ショップも多数。

土産屋も多数
店が多いわりに、あまり魅力を感じる品物を売っている店がないのは、東南アジア旅行あるある。
ちょっと「真新しさ」のする石の塔。

若干「新しさ」が不自然
数十年くらい経過したら、ちょうどいい感じに汚れてくるかな?
まるで絵画の世界みたいに、水面へ映り込む寺院。

水面に映り込む寺院
炎天下のバンコクにありながら、ビジュアル的な清涼感が得られる(それでもクソ暑いことに変わりはない)。
テーマパーク内の寺院は、中に入ることもできる。

ピカピカに磨かれた床
室内は、清掃が行き届いており、その清潔な状態を維持するのには、大勢のスタッフが雇用されている。
天井がトンガった建屋を見ると、タイ旅行気分が高まる

トンガりは、タイ寺院の特徴
細部まで、見事に作り込まれた像たち。

細部まで作り込まれた像
テーマパーク内には、水上集落を再現したようなスポットもある。

水上の廊下

水上集落っぽいやつ
テーマパーク内のアトラクションであるはずだが、よく見れば見るほど、本物っぽい。
このボートは、展示物っぽく設置されているのだが、実際に使われている。

水上ボートは、展示品じゃなくて、本当に使われているもの
時計を見ると、お昼過ぎ。
腹ペコになったので、ちょうどいいところにレストランがあったかと思うと、大量の小学生がランチ中。

ちびっこ集団……
オーダーをしようと並んでいても、横からどんどん順番を抜かしてくるお子様たち。
小学生が全員、ごはんにありつき始めたころ、ようやく、筆者も自分のランチをオーダーすることができたのであった。

ビールを流し込んで冷却
順番を抜かされてクサクサしたけれど、ビールを流し込むと、気分爽快リフレッシュ。
こちらが「戦利品」と呼びたいほど苦労してゲットしたランチ。

ようやくランチを獲得
ディープなローカルのテーマパークであるためか、本当にタイ人向けの味付けという粗野な味付けをしており、辛いのが苦手な筆者には、刺激が強すぎたかな。
テーマパーク内には、なぜか「民家」があり、その軒先には飼い猫までいる。

テーマパークの中にある民家で飼われている
もはや、テーマパークなのか、普通の集落なのか、区別がつかなくなってくる。
観光客慣れしている様子で、カメラを構えても堂々たる様子。

観光客慣れしている様子
ランチを終え、テーマパーク内の散策を再開。

のっぽな鳥居

民家っぽい?建物
タイには何十回と訪問したことがある筆者。
おそらく、「実物」を観たことがあるとおぼしき寺院も多数あるのだが、あまりにも品数豊富すぎるのと、タイの寺院はどれも同じように見えるのとで、記憶と結びつけることができない不思議な感覚。

まるでレゴブロックみたいなゴツゴツ感
観たことがあるのか、観たことがあるような気がするだけなのか?
もはや、まったく区別ができなくなるカオス感。

南国テイストたっぷりの雰囲気

「マトリョーシカ」のように、建屋が続く……

印象的なフォルム

ピンクの寺院

太陽が反射し、直視できないほど真っ白な塔

丸っこいシェイプが印象的

巨大な魚が、島をぐるり囲む

ゴージャスな寺院

ずっと見ていても飽きないデザイン

用途不明の小屋

塔

炎天下でタイへンそう
もはやタイ版「サグラダファミリア」? いまなお進行中の建設作業
最初は高額な入場料に驚かされたが、こうして敷地内を一周してみると、むしろコスパが良いかもという気もしてきた。
なにせ、タイ全土の遺跡類が、これだけコンパクトな敷地内に集められており、超効率的にタイ全土観光を楽しめるのだから。
そして、「コンパクト」とは言っても、あくまでもタイ全土と比較したらの話であり、テーマパークとしては、自転車や電気自動車を使わなければ、とてもじゃないけれど、すべてを観てまわることはできない規模である。
さらに驚くべきなのは、敷地内で、いまなお建設工事の様子が見られること。

建設中の仏像

建設中の建物
今後も、少しずつ追加を重ねながら、このテーマパークは「バージョンアップ」を重ねていくのだろう。
アトラクションを定期的に見直す(追加する)ことからも、数年ごとに訪問して定点観測するのも面白そうである。