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はじめに:オーバースペック気味な新卒配属が珍しくない時代
こんにちは。
情報システム部(社内SE職)といえど、ここ数年立て続けに、筆者の職場へ、誰もが知っている国立大学(旧帝大を含む)の修士卒が配属されてきます。
大学院進学率が高くなっているのだとは思いますが、「なぜそんなハイスペックで、情シス(社内SE)志願?」と、素直な驚きを覚えました。
社内SEの業務は、どちらかと言えば、地味。
世の中に出る製品を作るわけでなければ、将来、出世コースに乗れる部署という訳でもありません。
むしろ、情報システムって水道やガスといった「インフラ」に近い存在で、普段は「正常稼働していてアタリマエ」程度にしか考えられないため、感謝されることが少ないです。
また、どれだけ出世しても情報システム部長か、それに毛の生えたくらいの役職という「上限」があるため、キャリアをバリバリ上り詰めていきたい人が志願する部署でもないと思います。
「そんなに立派な学歴があるのなら、研究部門や、バリバリの製品開発部隊を志願すれば良いのに」と思う筆者です。
彼ら彼女らの多くは、就職活動段階から社内SE職を志願して、採用・配属されたため、【入社前から社内SEをやりたかった】ということになります。
この状況に、以前、何かの洋書で目にしたunderemployedという英単語を使いたくなりました。
ケンブリッジのオンライン辞書では、以下のように説明されています。
not having enough work to do, or having a job that does not use all your skills
ひらたく言うと、【保有する能力を完全に活かさない仕事に就くこと】、もっと簡単に言えば、【オーバースペック気味な就職】とでも和訳できるでしょうか。
たとえば、フィリピンの一流大学を卒業した若者が、賃金上昇をねらって、先進国(アメリカ)へ行って看護師などへ就業するのが、このケースでしょう。
本記事では、彼ら彼女らが、なぜ新卒で社内SEを志願したかという事情に迫ると同時に、高学歴新卒ならではの「扱いづらさ」と、どう対処するか、筆者なりの工夫集も、取り入れて情報発信しようと思います。
なぜオーバースペック気味の就職活動を? 「真意」に迫る
新人によって理由は異なりますが、概ね、以下のような「志願理由」は共通していました。
間接部門の「ユルさ」、直接部門の「専門スキル」を両方ゲットできるのが社内SEだと考えたから
今や、インターネットの世界では、企業風土や内部事情の情報を簡単に入手できてしまうため、一昔とは比べ物にならないほど、学生さんは多面的に企業分析をしています。
就活サイトや転職サイトの情報を、抜け目なくゲットし、情報処理能力に長けた彼ら彼女らは、以下のような【シゴト観】を形成します。
- 間接部門 有給が取りやすそうだけど、リストラやAI化の影響を受けやすそう
- 直接部門 専門スキルは身につくが、残業で自分のやりたいことをやれなさそう
そして、両方の「イイトコ取り」したポジションこそ社内SEというのが、彼ら彼女らの見解でした。
つまり、有給が取りやすく(間接部門の良さ)、専門スキルも高められる(直接部門の良さ)ので、社内SEこそ、就職先の部署として最強という【持論】です。
そして、できれば大手企業の情報システム部に滑り込むのが「人生すごろく」の「ゴール」というのが、新卒時点にして【今風の若者】である、彼ら彼女らの念頭にはあるようです。
そのポストを確保し、社内SEとして頑張ってくれたら良いのですが、好き嫌いがハッキリしており、わりと意見をズバズバ言うタイプの新人が多く、けっこう手強いです。
少し考えてみれば、すぐにわかります。
バブルを知らず、苦労する両親の背中を見て育った彼ら彼女らは【会社が一生面倒、見てくれる】というのは嘘であることを見抜いており、だからこそ、【プライペートをあきらめない】という理想キャリア像を形成するようになるのは、自然な流れです。
企業によって異なるものの、かれこれ十年以上、社内SEをやっている筆者としては、学生時代に、よくぞそこまで考え抜いて、計算高く意思決定選択して来たものだと、舌を巻くばかりでした。
オーバースペック気味でも、「スペック発揮」へ導くのが難しい
そうやって社内SE志願で入社して来る高学歴新卒には、「計算高さ」ゆえの、使いづらさがあります。
- 興味がわかないことは、テコを使ってもやってくれない
- 残業はしませんと言い切って、「宿題」として与えた業務が遅延気味でも堂々退社
- 社会にある「理不尽さ」を理解できない故の、何を言っても「反論」オンパレード
筆者は教育担当としても彼ら彼女らと接する立場上、苦労をすることが未だに耐えないのですが、日々の業務で実践しているアイデアを、数点ご紹介します。
相手の「関心ごと」を知る
幸い、社内SEは、スキルを資格として「資産化」しやすいIT業種であるため、この点を利用します。
彼ら彼女らは「将来、組織を離れても食っていけるスキル獲得」に強い関心を持つことが多く、手頃なところでは、情報処理技術者試験をススめるのが良いでしょう。
すでに任せたい業務が決まっている場合(例:DB接続をともなうWebシステム開発)、それに必要な能力が補えるような資格(例:Oracleマスター)を選定してあげ、ヤル気を引き出すのも一案です。
もともと地頭が良く、情報処理能力は高い方だと思うので、短期間で「合格」という成果が出せ、本人の自尊心や意欲を高められることが期待できます。
相手の「無関心ごと」を知る
ユーザと折衝を重ね、システム仕様を決めるという業務は、社内SEの最重要ミッションとも言えます。
困ったことに、全ての新卒さんがユーザ折衝に関心を持ってくれている訳ではありません。
最悪、【完全なる無関心】であれば、いかにして業務への興味、ヤル気を引き出すかへ腐心することになります。
彼ら彼女らが無関心な業務については、まず、タスク細分化をしましょう。
ユーザ折衝と一言にいっても、さまざまな業務が含まれています。
- ユーザ業務のデータ分析
- 提案内容の資料作成
- デモ用のモックアップ画面作成
必ずしもユーザとの会話だけではなく、データ分析、資料作成、簡単なhtml画面作成など、思いの外、いろんな種類の仕事が含まれており、全部に無関心だということは、稀でしょう。
小分けにしたタスクの中には、興味を持ってくれる仕事が含まれていることも十分に考えられ、うまくできなくても、まずはトライしくれただけでも大褒めすることが大切。
新卒さんは職場や先輩を選べない分、我々「先輩社員」も、新卒さんを選べないのは制約条件だと割り切っていくことが大切なのかなぁと思います。
まとめ:人材育成は、自分自身の成長に一番つながるのかも……
まだまだ「先輩社員」としては見習い中の筆者です。
理屈っぽい高学歴新卒さんの扱いには、正直、四苦八苦することもあります。
説得するよりは納得してもらうことをモットーに、時間をかけて、一つ一つ対話するしかないのかなぁ、と最近は思います。
仕事を小タスクに分解し、任せられる領域をうまく見つけて、褒めることによって本人のスイッチをON状態にすることができれば、双方が楽しく仕事できるようになります。
たまには【理不尽さ】に怒りたくなることもありますが、人材育成を通じて成長するのは、実は、(先輩社員の立場にある)自分自身かも知れないと思い、日々を笑って過ごそうと努力中です。