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はじめに:通り過ぎるはずの街で、美グルメを偶然発見
MRT構内でよく見かける二文字 ——— アジ吉の中で形成されている「新店」(xīn diàn)のイメージと言えば、その程度のものだった。
それもそのはず、「新店」は終端駅なので、プラットフォームの方向(上り・下り)を表現するキーワードにもなる。

「新店」の表示
週末にはサイクリング客でにぎわいを見せる「新店」だが、ふだんは台北市のベッドタウンとして機能し、観光客を寄せ付ける要素は、ほとんど見当たらない。
今回、そんな「新店」で下車することになったのは、烏来観光のついでだったが、駅から徒歩距離内に、とびっきり旨いモツを出す店を偶然発見。
本記事は、台北観光における新しいグルメスポットを開拓することに興味がある方、特に、モツをつまみながら呑むのが好きな方には、有益なコンテンツだと思う。
駅前に広がるB級グルメパラダイス
新店駅の構造は分かりやすい。
出口が一つしかないシンプルさは素晴らしいが、さらに良いのは、そこからすぐ目の前に広がる光明街は、何を隠そう、B級グルメパラダイス。

新店駅すぐの光明街に広がるグルメ天国
通りの左右両サイドに、飲食店がひしめいており、カラフルな看板が、さらにテンションを上げてくれる ——— もっと、ガイドブックやブログで積極的に取り上げられても良さそうだが、ローカル色が濃すぎるせいか、これから先も、認知度は上がりそうにない。
店のジャンルは、様々。

台湾では日本式カレーが人気
台湾で人気の、「日本式カレー」を提供する一軒もある。
飲食店が中心ではあるものの、ときおり、雑貨店や、金物店も目に入ってくる。

レトロな雰囲気のオモチャ屋さん(兼・文具屋?)
昭和の時代であれば、街に一つや二つは見かけた、レトロな雰囲気のオモチャ屋さん ——— 日本の失われた風景が、皮肉にも、台湾では保存されていると感じることはよくある。
この光明街、端から端まで歩くと十五分ほどの通りだが、店の「品定め」も兼ねて、ひととおり散歩をしてみると楽しいし、適度な運動になって、いっそう美味しくグルメを満喫できるに違いない。
店頭のビール瓶に引き寄せられ、「勇伯米粉湯」へ入店
記憶するのに苦労するほど、数多くの飲食店が立ち並ぶグルメストリートである。
意外なことにも、店の「品定め」には、まったく苦労しなかった ——— こちらがその一軒。

なにやら気になる店が……
店から外へ張り出すように、対面式の調理場が設けられた、台湾ではよくあるパターン。
そして、これも台湾では珍しくないことだが、店名が【一目で分かる場所】に掲げられていない。

この「勇伯米粉湯」の看板が目印
店舗の上を見上げると、看板を発見し、ようやく、店名が「勇伯米粉湯」(yǒng bó mǐfěn tāng)であることを知った。
むしろ、看板よりお店の【存在感アピール】に貢献していたのは、まるでボーリングの「ピン」みたいに、調理台の上に並べられたビール瓶。

ビール瓶が「呑める」店であることの証し
飲酒文化が浸透しない台湾では、呑みたければ、コンビニで缶ビールを買い求めて持ち込むしかない店も多いことを思えば、この店の「潔さ」が気に入った ——— 何より魅力的なのは、ビール瓶の横には、大鍋は投入された、モツの具材たち。
比較的少ない種類の部位を扱っていること、コスパが優れていることは、店内メニューから一目で分かる。

店内メニューは7種類のみと、シンプル
簡単には作り変えられない、厚いプラスチック製のメニューに金額を印刷するというのは、ある意味【簡単には値上げしない】という、店側のメッセージ性も感じとられる。
女将は、分厚いゴム手袋をつけており、ときおり大鍋の中に手を突っ込んで、モツの具材をかきまぜている ——— 手で触れないと破れてしまうほど、徹底的に煮込まれているのだろうが、あまりにもズボッと豪快に手を入れるので、火傷をしないか、見ていて心配になる。

大迫力の鍋
鍋が近いので、気になった品を、指差しで注文することが容易だった。
グルメ体験記
カウンターへ腰掛けるなり、まず自動的に出されるのが「米粉湯」(yǒng bó mǐfěn tāng)。

「米粉湯」
注文した覚えはないが、全員オーダーする料理なのだろう ——— 短く切られた麺は食べやすくて、スープもあっさり風味、「前菜」のような存在感だ。
気になって頼んだのがこちら、「大腸」(dà cháng)。

「大腸」
長〜い大腸は、一口サイズにカットされており、甘辛いソース、針ショウガとともにいただく ——— いちど手をつけたら、お箸がストップするわけがなく、そのまま、あっという間のペースで完食。
この日はあいにく、ハシゴ先の飲み屋があったため、他のメニューは「次回の楽しみ」として、取っておくことにした。

こちらは「大腸頭」
大根や揚げのラインナップも揃っており、日本の「おでん」に通ずるものがあると思う。
下校姿の中学生が一人、モツを食べに入店してきたのを目撃したが、アジ吉が大人になってから知った楽しみを、十代前半にして見出した彼の味覚センスには、感服するのみである。
店の住所など
ご紹介した店舗の情報を、以下に掲載する。
店名 | 勇伯米粉湯(新店) |
住所 | 新北市新店區光明街57号 |
営業時間 | 09:00-20:00(月曜日定休、完売次第閉店) |
電話 | 02-2912-3478 |
まとめ:「肉の国」台湾で、もっとモツ専門店は隠れていると確信
これまで、台北エリアで呑むと言えば、萬華(艋舺)や大稲埕といった、いわゆる下町ばかりだと思っていた。
「新店」のような、若い世代の暮らすベッドタウンで、まさかこんなグルメとの出会いがあるとは、嬉しい裏切り。
肉の楽しみ方を深く理解している台湾人ならではの、上質クオリティのモツを愛でながら、心ゆくまで呑み明かす旅の夜も悪くはなかろう。