目次
世界一の空港には、世界一の謙虚さが

チャンギ空港の "rate us" 画面
"Please rate our service."(私たちのサービスを採点してください)などと表示された端末が、トイレ、入国審査カウンタ、空港内のいたるところへ設置されている。
深夜便で到着したのは、シンガポール・チャンギ空港。
ここが「世界一の空港」に輝いたヒケツは、「顧客の声」を大切する謙虚さだろう。

「世界一の空港」チャンギ空港
チャンギ空港の Wi-Fi へ接続。
空港までピックアップしに来てくれることになっていた友人と LINE で落ち合う場所を指定し、無事合流。
トヨタ車が一千万円するシンガポール
国の面積が、東京 23 区とほぼ同一のシンガポール。
交通渋滞を避けるため、自動車税が数百パーセントに設定されており、車体購入価格が何倍にも膨れ上がりる。
(別に上位グレードでもない、普通の)トヨタ車が一千万円くらいすることはザラで、購入した車には、政府から利用許可年数が定められており、この年数が経過すると、車体がまだまだ現役で動く状態でも、使えなくなってしまう制度もあるから、徹底している。
そんなシンガポールで、クルマを保有する友人は、かなりの富裕層。




友人のクルマで向かったのは、マックスウェル・フードセンター。
マクスウェル・フードセンター(Maxwell Food Center)で夕食

「マクスウェル・フードセンター」で食事
アジ吉の「B級グルメ好き」を熟知している友人。
今回の滞在中には、観光客が行く「おシャンティ」なレストランではなく、地元っ子に愛される、大衆レストランへ連れていってくれるという。



卵ちぢれ麺
まずは、卵ちぢれ麺。
バンコクにも、これと似た料理を出す、アジ吉ゆきつけのレストランがあるけれど、ほぼ同じテイスト。
読者の方でも、これと似た料理を食べたことがある人がいるかも知れない。
ワンタンとハムを、ちぢれ麺と一緒に食べると、シアワセな気分になれる。

牡蠣のオムレツ風いため
こちらは、牡蠣に卵をかぶせ、オムレツ風に炒めたもの。
ボリュームが多いため、友人とシェアしてパクパクたいらげる。
あやうく完食失敗になりかけたほど、絶妙なボリュームを終える。ちょっとしたエクササイズである。もっといろんなローカルフードを試したい気持ちを残しつつも、到着初日の疲れもあり、友人に今夜の宿泊先まで送ってもらうことに。
春節まぎわ、「年の瀬」ムードに染まるチャイナタウン
じつは、アジ吉にとって、たぶん十五回目くらいとなるシンガポール訪問。
夕食後、市街地までクルマで送ってもらったが、前回やってきたのは七年前ということもあり、シンガポールのことは、ほとんど覚えていなかった。
何度も訪問したはずのシンガポールが、どう頑張っても思い出せない。
降り立ったのは、チャイナタウン。
チャイニーズ的には、2月16日(金) が元旦だから、まさに「年の瀬」。一年で、この街が最も活気付くシーズンにあたり、ルミナリエばりに華やかな電飾が、街の雰囲気をガラッと変えており、アジ吉にとっては、ますます「思い出す」ことが困難だった。

チャイニーズ・ニューイヤーで賑わうシンガポール
町の中心には、犬の巨大なオブジェ。
ランタンのように、内側にライトが内蔵されており、夜のチャイナタウンを明々と照らしていた。

「年の瀬」で賑わうチャイナタウン
観光客、地元っ子、とにかく圧倒される人だかりである。
書き入れドキなのか、どこもかっこも、物売りの声には気合いが入っている。

中国で「赤」は縁起の良い色
「商売繁盛」、「魔除け」、「縁起が良い」という、三拍子そろったイメージを持つ「赤」。
中華圏では「赤」人気が最強。ここシンガポールのチャイナタウンも例外ではなく、どこのお店も真っ赤っか。

深夜になり街が静まりかえっても、光り輝く電飾
チャイナタウンを散策していると、つい、あちこち寄り道してしまい、気づけば深夜二時。
バーの多くも閉店し、観光客はホテルへ帰ってしまい、街は閑散としてきたが、それでも新年を祝う電飾が OFF にされることはない。
夜が開けるまで、光り続けるのだろうか。
七年ぶりということに加え、チャイニーズ・ニューイヤーの時期が重なったことで、この街への「初訪問」感がますます強まる。GoogleMap がなければ、たちまち「遭難者」というレベルだ。
さほど安くない「格安ホステル」へ

一泊千五百円、寝るだけのベッド
物価の高いシンガポール。
「ベトナムだったら、たぶん、一泊三百円くらい。しかも、もっと清潔だろうなぁ」
そう思いながらチェックインしたのは、チャイナタウンにある、一泊千五百円のゲストハウス。さほど格安でもない気がするが、ここシンガポールでは、まちがいなく「格安」と呼べるレベルではある。
五時間ほど寝るだけなので、わざわざ高い宿をとる必要もなく、ここで十分だ。

幅一メートルもないベッドで寝る
与えられたベッドは、幅一メートルにも満たない、コンパクトタイプ。
寝返りをうって、下へ落っこちないか心配でもあったが、深夜フライトで疲れがたまっていたらしい。
耳元でダイナマイトが爆発しても目覚めないような、深い眠りについてしまった。
明日は、友人が「キミに是非体験させたくて仕方ない」とつくづく語っていたフードコートを訪問する。
爆睡して、元気満タンの朝!


お互い、夜遅くまでブラブラした疲れがたまっていたようだが、睡眠時間を十分に確保できたのでフル回復。
昼一時に合流し、クルマで本日のターゲットを目指す。
ティオンバル・マーケット(Tiong Bahru Market) のフードコートへ到着

ティオンバル・マーケットへ

「そこ、相席させてもらってええ?」
英語でもなく、中国語でもない表現で声をかけられたのは、「ティオンバル・マーケット」のフードコートへ到着後、すぐのことだった。シンガポール人の多くが、英語と中国語のバイリンガル。日本人が漢字とカタカナを融和するのと同じように、両語を混ぜて使うのが、シンガポリアン流。
そして、レストランでの相席に対して、ほとんど抵抗がないという感覚も、シンガポリアン流だ。

莫大な店舗数、「端」が見渡せない

フードコートを見渡すと、横幅3メートル程度の「ちっちゃい店」が星の数ほどひしめく。あまりにも店舗数が多く、敷地が広大なので、いちばん「端っこ」がどこなのか、見渡すことができないほどである。
さて。
ここから、どうやって、「本日の一軒」を選び出すのだろうか。
まさか、全部の店を試したことがあるという人なんて、シンガポール国民全員にヒアリングしてみたところで、ひとりも見つからないだろう。
麺料理「ローミー」を堪能
スタスタあるく友人が選んだのは、「ローミー」専門店。
人気店らしく、長蛇の列ができていた。

ローミー専門店、人気なのか長蛇の列が


シンガポールの麺料理「ローミー」
ビジュアル的には、台湾料理そっくり。
だが、一口目で、これはシンガポール文化で独自に育まれた麺料理であり、似て非なる一品であることが判る。自信満々の友人の発言内容に、けっして誇張はなく、甘辛スープのトロットロ食感、唐揚げ肉片のサクサク食感、両者のコントラストが秀逸。
大満足の一杯。
猛烈な暑さに襲われる
ここは常夏。

巨大なファンが天井にあるけれど、効果なし
「ローミー」の器を空にしたら、汗が滝のように流れ出る。
フードコートの天井には、直径5メートルほどの、見たこともない巨大なファンが大回転。残念なことに、これは見かけ倒しに終わっていて、温風が来るだけで、冷却効果なし。つい 24 時間前まで「二月の日本」に馴染んでいた体には、「暴力的」暑さであった。
次第に、意識がもうろうと…
「このままではいけない」と察した友人は、頭の中で、次にアジ吉を連れてゆくべきお店を超高速で計算した模様。
ケバケバかき氷の「洗礼」
次のハシゴ先めがけ、スタスタあるく友人が向かったのは、かき氷専門店だった。

数十種類のメニューを誇る、かき氷専門店
なんと、30 種類以上のかき氷ラインナップ。
どれを選べば良いか、もはや、目をパチパチさせて、キョドるアジ吉。


これが噂のケバケバかき氷
友人がテーブルへ運んできたのは、色とりどり、ゼリー状の粒々がコンモリ盛られた、見たこともない「ケバケバしい」かき氷。
わるいけど、第一印象では美味しそうだと思えないぞ。
これを選んでくれた友人のメンツを立てるためにも、たとえどんな味がしようと、「完食」と「賞賛」が必要だろう。
期待を超える、まさかの味が

「マズくても『美味しい!』と叫んでリアクションをとらねば」と覚悟を決めて口へ運んだ一杯目のスプーンだったが、もはや、出会いが遅れたことを落胆せざるを得ないレベルの美味しさ。
これまでの人生、ほんとうに損した気がしてくるほどの美味しさ。

果物の種類を説明してくれる友人

甘さと酸っぱさが、お互い、主張しすぎることなく、かつ、遠慮しすぎることなく「ハモって」る。具材のひとつ Soursup という柑橘系のフルーツ果肉こそが、甘酸っぱさの源であった。
器を空っぽにすると、体が内面から冷やされるのを感じ、酸っぱさが、この「涼しさ」をいつまでもキープしてくれそうだった。
さっきまで脱水症状寸前で死にかけていたのがウソのように、シャキシャキ生き返るアジ吉。
フードコートで試した二店舗は、あくまでも、星の数ほど密集するお店の二つに過ぎない。「ここのフードコートをますますディープに開拓したい!」という気持ちを抑えつつ、夕方から別件の予定が入っていた友人とは、ここらへんで別れることに。
昨日は、到着するのが遅くて、じっくり観光できなかったチャイナタウン。さいわい、まだ夕暮れ前なので、いろんなお店にトライする時間的余裕もある。
チャイナタウン de 物見遊山
食後、友人には実家の年末大掃除要員として招集がかかっていたので、ここから先はソロ旅行。
チャイナタウンまでクルマでおくってもらい、まちあるきをエンジョイすることに。



春節の「年の瀬」でにぎわうチャイナタウン
チャイナタウンは、とにかく、人、人、人。
熱心に品定めをする買い物客、セルフィーで夢中の観光客、在庫のダンボールを出し入れする商店スタッフ。一人ひとりが、皆、違うスピードで、違う方向へ移動しようとするので、人の列がぜんぜん前へすすまない。

「年の瀬」で気合いの入る店子

客と店員のかけひき、日本では、あまり見られなくなった光景
年に一度の書き入れドキ。
本気になるのは、売る側、買う側の両方である。
買い食いスイーツ
すさまじい人だかりに、心が折れそうになったとき、デザート専門店が目に入った。
その場でググると、人気店らしいが、いまなら順番待ちなしに入店できそうだ。

人気店らしいデザート専門店「味香園 」へ

デザート専門店のメニュー、スマホの壁紙にしたい!

自分の頭で、すぐ想像できる「デザート」を基準に考えると、そうおもえた。
ところが、店内のメニューを見て、その考えは誤っているので、即座に訂正しなければならないと判った。かるく見積もるだけでも、三十種類ほどのデザートが勢揃い。ぜんぶオーダーするわけにもいかないし、困ったことに、頼りにしていた友人も、さきほど帰ってしまったばかり。
とりあえずは、「食べたい」と直感でおもえるメニューを指差し注文した。

タピオカ、ココナツミルクをからめたマンゴーのデザート

アジアンテイストのあっさりゼリースイーツ
二点のデザートを注文。
いずれも共通して言えるのは、あまりにも薄味であっさりしすぎていて、食後感の涼しさは得られるが、「デザート」と聞いて、日本人が期待するような甘ったるさは楽しめないということだ。
赤道直下のアーバンシティで暮らすシンガポリアンに支持されるためには、甘ったるさよりも、清涼感につながるような、あっさり味覚が重要視されるのかもしれない。
想像とちがっていた「デザート」に、若干がっかりしながらも、その足で夕食レストラン探しへ。
夕食で、ついにブルネイドルを始末

タイガービールを売り込む宣伝ガール

南国の風を受けながらの、タイガービールは格別
どこの店も混雑していたので、選択の余地なく、空席テーブルが奇跡的に見つかった中華料理店へ。
入店するなり、タイガービールのキャンペーンガールから強烈に商品をプッシュされ、一杯注文。

チャーハンだけで腹一杯に…
魅力的な料理が大充実のメニュー。
あれもこれも注文しようと思っていたが、一品目に注文したチャーハンが、おもいのほか「爆盛り」。チャーハンを食べただけで、窒息しそうなくらい、おなかパンパン。たとえ一億円もらえるチャレンジがあったとしても、二品目は不可能という状況に。

会計でブルネイドルをやっつける
食後の会計では、ブルネイドルを使った。
知っている人は少ないが、じつは、ブルネイドルとシンガポールドルは、対等に交換可能である。つまり、1ブルネイドルは1シンガポールドルと同じように使え、その逆もオッケーなのだ。
以前、ブルネイ旅行をしたときに使い残した貨幣(ブルネイドル)が手元にあり、今回のシンガポール旅行でぜんぶ使ってしまいたかった。
べつにブルネイが悪いわけではないけれど、個人的には、一度訪問しただけでブルネイ観光に満足してしまった。
それに、(ブルネイドルから)日本円へ両替すると、レートによっては、かなり目減りする気がして、処分するに、処分できない状況が続いていたのだ。
そのブルネイドルを処分する、絶好のチャンスがいまここにある。
実際、シンガポールでブルネイドルを使おうとして分かったのは、受け取り拒否こそされないが、店、店員によっては、あからさまに嫌な顔をされるケースがあるということだ。「1ブルネイドル=1シンガポールドル」という方程式は正しいのだが、実際のところは、ババ抜きゲームと化している。
レストランの会計時、伝票にブルネイドルをはさんで、ババを押し付けるように支払う。
れっきとした「お金」だけど、さしだすと面倒くさがられるという意味において、日本の二千円札と似ているのかも知れない。