台北駅エリアから北上していくにつれ、大稲埕エリア、大龍峒エリアと、だんだんディープ度合いが深まり、やがては観光客も訪れないようなエリアに到達する ── まるで、潜水艦で海に潜ると、やがては、ほとんど生物の生息しない「深海」へ達するような感覚に通ずる。
その「深海」とも言えるのが、「社子島」と呼ばれる、レッキとして台北の一部であり、かつ、陸続きなのに「島」あつかいという、きわめてユニークなスポット。

地図(広域)

地図(拡大)
社子島は、いわば、二つの川に挟まれる「中洲」のような地形であり、洪水のリスクがあるため、開発から取り残されてきた経緯があり、台北の中でも、異質の雰囲気を放つエリアである。
実を言うと、社子島への日帰り旅行へは、複数の友人(いずれも台湾人)を誘ってみたのだが、全員、「そんな汚い場所に行くのか?」とか「なにもない工業地帯だよ」とかディスるばかりで、結局、アジ吉に同行してくれる人が一人も出てこなかった。

本記事では、謎につつまれた社子島のベールを一つずつはがしていくので、とくとご覧あれ。。
目次
社子島への「上陸」。島内散策
陸続きであるため、社子島へ「上陸」したポイントがどこかは、正直、アジ吉には分からなかった。
本記事の、どこか途中までは台北大陸?、どこか途中からは社子島が始まるという、不思議なシチュエーション。
「自由の女神」のお出迎え
台北から北上し、大稲埕エリア、大龍峒エリアを通過して、半島状の地形、ちょうど「付け根」のあたりにやってきた。
台北都心部からは随分、離れてきたはずだが、まだ「台北101」の印象的なシルエットが、かすんだ大気の中に浮かび上がって見える。

これだけ遠くまでやって来ても見える「台北101」
近くで見るより、こうして遠く離れて見て、初めて本当の「高さ」を実感できる建物なのだろう。
世界一の親日国と言ってもよかろう台湾、街のいたるところで「の」が使われていることは、読者の皆さんにとっても、既知のところであると思う。

謎の広告
こちらの広告、台湾人の「日本好き」なところがよく表れている ── あぁ、台湾旅行へやってきて良かったと思う瞬間のひとつ。
なにやら、台湾で見かけるはずのないモノが見えてきた。

なんと台北に「自由の女神」がいた
後日談になるが、街アートあり、自然豊かな風景ありと、社子島は本当に「自由」な雰囲気があるので、この「自由の女神」も、あながち、場違いな存在ではないように思えてくるのであった。
道路の標識に、「社子島」の評価を見つけ、これから島に入る(もう入っている?)のだという実感が深まる。

たしかに、社子「島」だが、どこから島が始まるのか、分かりづらい
船にも乗らず、陸続きなので「入島」という実感はしないのだが、島はすぐ眼前に広がっている。
個性豊かな仏像コレクション
いま、自分の立っている地面が「島内」なのか「大陸」なのか ── そういうことがまだ気になる旅のスタート地点。
台北都心部では見かけないような、ユニークな神様と出会った。

「上天宮」
交差点にあった、こじんまりとした廟。
なんと、その中で祀られていたのは「千手観音」のように、左右から手をニョキニョキ生やしている(?)珍しいタイプの神様。

千手観音チックな仏像
インド映画に出てきそうな雰囲気を放っている。
そこからしばらく歩を進めたところにあったのが、「地蔵禅寺」。

「地蔵禅寺」
一瞬、ここはバンコクかと錯覚してしまいそうになる、金ぴかの仏像。

まるでタイ? 金ぴかの仏像
様々な色のライトに照らされて、あやしい雰囲気を放つ仏像。
-
ピンクに輝く
-
水色に輝く
-
黄色に輝く
もはや、宗教施設というよりかは、もはやディスコ。
もちろん、普通の廟もあちこちにあって、一安心(?)。

「坤天亭」
思ったよりも長い道のりに、ウォーキングを断念。自転車でチート
最初は徒歩で一周しようと思っていたが、社子島、実際に歩いて見ると、地図で見る「シュッとした地形」の印象とは異なって、かなりデカい。
はやくも根を上げはじめた、我がボディ。

ひたすら車通りの激しい道が続く
「何もない」島のはずが、やたらとトラックが道路を走っている ── のちに分かったのは、島内には多数の工場があり、関西でいう「尼崎」的なスポットであることだった。
もう一つ、明記するに値するのは、社子島では、やたら「黒い犬」と遭遇した。

社子島の「名物」とも言える、黒い犬
野良犬ではないのだが、なぜ島民は皆、競うように「黒い犬」を飼うのだろう ── 台北の都心部とは、明らかに異なる「文化」があることは、大変興味深かった。

かと言って、途中でギブアップしたくもないし、どうしようかと悩んでいたところ、レンタル自転車のスタンドを発見。

運良くレンタル自転車を発見
まるで、砂漠の中でオアシスを発見したような気分 ── 嬉々として、一番状態の良い一台を選び、サドルにまたがったことは言うまでもない。
社子島には「アート島」としての顔もあった
自転車をゲットしたことにより、島内観光のしやすさがグーンと向上。
さっきまで、(炎天下ということもあり)百メートル進むのにヒーコラヒーコラ言ってたことが嘘のように、スピーディに風を切りながら、気分爽快そのもの。
自転車の魅力は、乗り物でありながら、歩くような「きめ細やかさ」で、旅ができることにある ── そのアドバンテージは、社子島観光でも、いかんなく発揮される。

小学校ちかくの壁画アート
小学校ちかくの壁画アートに始まり、社子島は(別に観光の振興をはかったわけではないと思うが)いたるところにアートが見られる。
一度見たら忘れない、印象的なフォルムの「授乳する女性」の像。

授乳する女性
なんの目的で、ここに設置されているかは分からない。
こちらは、民家の軒先にあった人形。

球技中の女性
壁に埋め込まれたボールとセットで、「球技中の女性」を表現している。
インパクトの強さでは、ピカイチだったのがこちら、「神様ロケット」。

「神様ロケット」という斬新なテーマ
見れば見るほど、その不思議な世界観に吸い込まれていきそう。
絵本などのストーリーにしてくれたら、絶対読んで見たい。

神様の顔がツボにはまって腹筋崩壊寸前に
作者の自由な感性が素晴らしい。
「神様ロケット」の下に描かれているのは、どこかで見た覚えのあるキャラクター。

おじゃる丸に出てくる「貧ちゃん」こと貧乏神そっくり
単なる偶然かも知れないが、NHK番組「おじゃる丸」に登場していた、貧ちゃんソックリ。
堤防に描かれた、かかし。

「かかし」の壁画
殺伐としがちな工場密集エリアでありながら、素朴な色使いで、温かい雰囲気を醸し出すのに、貢献している。
こちらは、民家の壁に、まるで定規を使ったかのように、縦横まっすぐに書き連ねられた漢字。

壁面に描かれた大量の漢字
ほとんど意味は分からないが、何もなければ味気ない白色の壁が、レトロ感あふれる、美術作品に変身。
雰囲気ある古民家の屋根で、散歩するニャンコ
社子島の周回路には工場が多く見られるものの、内陸部へ行けば、車の通行量が一気に減って、静かな環境になる。
まるで、歴史的な価値を持っていそうな、古い民家。

古い雰囲気で、味わいあるたたずまいの民家
どこか、竹富島(沖縄県)の雰囲気に通ずるものを感じる。
瓦の屋根で休んでいたニャンコを発見。

ニャンコと遭遇
とても「気のいい」ニャンコで、何枚でも写真撮影させてくれる。
レンズを向けると、好奇心たっぷりの視線を向けてくれる。

ニャンコ写真撮影会
近所の犬がワンワン吠える声によって、ニャンコはどこかへ消えてしまった。
自然あふれる風景に「離島」感アップ
社子島の内陸部には、畑も広がり、とてもここが、台北の一部であるとは信じられないほど、田園的な風景が見られる。
のんびりとした社子島の雰囲気を感じ取りたい人は、島の周回道路ではなく、島の中心を走るようなルートで巡ると良いだろう。

台北とは思えないほど自然豊か
野菜の栽培されている畑。
川の対岸には、大屯山や観音山を望むことができ、まちがいなく台北でありながら、「遠くへ来た感」を手軽に味わえるスポットだ。

社子島の風景

対岸に台北都心部に見える
残念なのは、すぐ近くに工場があるせいか、景色のわりに空気はあまりおいしくないこと。
それでも、ビジュアル面では十分、自然に癒された。
島の「端っこ」チャレンジ、大学を発見
社子島をぐるっと囲むようにサイクリングロードが整備されているので、社子島の「端っこ」までやって来ると、ちょうど、左右からサイクリングロードに挟まれた「中州」のような地形にぶちあたる。
レンタル自転車が幅広く普及している台北では、黄色い自転車にまたがって、サイクリングロードを走る人々の姿が目に入る。

社子島の周りには、サイクリングロードが完備されている
好きなところでレンタルしてサイクリングを開始し、適度の運動量で満足をおぼえたところでサイクリングを切り上げるという楽しみ方をする人が多いようだ。

社子島の「端っこ」
「中州」の端っこまでやって来たときの風景が、こちら。

これが「端っこ」の風景
ここら辺の川の水位は、上下しやすいのだろうか、地面の土は、つい数時間前までは水面下にあったかのような、「ズブズブ具合」である ── 一番端っこまで歩いてみたい気もしたが、「表面の凍った湖」の上を歩くような恐ろしさがあったためパス。
この「隅っこ」ポイントのすぐ近くには、なんと大学があった。

「台北海洋科技大学」のキャンパス
台北と言えど、遊べるスポットが周辺には何もなく、ここへ通う学生さんは、何を楽しみにキャンパスライフを楽しんでいるのか知りたくなった。
勉強へ集中するには、最高の学習環境と言えるかも知れないが……
まとめ:即席で完成した日帰り旅行としては、上出来クオリティ
社子島のことをほとんど知らないまま「上陸」。
なお、社子島をどれだけエンジョイできるかには、天候も重要要素になると感じた ── 自然豊かな景色は、「青い空」がセットでないと、魅力が半減してしまう。
可能なかぎり、社子島を訪れる場合は、天気が良い日を選ぶようにしたい。
さりげなく民家の壁に描かれたアートを楽しむもよし、豊かな田園風景を楽しむのもよし、あるいは、台北都心部とは異なる雰囲気を味わうのを楽しむのもよし。
いろんな楽しみ方が提供されている社子島は、台北観光にネタ切れし、半日ほどの「スキマ時間」を充実させたい場合は、格好の目的地になるだろう。