今回の台北旅行がスタートした当初、烏来(ウーライ)へ行くつもりはなかったが、当日になって、ドタ参ならぬ「ドタ決定」で、烏来を訪れることにした。
冬の台北観光といえば、ドンヨリした天気が「相場」だと決まっているので、曇ったり、雨が降ったりしても、アジ吉の場合、さほど旅のプランが狂わされることはない ——— もともと好天には期待せず、食べ歩きを中心とする「インドア寄り」プラン設計をするためだ。
逆の場合、すなわち思いがけぬ晴天の場合となれば、けっこう困る。
朝晩は冷え込む台北の気温に対応できる服装をしているので、いきなり太陽に本気を出されたら、体温調整しづらいのだ ——— そして2019年1月4日(金)は、まさに「困った日」であった。

雲一つない西門街
西門町のホテルから出ると、雲一つない、吸い込まれそうに青い空。
荷物を最小限にするため、長袖しか持参していないので、これは、どこか涼しい場所をめぐる一日にプラン変更すべしと、真っ先に考えた。

散歩をするニャンコ
木陰を散歩をするニャンコを見ていると、「自分も涼しいところへ行かねば」という決意がますます強まったことは、言うまでもない。
ニャンコをつけていたら、いつの間にか、台北観光でもすっかり有名スポットになっている大衆食堂「天天利」の前にやってきていた。

観光客にも地元ッ子にも大人気の「天天利」
ここで朝食をとっている間に、頭を必死に働かせて、今日一日、涼めるための場所を探そうっていう魂胆。
目玉焼きをのっけた、「魯肉飯(ルーローファン)」。

目玉焼きをのっけた「魯肉飯(ルーローファン)」
箸で少し持ち上げるだけで、ジュクジュク半熟タマゴは自重で簡単にやぶけてしまい、中から黄味の「洪水」が、アッタカご飯に降り注ぐ。
ついでに、「大根餅」も注文。

「大根餅」
あぁ、朝からなんたる贅沢をしてしまったのだろうと思いながらGoogle Mapsをスマホで操っていると、「烏来」の二文字にピンときた。
午前十時、アジ吉の烏来ゆきが決定した。
平日なので、そんなに混雑していないだろうし、山間地域にあるため、台北のカンカン照りの気温よりかは、多少なりとも心地よい環境であろうことは、ほとんど確信に近いものがあった。

MRT松山新店線へ

目的地の「新店」は終着駅なので、全員が下車

849番バスで烏来へ
MRTとバスの乗り継ぎが、この上なくスムーズにできたおかげで、「天天利」での至福の朝食から一時間半たらずで、アジ吉は烏来の地へ足を踏み入れていた。
本記事では、台北からの日帰り烏来訪問を、たっぷりレポートしたい。
いざ烏来
避暑でやってきた烏来も、到着してみれば、晴天。
それでも、台北で感じたようなチクチクする暑さはなく、日本の初秋くらいの過ごしやすい気温。

山間部でありながら、南国チックな樹も
山間部ならではの涼しい気温ではあるが、しっかりと太陽が降り注ぐからか、背が高く、いかにも南国チックな樹がそびえており、テンションも上がる。
体力がある若い時代なら、きっと、「烏来観光大橋」を渡って、そこから写真を撮っていたことだろう。

「烏来観光大橋」
最近では、美しい景色よりも、旨いグルメに心惹かれることもあって、烏来観光大橋は、遠景からながめるだけで、華麗にスルー。
この自然豊かな環境に、少し場違い感のある、まるで現代美術館のようにオシャレな建物が登場。

美術館のようにオシャレな建物。正体は「立体駐車場」
実はコレ、「立体駐車場」とのこと。
無意味にオシャレな駐車場を通り過ぎると、光り輝く「烏来」の二文字が視界に入り、観光スイッチも入った。

「烏来」の文字が光り輝いている
山間地域にある、ひなびた温泉街をイメージしていたので、わりかしモダンな建物があることには、意外性を感じられた。
かと思いきや、しばらく歩を進めると、古い街並みの景色が広がり、その中には、セブンイレブンの店舗が見える。

山間部に「セブンイレブン」店舗も
新しいものの中に古いもの、その中に、また新しいものが取り入れられており、まるでロシアの「マトリョシカ」みたいな街だという感想を持った。
インターネット上の情報に加え、烏来の街を実際にブラブラ歩いて見た直感として、この街は、さしてグルメに期待するスポットでもなさそうという印象を持ち、昼食はコンビニのイートイン。

グルメ目当てではないので、昼食はコンビニ利用
即席麺とビールだが、両方とも台湾製なので、台湾旅行気分はバッチリ堪能。
周辺スポットでの写真撮影を楽しむ。

「福徳宮」
「福徳宮」は、大きな川をはさんだ対岸にあり、アクセスするのは大変そうな立地にあるため、望遠レンズで遠隔撮影。
民家の壁に描かれた「壁画アート」は、訪れる者の目を楽しませてくれる。

壁画アート「蛙」
まるで絵から飛び出してきそうにイキイキと描かれたカエルちゃん。
「滝」の絵も見事で、この後、トロッコ列車で訪れることになる「烏来瀑布」への期待も高まる。

壁画アート「滝」
もちろん、実物の「烏来瀑布」も、記事中盤で掲載してあるので、参考にしてほしい。
川沿いには、古い建物が無数に建ち並んでいる。

温泉宿街が広まる風景
温泉設備も含まれ、ほとんどは、数百元/人のコストで個室風呂を貸し切ることのできる日帰り入浴サービスを提供している(アジ吉はトライしなかったが、興味のある方は、活用するのも一案である)。
こちらは、まるで、「千と千尋」と「ハウルの動く城」を足して二で割ったような世界観を漂わせる、個人的にすごく印象的だったシーン。

「千と千尋」と「ハウルの動く城」を連想しそうな世界観
アジ吉には、宮崎監督のような才能はないけれど、台湾のこういう景色を眺めながら、ブログを書いたり、写真撮影したりすることによって、日本の日常生活で凝り固まった視点やアイデアが、みるみる解きほぐされていくのを感じられた。
トロッコ列車
烏来の観光エリアはこじんまりとしている、と同時に、けっこうあちこちへ分散しているため、徒歩で全部回り切ることは難しい。
それでも、主要なスポットは、トロッコ列車を使えば問題なくハシゴできるような立地になっているので、安心して欲しい。

急な階段を上る
急な階段を上りきったところに、トロッコ列車の駅がある。
「運行ダイヤ」は存在せず、まるでジェットコースターのように、ある程度の人数が集まってから出発する方式。

トロッコの駅に到着
平日であるため、駅舎はガラガラ。
なかなか人は集まらず、すぐスタートできないのではないかという気もしたが、運良く家族連れと「ご一緒」することができた。

まるでオモチャみたいな列車
最高制限時速18kmというから、ママチャリをかなり猛ダッシュで運転するくらいのスピード感だと言える。
バス停で烏来に降り立ってから、ずっと山の中にいるはずだが、それでも、トロッコ列車で山間部を走り抜けていくと、一気に森林の濃厚な香りにつつまれて、驚いた。
単に山村集落を歩くのと、山の中をトロッコ列車で走るのとでは、「光合成との距離感覚」からして、全然ちがう。

森林の濃厚な香りが……
山の香りを本当に体全体で感じることができるのは、トロッコ列車が「山のど真ん中」を突っ切るようなルートで走っていることはもちろん、「オープンカー」のように上半身へ外気が吹き付けるトロッコの車両デザインによるところも大きいのだと思う。
トロッコが到着したところは、ちょうど、「烏来瀑布」が見れるスポットであった。

烏来瀑布(落差80メートル)
きっと、前日に大雨が降っているときにやって来たら、もっと大迫力だったのかも知れないが、それでも十分に満足だった。
写真撮影のコツは、シャッタースピードを遅くして、滝の流れを「白線」のように表現すれば良いと思う。
ニャンコとの出会い
烏来へやって来てから、思いがけぬ嬉しいイベントもあった。
街のあちこちにニャンコがいて、みんな、とても人懐っこいのである。

人懐っこいニャンコ
レンズを向けると、まるでこちらの意図をくみ取ったかのように、次々といいポーズを決めてくれる。
警戒心がないのか、いろんな「素顔」を見せてくれた。

「ふてくされ」表情バージョン
「ふてくされ」表情ですら、和んでしまいそうな可愛らしさ。
写真撮影のあいま、その場で昼寝を始めてしまうマイペースさ。

「おねむ」表情バージョン
どれだけ長居しても、全パターン撮影し切れなさそうな、無数の表情豊かさが魅力的なニャンコだった。
こちらは、「好奇心のカタマリ」とも言えそうな、ちょっと腕白すぎる子ニャンコ。

子ニャンコ
目線で追いかけるのが難しいほど素早く動き回るので、撮影の難しさでいうと、かなり苦労。
それでも、人懐っこいところは先ほどのニャンコと共通していてる。

めっちゃカメラ目線
写真撮影にどんどん応じてくれる「気のいい」ニャンコ。
まだ幼いだけあって、遊びが大好き。

草木で遊ぶ
どうやら、広場にあった一本の木が「縄張り」らしい。
広場をグルグル走り回っていても、飽きてきたら、この木に戻ってきて、葉っぱを噛んだり、ツメ研ぎをして恍惚とした表情になっている。

ツメ研ぎで恍惚とした表情
ニャンコと遊んでいると夢中になり、気づけば、一時間ほど経っていた。
これでは、猫と遊ぶため、烏来へやって来たみたいである。
タイヤル族のアート
烏来の地ゆかりの「タイヤル族」。
インターネット検索してみたところ、民族ショーが定刻に披露されるスポットもあるようなので、興味がある方は「烏来 タイヤル族 ショー」で検索して情報入手されたら良いと思う。

木彫りの像
さきほどのニャンコと遊んだ広場のすぐ近くにあるのが、タイヤル族の木像。
トロッコ列車の駅近くには、女性を背負う、男性の像。

こうやって山道を歩けないと、お嫁さんを貰えないのだろうか?
お嫁に迎えるためには、男性が女性を背負って、一定の距離を歩き通さなければならないといった、タイヤル族の「しきたり」があるのだろうか?
彫刻アートもあちこちに見られる。

彫刻(女性)

彫刻(男性)
あまり興味がなかったのでウーライ族のショーはスルーしてしまったが、街並みのいたるところで散見される民族アートで、目を楽しませてもらえた。
石造りのベンチにも民族アートが施されている。

ベンチの模様 1

ベンチの模様 2

ベンチの模様 3
どれ一つとして、同じ表情はない。
ディテールまできっちり、遊び心が出ている民族アートは、烏来の街歩きを盛り上げてくれる一大要素にもなっている。
烏来老街
ガイドブックも、インターネット情報も、ほとんど頼りにすることなく、「手ぶら&ノープラン」でやってきた割には、想像以上に楽しめた。
トロッコ列車で濃厚な森林の香りを愛で、「烏来瀑布」の迫力に感動し、ニャンコに癒され、そして、タイヤル族のアートに目を楽しませて、トロッコ列車でもとの場所へ戻ってきた。
「烏来老街」と呼ばれる一帯で、ここを訪問するのは、夕方くらいの時間を狙うのが、一番いい。

酒類は品数豊富

果物の露天商

飲食店も多数
「老街」が一番イキイキして来るのは、飲食店の多くが賑わい始め、夕日で街が染まる夕方の時間帯だと「相場」が決まっている。
烏来観光をする際は、ノープランでも大丈夫だが、烏来老街をめぐる順番が夕方ごろになるよう、旅の設計をされると、旅情あふれる風景を(旅のラスト部分に)味わうことができ、旅の満足度はさらに高まるだろうと思う。