こんにちは。
平均年齢が若く、労働人口豊富な新興国の存在感は、確実に大きくなり、もはや無視できないものとなっています。
よく囁かれるのが、「プログラマの仕事は、近い将来、新興国に奪われれしまう」説。
ITエンジニア(日常業務の半分ほどはコーディング、残り半分は、設計など上流工程を担当)の端くれとして、また、新興国エンジニアと十年以上にわたり共同開発を推進してきた経験者として、この説に斬り込んでみたいと思います。
結論から先に言うと、一部のプログラミング業務が新興国に流れていることは事実ですが、日本からプログラマとしての働き口をなくすほどのインパクトはない、ということです。
本記事を読めば、この都市伝説について、より深く洞察するための知識セットが手に入ります。
目次
新興国に、優秀で若いエンジニアが多いのは本当だが……
東南アジアのソフトウェア会社に仕事を発注していると、たまに、キラリと光る人材に出会えることがあります。
技術力と人望があり、発注したプログラムも、期待通りのクオリティで完成させてくれる ── それでいて、「日本の小学生」がお年玉で受け取るくらいの低賃金で働いてくれている。
同じ土俵に立たされたら、正直、勝てないと思う人材もおり、(運良く、たまたま)先進国の日本に生まれることができただけで、高賃金を受け取れる立場に甘んじている自分を反省することもあります。
それでも、優秀な人材の離職率はきわめて高く、一年か二年で辞めていくことは珍しくありません。
本当に「超」上位層で活躍しているスタープレイヤーは、アメリカやオーストラリアなどの先進国へ転職・移住して、一千万、二千万といった高収入エンジニアになり、結局は日本人より賃金が高くなるため、日本から仕事が流れるとしても「上限ストッパー」が自ずと設けられる図式です。
(先進国へ移住せず)新興国に残るエンジニアの平均クオリティは相対的に低いため、いつまでたっても、単純で付加価値の低いプロジェクトしか受注できないケースが大半です。
いくら単価が安くても、【もと】を取れないくらいの工数がかかったら、費用対効果を出せない
新興国の単価が(日本より)安いことは、間違いのない事実です。
重要なのは、プロジェクトのコストは、単価(時間あたりのコスト)に、工数(かかった時間)を掛け合わせたものであるという点。
例えば、日本の1/3くらいの単価で発注できる国があったとしても、工数が3倍かかればトントン、それ以上かかれば、日本国内で済ます方が、かえって安くついたという結論になります。
言語や文化の違いがあるため、新興国を活用したプロジェクトは工数が膨らみやすく、リカバリのために日本人エンジニアを応援要員として派遣するとなれば、もう赤字街道まっしぐらです。
たんに単価が安いというだけで、仕事が日本の外(新興国)へ流れると意見するのは、根拠に弱く、論理的でもありません。
日本のガラパゴス文化が、仕事の海外流出を防いでいる面もある
新興国へプロジェクトを発注して、本当に「旨味がある」と言える状態は、(コーディング作業だけではなく)時間のかかる設計工程もセットで任せられる状態。
「カイゼン」の好きな日本企業は、いったん取り決めたはずの要件が、プロジェクト開始後に変更されることも珍しくありません。
また、日本企業は、エンドユーザの要求が厳しいことも特徴のひとつで、海外ならトップダウンの「鶴の一声」で一発解決するような仕様決定でも、日本は現場の声が強いため、なかなか合意に至れないケースもあります。
そんなガラパゴス文化のもと、関係者全員ができるだけ納得できるような妥協案を見つけ出す調整能力は、日本の「国技」と言っても良く、新興国のエンジニアには、到底マネできません。
結果として、新興国へは、設計工程をセットで発注することのハードルが難しいため、システム開発業務を委託する旨味が低減し、日本から仕事が海外流出することを防いでいる面があります。
まとめ:プログラマは将来キャリアとして「アリ」だが、知っておきたい留意点
日本国内では、依然として、プログラマの人手不足の状態が続いています。
このため、プログラマを将来キャリアとして選択することは「アリ」ですが、以下のような点を留意すべきであることを付け加え、本記事を締めたいと思います。
- 社員の教育に、しっかり時間と費用をかける企業を選びましょう。社員を育てない会社に、将来性はありません
- 技術の進歩が早く、勉強することが莫大量あり、何を学ぶか見失いがちです。一方、新技術を支える土台の部分は、そんなに変わらないので、土台の技術(具体的には、Linuxやネットワーク)を抑えて学習すると「燃費」が良いです
- 英語を勉強しておきましょう。「嫌いではない」程度になるだけでも良いです。最新の技術はアメリカから誕生するため、YouTubeを通じて、海外ITエンジニアの動向をチェックできるなど、英語の利用価値は高いと言えます
プログラマというキャリアを選ぶことについての話題は、今後もどんどん切り込んでいこうと思います。