目次
はじめに:まるで「隣町」ほど近い。飛行機で60分の「海外」
夏休みは、ベトナムで過ごそうと考えていたが、(ベトナムの8月は)雨季のくせに、なかなか航空券の値段が下がらない。
直行便をあきらめて、経由便を調べてみると、釜山経由がダントツに安い。経由ついでに、釜山をほっつき歩いてみようと思ってスタートしたのが、この旅行である。

いきなりフライトが遅延で、旅スタート
旅スタート早々、関空から釜山へのフライトが遅延。
本来のプランでは、午後二時に釜山入りし、その翌朝にベトナムへ飛び立つ予定だった。
数時間遅れたところで、ベトナムへの便に乗り遅れる心配はないが、ただでさえ短い、釜山での現地行動時間が減ってしまう。

天気は晴天

ピカピカに磨かれた機体

気楽に構えていたら、およそ30分遅れで、フライトは関空から離陸。
「釜山までの飛行時間は一時間です」
機内アナウンスが流れると、どよめきが起こる。

「釜山までの飛行時間は一時間です」
きっと、釜山へ行くのが初めての人々が、あまりにも近い「海外」っぷりに、驚きを隠せなかったのだろう。
アジ吉は、うたたね。

うたた寝してる間に、入国カード類が

あっという間に釜山。嘘のように近い
目が覚めたのは、「着陸に備えてシートベルト着用」うんぬんというアナウンスが流れたからであった。

そんなつまらないことを考えたりもしたが、飛行機から一歩出ると、そこは関空ではなく、正真正銘の釜山であった。
バス乗り場は「運命の分かれ道」だった。進んだ方向は……
空港の入国審査カウンタを抜けると、困ったことに気づいた。
ガイドブックを持参せず、釜山のことを何一つと知らないまま入国したのは、釜山到着後、空港のWi-Fiで情報収集しようと思っていたからだった。
たしかに、空港内には野良Wi-Fiが飛んでいるのだが、どれも微弱かつ不安定。

空港カウンタで市内行きのバス停が2番だという情報をゲットし、バス乗り場へ。

市内へのバス乗り場
実は「市内行きのバス」と言っても、海雲台ゆき、釜山駅ゆきの2路線あるとは、このとき、つゆ知らず。

漁港近くの市場、チャガルチ市場へ行くには、釜山駅ゆきに乗車しなければならなかった。
何もしらず、海雲台ゆきのバスに嬉々として乗り込んで、すっかり安心したアジ吉である。

違うバスに乗ったとは、夢にも思わず

広々としたシート
Wi-Fiがなくても、Google Mapsアプリを使って、おおまかな位置を確認することは可能なので、【現在位置】を確認しもってバスに乗っていると、「異変」に気づいた。
「漁港近くの市場」へ向かう様子はなく、むしろ、バスは逆方向へ進んでいる。
ようやく、バスを乗り間違えたことに気づいて、下車。
ガイドブックなし、Wi-Fiなし、韓国語はなせない。軌道修正もできないピンチ
ガイドブックなし、Wi-Fiなし、そして、韓国語がはなせない。
それなのに、道に迷ってしまった。
絶体絶命のピンチにあるアジ吉にとって、唯一幸運だったのは、バスから降りたところに、たまたま地下鉄の駅があったことである。

Google Mapsで「異変」に気づき、地下鉄へ

地下鉄のカードをゲット
とりあえず、どこの駅へ行くかは、地元ッ子に聞くしかない。
そこらへんを通りがかった大学生風の二人組に声をかけてみたら、親日派らしく、たどたどしい日本語で助けてくれようとするが、残念ながら、何を言っているのかが理解できなかった。

「先生」との出会い
万事休すと思ったときのこと。

たまたまその場を通りがかったオバサマが、意思疎通に四苦八苦するアジ吉たちを見て、助け舟を出してくれたのだ。
しかも、パーフェクトな発音の日本語(最初、日本人かと思った)。


そのまま電車に乗り込んだ。

土曜日は自転車も持ち込める韓国の地下鉄
電車の中を、自転車を押しながら歩いているおじいさん。


飛行機で60分と言えど、ここは日本でないということを実感する出来事である。
車中での会話を通じて、彼女が、大学の先生だと知った。
学生時代は日本近代文学を専門的に学んで、志賀直哉の研究論文を書いたという。城西国際大学で韓国語の講座を担当し、現在は、釜山に帰って、地元の大学で教鞭をとっている。笑顔が素敵で、会話をリードするのがうまい。きっと、学生にも人気がある先生なのだろう。
釜山観光、「タイムリミット」は五時間
「先生」がナビ役をしてくれているので、迷わずにチャガルチ市場へやって来れた。



地下鉄の入口で助けてもらって、まさか街案内までしてもらえるとは……
どこまでも親切な「先生」である。


「先生」が指差す方向を見ると、カニの看板がかかげられた門が目に飛び込んできた。

オイソ ボイソ サイソ(오이소 보이소 사이소)
「先生」は、さらに続ける。



飛行機が遅延したのと、バスに乗り間違えたのとで、すっかり夕暮れの時間帯になっていた。

国際市場かいわい
釜山のことを田舎町と思っていたが、まるで「心斎橋」のように賑わいを見せる繁華街へやって来た。
都会ではあるが、ちょっと路地裏を見ると、路上で品物を広げて商売をする人々の姿も目に入る。こういうところは、「心斎橋」と違っている。

ベトナムで売られている紙細工が「転売」されている
よく観察してみると、おじさんの販売している紙細工は、ベトナムの路上で売られているものと一緒。きっと、ベトナムで大量に調達してきて、「上乗せ価格」で販売して,商売をしようという魂胆だろう。世界には、実に、いろんな人がいるものである。
そこから歩いて十分ほどのエリア内にある、三カ所のスポットを教えてもらった。
- BIFF広場
- アリラン通り
- 有名な冷麺店「원산면옥(ウォンサンメンオク)」

BIFF広場

アリラン通り

有名な冷麺店「원산면옥(ウォンサンメンオク)」
いくら地元ッ子であるとは言え、まるでプロの案内ガイドのように、手短かだが、必要充分な解説を加えながら、連れて回ってくれた「先生」。

そう言い残すと、「先生」は、人ごみの中に、さっそうと消えてしまった。
出会った瞬間から、サパサパとした雰囲気が印象的な女性だったが、最後にひとこと、そう言い残して去るときには、すこし寂しげな表情であった。

「先生」は颯爽と人ごみの中へ消えて行った……
お礼を言う時間も、そして、名前をうかがうスキもなかった。
せめて、連絡先だけでも聞いておけば良かったと、若干後悔を残す出会いとなってしまった。
BIFF広場
まずは、こちら「BIFF広場」。
BIFFとは、Busan International Film Festival(釜山国際映画祭)の頭文字を取ったもの。

国際映画祭の地であることが感じられるオブジェ
「先生」の説明では、釜山で国際映画祭が開催される会場なのだという。
国際映画祭が開催されていない期間でも、多くの露店が開いていて、活気にあふれている。

BIFF広場
残念ながら、台湾の「夜市」みたいに、食欲をそそってくれるような食材は見かけなかった。
それでも、この賑わいの雰囲気を味わうだけでも、このエリアには訪問する価値があると感じた。

とにかく、B級グルメの宝庫でもある

有名人の手形が多数
一口で食べ終われるような、手頃サイズのB級フードや、有名人の手をかたどったタイルが、地面に敷き詰められている。
屋台で売られる料理は、とにかく、赤い。インスタ投稿できるレベルではないだろうか。

韓国の料理は「赤い」
タイミングがあえば、国際映画祭が開催されている期間に訪問してみるのも、きっと楽しいだろう。
アリラン通り(モクチャコルモク)
とにかくアジア感ただようエリアが、「アリラン通り」と呼ばれる路地である。
衣類店、雑貨店などが両端に並ぶ、とにかく、細長〜〜〜い道路である。

山積みにされた衣類品
そして、アリラン通りの【先端100メートルくらいの部分】は、「モクチャコルモク」と呼ばれている。
モクチャは「食べよう」、コルモクは「通り」の意味なので、「食べよう通り」というネーミングだが、要は、B級グルメストリートである。

路上を埋め尽くすばかりの、B級グルメ店

B級グルメ店 1

B級グルメ店 2
決してキレイな風景ではないのだが、路上で営業するB級グルメ店が、見渡す限り続いている風景は、インスタ投稿の価値ありだ。
困ったのは、どこも、店先で調理している料理は同じようなものばかり。いったい、どこの「一軒」にすれば正解なのか、見当がつかないことである。

どこも「糸こんにゃく」のような麺料理が中心
旅先でのグルメ選びの定石手段として、【人だかり】ができている店があれば分かりやすいのだが、どこの店にも、わりとまんべんなく、客が分散してしまっている。
料理のクオリティに違いがないのなら、キャラが立っているおばさんの店へ行こうと思っていたら、奥の方から怒鳴り声が聞こえた。

気の強いおばさん
韓国人の喜怒哀楽がオーバー気味なのは知っていたから、特に驚かなかったが、それにしても、迫力がある。
「あんた、写真ばかり撮ってたら、通行人の邪魔だろう。早く、とっとと食べて、とっとと消えな」
韓国語はよく分からないが、ジェスチャーや、表情から、そういう内容のメッセージを発していることは、わりかし容易に推定できた。強気なところが気に入って、このおばさんの店で食べることにしたのである。

このおばさんの「一軒」でいただくことに
あそこまで気が強いのなら、きっと、料理にそそぐ情熱も、妥協のない、大変なものだろう。
「え……アタイの店で食うのかい。。。」
店の椅子に腰掛けた途端、しおらしくなって、無言になるおばさんのギャップが面白かった。

グクス(うどんとそうめんの昼間みたいな麺料理)を注文
「グクス」を注文。
「先生」の説明では、小麦粉で作られた、とにかく安い麺料理とのことだったが、本当に安い。
どんぶり一杯、たったの2,000ウォン(約200円)。
しかも、日本人の口にもあうような、やさしい出汁の味わい。
有名な冷麺店「원산면옥(ウォンサンメンオク)」
次にやって北のは、こちら冷麺店「ウォンサンメンオク」。
ウォンサンは北朝鮮の都市名、メンオクは「麺屋」の意味だという。これも「先生」に教わった豆知識だが、おかげで、短期間滞在(しかも事前準備ゼロ)ながら、釜山観光を大満喫である。

有名な冷麺店「원산면옥(ウォンサンミョノク、元山麺屋)」
地元ッ子にも観光客にも人気だと聞いていた割に、店内は、かなりガラガラ。
とは言っても、ほんの三十分もしないうちに、店内から空席がなくなるほど、お客で大混雑することを、このときは知らなかった。

入店時、比較的空いている店内だったが……
頭のてっぺんがちょっと寂しくなった、店主らしきおじさんが、近づいてくる。
日本人だと気づいて、日本語で対応してくれる。韓国人が来たとき、日本のレストランで、韓国語の対応ができる店って、そんなに多くないと思う。





何を言うときも、語尾にマエバライデ(前払いで)をつける、ちょっと変わった人だが、悪い人ではなさそう。
ひょっとしたら、アジ吉のことが金もってなさそう(たしかに、あまり持っていないけど……)に見えたのかなぁ、と自分の容姿に自身が持てなくなった。
テーブルの上には、金属製のお箸、調味料の容器。

金属製の箸

金属製の調味料容器
金属金属したテーブル上の小物たちを眺めていると、韓国にやって来たという実感がわいてくる。
まもなく、ビールが届けられた。
Cassビール、4,000ウォン(約400円)。

韓国産ビール「Cass」
残念ながら、あまり美味しいとは思えなかった。味が薄いのは構わないのだが、キレがなくなってしまっているような感じ。ビールをクイッと開けたときの、のどごし感というか、すっきり感が十分に楽しめない。
料理が届くまで、メニューをパラパラ閲覧してみる。

メニュー その1

メニュー その2

メニュー その3
最後のページにあった「ジャンボ餃子」が気になったけれど、一人旅では食べられるボリュームではない。次回、誰かと釜山旅行をすることがあれば、是非挑戦してみたい。
そうこうしているうちに、看板メニュー「ピョンヤン冷麺」がテーブルにやって来た。11,000ウォン(約1,100円)。

ピョンヤン冷麺(ピョンヤンネンミョン)
まるで裁縫箱に入っているような、巨大なハサミが器に乗せられている。


いろんな「邪念」が頭の中に浮かんでは消えていくが、とりあえず、お箸で麺を持ち上げてみる。

とにかく長〜〜〜い麺
要するに、とてつもなく長いということだ。
麺そのものは柔らかく、容易に歯で噛み切ることもできるが、世の中には、先にハサミで切って短くしてから食べたいという「こだわり」を持つ人もいるのだろう。
「ピョンヤン冷麺」には、ハムのように薄い豚肉、キュウリ、大根が添えられている。麺を口に含むと、大根から出ているのだろうか、ほのかに甘みがする。
甘さの【正体】を、質問することにした。さきほどの店主とは別の、中年女性。










何を言っても、ハイ!という面白いおばさん。結局、何の肉かは分からず、味から言って、豚っぽいのだが。
周囲を見ると、店内は、あっという間に店は満席になってしまった。

食べ終わるころには、空席がなくなっていた
本当に人気店だったのだ。
北朝鮮出身の初代が1953年に開業して以来、今で三代目というから、ずっとこの街で愛されてきた味なのだろう。
チャガルチ市場
冷麺屋を出て、港のある方向へ歩いていくと、「チャガルチ市場」だ。

チャガルチ市場は港沿いにある、巨大な魚市場
潮風が肌をなでる感覚を味わうのは、久しぶりだった。
チャガルチ市場は、近代的な建物。

チャガルチ市場へ
もっと、東南アジアにあるような、薄暗くて、だだっ広い空間を想像していたのだが、まるでショッピングモールのように明るい。
水産物をあつかっているため、ただでさえヒンヤリ(じめじめ)しがちだが、エアコンもあって、大変涼しい。

チャガルチ市場、水産物を扱っているため、ヒンヤリ(じめじめ)している
建物そのものはモダンだが、やっている商売は「魚市場」であることに変わりはない。
あちこちで、客と商売人のやり取りが繰り広げられている。

チャガルチ市場の風景 1

チャガルチ市場の風景 3

チャガルチ市場の風景 2

チャガルチ市場の風景 4
ここへやって来る客は、とびきり鮮度の良い食材を求めるのだろう。「商談」はどれもが本気で、けっこう時間がかかっている。
さすがに「魚市場」だけあって、スーパーでは見かけないような【食材】も揃っている。

見たこともないような巨大サイズのエビ(?)
こんな立派なハサミでつかまれたら、指など簡単に切断されてしまいそうな、巨大なエビ(?)。
市場の2階へ行くと、「フードコート」のような、だだっ広い飲食店エリアが設けられているのも、この市場の特徴である。

チャガルチ市場2階の飲食店エリア
1階でお店をやっている商売人も、商売の合間、料理を注文することがあるようで、出前をする風景を何度か目撃することができた。
市場の外では、太鼓のパフォーマンス。

太鼓のパフォーマンス
韓国最大級の魚市場ということから、大きな注目を集め、買い物客はもちろん、魚を買うつもりはない観光客がやってくることを心得た上での、イベントだろう。
魚を買わなくても、十分に楽しめるスポットなので、訪問の価値ありだ。
まとめ:失敗だらけだが、味わい深い旅の思い出に……
チャガルチ市場を出るころには、すっかり日も沈んでいた。
ネオンライトが明々とした夜の釜山を歩きながら、今日一日の出来事が、走馬灯のように思い出される。

夜の釜山 1

夜の釜山 2

夜の釜山 3
自業自得とはいえ、散々な旅の始まり方であった。
- 関空からのフライトが遅延した
- 釜山空港で、バスに乗り間違えた
- 釜山到着後、アテにしていた野良Wi-Fiがほとんどつながらず(ガイドブックも持参せず)、旅の情報が入手できず
そんな「三重苦」の逆境にもかかわらず、およそ半日の釜山観光が大充実したのは、まちがいなく「先生」のおかげである。
まさか、この記事を閲覧した方を経由して、彼女に連絡がつくというようなドラマティックな展開は期待すべきではないだろうが、心のどこかでは、期待してしまうのである……
(参考)旅の家計簿
すべてコミコミで、出費は40,900ウォン(約4,090円)。
- 空港バス …… 7,000ウォン(釜山空港から釜山市内)
- 地下鉄カード …… 2,000ウォン
- 地下鉄料金 …… 1,500ウォン(チャガルチ駅まで)
- 地下鉄料金 …… 2,000ウォン(釜山駅から釜山空港駅まで)
- コンビニで飲料水 …… 1,400ウォン
- グクス …… 2,000ウォン
- Cassビール …… 4,000ウォン
- 冷麺 …… 11,000ウォン
- 宿泊費(チムジルバン) …… 10,000ウォン
(付録)こちらもチェック
本記事を執筆した2ヶ月後、別の釜山旅行(これはグループ旅)をしたアジ吉。
準備不足で、わりかし失敗まみれだった本記事の釜山旅行の教訓も活かされて(笑)、かなりの充実旅行に。
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【関西発・一泊二日】海外旅行のテッパン、釜山(韓国)。グルメも、インスタ映えも妥協しない、わがまま30時間モデルコース
目次1 はじめに:国内航空券よりも安い、釜山行きチケット2 「チョリャンミルミョン(草梁ミルミョン / 초량밀면)」地元の超人気店3 「甘川文化村」釜山のマチュピチュとも呼ばれるアート村4 「チャガルチ市場」飲ん兵衛のオアシス5 部屋呑み| ...