目次
あらすじ:本記事について
本記事は、《三部作》として制作したハノイ街歩き紀行文のうち、最終の第3話にあたる。
第1話、第2話がまだの方は、以下リンクからどうぞ!
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【ハノイ旧市街地の観光モデル】ハノイ「名もなき」すっぴん風景をめぐる街歩き《三部作》 第1話:朝のハノイ
目次1 はじめに:とびっきり近く、安くなったハノイ2 朝のハノイ2.1 《午前7時》朝から「競い合う」ような働きっぷりの、ハノイっ子2.2 《午前8時》本場で食べる「本物」のフォー2.3 《午前9時》ことごとくジャンル細分化の進んだハノイの ...
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【ハノイ旧市街地の観光モデル】ハノイ「名もなき」すっぴん風景をめぐる街歩き《三部作》 第2話:昼のハノイ
目次1 あらすじ:本記事について2 昼のハノイ2.1 《午後1時》ハノイっ子が昼寝をガマンしてでも食べたい一品2.2 《午後2時》地元ハノイっ子のボランティガイドに案内してもらう展示会2.3 《午後3時》ベトナム男子の特権? 「お茶タイム」 ...
夕方〜夜のハノイ
月火水木金土日、毎日が「花金」感たっぷりのハノイ。
明確な「開店時間」があるわけでもないが、日が沈むころには、路上へ小さな椅子やテーブルが設置され、仕事を終えたハノイっ子が飲み語らう「路上酒場」として大賑わい。
街も、人も、一日で最も開放感たっぷりのひとときだ。
《午後7時》大繁盛! 恐怖の「どす黒」即席ラーメン
ハノイの歩道って、かなり【引っ張りだこ】。
昼間は、(通行人のことなどおかまいなしに)バイクが堂々と停められる「駐輪場」がわり。

半ば「駐輪場」と化した歩道
日が沈んで、バイクが次々、オーナーに引き取られて行ったかと思うと、今度は、空いたスペースに露店(屋台)が押し寄せ、「屋外フードコート」の様相。

「屋外フードコート」さながらの雰囲気
この風景、日本でも昭和初期には「日常シーン」だったのかも知れないが、往時を知る人々の数は、確実に減少している。
そんな「屋外フードコート」の中でも、とりわけ大繁盛する一軒があった。
昔からやっている老舗かどうかは分からないが、交差点の四角を陣取って、道路ごしに4つもの「支店」を形成するあたり、ただ者ではなさそう。
そこで提供される料理が、これまた強烈なインパクトで、ドス黒いスープがなみなみと注がれている。

なみなみと注がれるドス黒いスープ
スープが注がれた器には、どこかで見覚えのある麺と、ゆで卵がドカンと盛りつけられている。
「この麺」とハノイの路上で出会うなんて予想外すぎて、しばらくピンとくるまでに時間を要したが、即席ラーメンの袋に入っている、【四角く固められたアレ】だ。

「見た目」よりも「美味しさ」を重視
とてもじゃないけれど、ベトナム雑貨が体現するような、細部にまで「見た目」にこだわるベトナム人が調理したものとは思えない。
ベトナム料理って聞くと、どうしても↓↓↓のように、「オシャンティ」なビジュアルを想像するもの。

「見た目」にこだわるベトナム料理(「かくあるべし」的イメージ)
それでもなお、客足が途絶えることはなく、ひっきりなしに客が回転している様子を見ると、繁盛する「理由」が気になって仕方なかった。
このグルメを食べないことは、ハノイ旅行の「損失」になる気がした。
腹をくくって「一人前」の注文をして案内されたのは、(日本だったら)粗大ごみ置き場でも見かけないレベルにまで汚れた「椅子テーブル」。

汚れた「椅子テーブル」

小綺麗な「椅子テーブル」
この上で食事させられることになるのか、と暗雲たる気分になりつつ、カメラで撮影していたら、店のネーサンが駆けつけて、すぐさま、小綺麗な「椅子テーブル」へと差し替えてくれた。
即席麺にスープをぶっかけるだけの料理にしては、やけに調理時間が長かったのは、単純に、客数が多いせいだろう。

届けられた料理
注文したのは、もつ、ゆで卵、レバーを全部のっける「全部のせ」。
お箸でほぐしてみるまで分からなかったが、「即席麺を2玉くらい投入しているでは?」と思うほどの、麺ボリューム。

ボリュームたっぷりの麺
驚きなのは、たかが即席ラーメンに、70,000ドン(約340円)もすること。
ベトナムの物価水準に照らし合わせると、あり得ないほど高い(日本で、即席ラーメンに1,500円出すくらいの感覚)。

一口目を味わうまでは半信半疑だったが、食べてみて「開眼」。
レバーは苦手だが、ニゴニゴ感がせず、臭みもなく、プリプリしてて、普通の肉みたいで、美味しくいただいた。
出汁は、見た目のドス黒さとは裏腹に、きわめてアッサリ風味で、体に優しい味わい。
グルメにうるさいハノイっ子が、行列をなしてまで欲する「たかが即席ラーメン」の隠れた魅力が、痛いほどナットクできた。
朝晩は冷え込む(とは言っても、日本の晩秋くらいで、過ごしやすいのだが)季節、この優しく温かい味わいは、ハノイっ子を魅了してやまないだろう。
《午後8時》「ココナッツ麺」の振りかけられた極上アイスクリーム
時間はまだ夜の九時、ハノイの街は、どんどん盛り上がり続けており、ここで早々ホテルへ戻れるわけがない。
「夜食」がわりにいただくデザートは、ココナツをくり抜いたアイスクリーム。

「ココナッツアイスクリーム」
【千切り状】に細かく刻まれたココナツの実を、クリームの上にパラパラ振りかけるという発想が、もう最高(考えた人、天才!?)。
まるで「麺」をすするみたいな食感なのたけど、あくまでも、味はココナツ。
クリームの滑らかな舌触りに、「ココナツ麺」のシャキシャキ&プルプル感が添えられた、ナットクの一品。
アイスクリームの「器」がわりになってるココナツの内側にも、まだ果肉が残っているため、アイスを愛でつつ、スプーンでくり抜いて食すのも良い。
《午後9時》夜のハノイ駅で「旅情」を味わってみる
本当に、これが一国の「首都」にある鉄道駅舎なのだろうか。
日本でいう「東京駅」にあたる存在だと考えると、あまりにもこじんまりとして、質素なつくりの駅舎。

ハノイ駅
夜のハノイ駅は、「旅情」をたっぷり感じられる雰囲気があり、切符を持っていなくても、プラットフォームを歩き、そのムードを楽しむことができる。
電車に乗る予定がなくても、ふらっと立ち寄って、冷やかしてはいかがだろう。

夜のハノイ駅構内
アジ吉も、(記憶が確かなら……)サパへ向かうため、十五年ほど前にハノイ駅から電車に乗ったことがあるけれど、なんと、そのときに「オンボロ」だと感じた車両が、いまなお「現役」で使われているのを見て、驚きを通り越して、感動すら覚えた。
地球の裏側にある田舎町で、高校時代の同級生と再会したみたいなテンションに。

昔のまま、ずっと変わらない車両
人間で言うと、100歳を超えたお年寄りが、まだ現役でバリバリ働いて、ガツガツ税金を納めている ------ この車両が元気に運行しているのは、それくらい強烈なインパクトがある。
ゴォォォォオオオオ〜と、地響きのような、ものすごい音がするので振り向いたら、プラットフォームの坂道を、かるく百キロはありそうな商品満載カートを押しながら、駆け下りる車内販売員の女性。

「命がけ」の品運び
ひとつ間違えたら「命がけ」の業務であるが、きゃしゃな体系からは想像もつかないほど、豪快で、驚くような行動に出ることがあるのも、ベトナム女性のパワフルさ。
以前、バスの中で、おばあちゃんと、ヤンキー兄さんが口論をはじめた光景を目にしたが、ヤンキー兄さんが怒り狂ったおばあさんに、ハンドバックでボコボコに殴られて、逃げ出すかのようにバスから飛び降りて行ったシーンは、一生忘れられない。
これと似た風景を、ベトナム各地で複数回、目撃するうちに、【ベトナム女性を怒らせたら本当に恐ろしい】と思うようになってしまった。
《午後10時》群衆にまみれて、ビアホイで飲む
ベトナムが社会主義国であることを忘れそうになるのが、夜のハノイである。
大音量アンプで、街中にこだますロックシンガーの歌声。

マイク一本で、大衆を魅了するシンガー
ときおり「公安」の車もパトロールへやって来るが、【容認】の姿勢を取っており、基本的に、盛り上がる群衆の邪魔をしないスタンスらしい。
日本語には「花金」という表現があるけれど、ここハノイでは、月火水木金土日、いつでも地面のアスファルトを覆い隠してしまうほど、大勢の群衆が群がって、路上でビールを飲み交わしている。

夜からが本番
とびっきり低い椅子に腰掛けて、ここは、一日の旅の成功を祝して、グイッと飲んでしまおう。
ハノイの夜には、ビールが似合う。
まとめ:街歩き愛好家にとって、ハノイは「メッカ」
たらふく呑んで食って、お腹が爆発しそうになりながら、バイクタクシーを拾って、ホテルへ帰る。
何度も道へ迷いあける危なっかしい運転手たったが、運賃は25,000ドン(約百円)と破格なので、申し訳なくて、文句を言う気にもなれなかった。
一日を通じ、これと言って有名な観光スポットを巡ったわけでもないが、まるで、「テーマパーク」で一日遊んだ後のような、謎の充実感。
世界中を旅してきたが、ハノイほど、街歩きが楽しい場所を知らない。
果たして、【ハノイの魅力】を十分にお伝えできたかは分からないが、本記事が、一人でもハノイファン誕生のキッカケとなれば、本当に嬉しい。