こんにちは。
オフショア開発あるあるかも知れませんが、海外のITエンジニアと一つのプロジェクトで協業開発していると、日本人ばかりが集まって日本国内で回す純国産プロジェクトだと遭遇しないような課題に悩まされることがあります。
筆者は、TOEIC 900オーバーの英語力を持つことから、英語公用語圏への駐在員(海外子会社への出向)に任命された経験があり、三年前の任期を終えて帰国した今なお、海外との接点があります。
体感的に、一日の半分以上は、海外のITエンジニアと折衝を重ねる業務に携わっており、オフショア開発の面白いところ、苦しいところを十年以上に渡って経験してきました。
本記事では、オフショア開発における、日本側と海外側のITエンジニアの間で生じる摩擦問題について、論じてみようと思います。
目次
事例1:日本側の過剰要求に、海外側が反発するケース
世界基準で見れば、日本で開発されるシステムには、過剰品質とも言えるところがあります。
- Web画面のレイアウトに対し、ユーザ要求は基本的に厳しい(フォント統一、レイアウト左寄せ・右寄せの徹底、ボタン色・位置の標準化)
- デフォルト値へのこだわりが強い。少しでも入力作業の手間を省きたいユーザ願望が、費用対効果を考えずにバンバン寄せられる
- 再構築案件の場合、以前のシステム仕様に固執する傾向が強く、少しの動作違いにも、クレームが届きやすい
もともと完璧主義が美徳とされる日本社会なので、システムへの要求が厳しくなるのも納得できるものですが、海外のITエンジニアとなれば話は別。
「日本人は、なぜそこまで、細かいところを気にするのか?」
彼ら彼女らの目には、日本人の品質史上主義は、滑稽なものとして見えてしまい、このような感覚を持たれることが多いのです。
さらには、ユーザの目から見えない、バックエンド処理のソースにも、事細かにコーディング規約が設けられているケースもあり、海外のITエンジニアとしては、制約事項ばかりでやりがいのないプロジェクトだと感じ、あっさり会社を辞めてしまう人もでてきてしまう始末。
こうして、海外のITエンジニアには不満がくすぶる中、日本側では、ユーザ(システム利用部門)から次々と突き上げをくらって、両側から二重の苦しみを味わうのが、日本のITエンジニアという図式です。
筆者も、このような問題に日々悩まされる立場にあります。
事例2:いわゆる「言った、言わない問題」
日本でもよくありますが、海外を相手にすると、特に顕著化するのが、言った・言わない問題。
何から何まで明文化することが前提となる海外では、ドキュメントに書かれていないことはやらなくていい、書かなかった日本が悪いというスタンス。
これはこれで正しいのですが、完全に正しいと認めてしまうと、仕事を(海外に)発注するうまみが感じられないほど、ドキュメント作成の負荷が高くなり、プロジェクトが立ち回らなくなります。
そこで仕方なしに、最低限のことだけをドキュメント化するという妥協案が提出されることになりますが、それによって記入モレが発生し、「書かなかった日本が悪い」という展開になる、堂々巡りです。
明文化が必要とされる度合いがまったく異なる、日本と外国が一緒に仕事を進めることには、大きな困難が伴うのです。
事例3:権利は主張するが、責任は取ってくれない、困ったちゃんも?
個人の権利意識が強い海外のITエンジニアと働くことは、子どもの相手をするような大変さがあります。
海外のITエンジニアは、やりたいことをバンバン主張してくる人も少なくありませんが、やりたいようにやらせて何かあったら、最後は責任を取ってあげるのは「親」である日本人サイド。
以前、海外子会社を育てるため、教育目的で発注したプロジェクトがありました。
その中で、ソフトウエアのテスト工程で用いるチェックリストを、現地主体で考えさせて欲しいと言ってきたのでやらせてみると、納期期日の翌朝に提出されたチェックリストは、目も当てられないクオリティ。
仕方なく、日本側で残業対応をして、どうにか遅延挽回をするということがありました。
それでも、海外のITエンジニアと仕事をしていかないと立ち行かない現実
ここまで読んだ方には、それだけメリットが少ないのであれば、海外のITエンジニアと仕事をしなければいいのに、と思われた方もいらっしゃるかと思います。
実際、筆者も、その言葉が喉元から出かかってる状態で、日々の業務をこなしていますが、全世界に展開するグローバル企業となれば、海外拠点のシステムまで、完全に日本人だけで開発保守をすることは事実上不可能なのです。
ネガティブなことを中心に書きましたが、海外のITエンジニアを使うからこそ、うまく回る業務があるのも事実です。
日本と時差が大きい海外支社におけるシステムサポートは、その一例です ── 日本人を駐在させたら高額な費用が発生しますし、遠隔で電話サポートしていたら、日夜逆転の生活を強いられる人がでてきます。
グローバル企業の社内SEとして働くからには、海外のITエンジニアと、お互い気分良く仕事ができる関係構築は重要スキルであり、今日も、筆者の「挑戦」は続いているのです。