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情報システム部門で、組織内の技術力を「見える化」するために、オリジナルの技能検定試験を立ち上げた話

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こんにちは。

情報システムの開発においては、技術力って、大切なスキルですよね。

人材教育の大切は熱心に説かれることが多いのに、社員を講習会に派遣させたっきり、満足してしまう組織が少なくありません。

また、社外の講習会でレクチャーされるコンテンツは一般的すぎることが多く、自社内での開発スタイルへアジャストするには、講習会後、社内でのフォローが不可欠です。

講習会と実務の「架け橋」となるような、自社へ最適化した技術教育の一環として、筆者は、オリジナル技能検定試験を立ち上げました

本記事では、その詳細をご紹介し、今後、同じような企画を考えられる方のご参考にしていただければと思います。

組織の概要

実は、本記事でご紹介する試みは、筆者が海外子会社に駐在中、現地で試行錯誤した活動内容となります。

当時、以下のような問題を抱えておりました。

■海外子会社が抱えていた問題 

  • 技術スキルにバラツキがある
  • 誰が、どこの分野を弱点とするかが把握できず、対策ができない
  • 現地社員が、技術者としての成長を実感できず、モチベーションが下がりかけていた

このようなシチュエーションは、海外子会社のみならず、日本の組織内でも、日常茶飯事として起き得ることだと感じたのが、本記事を書くモチベーションとなりました。

設計した技能検定試験の概要

筆記と実技の二部構成とし、丸一日を費やす、大掛かりな取り組みになりました。

午前は筆記試験 (written exam) 、午後は実技試験 (hands-on exam) とし、その合計点で組織内の技術力を可視化するという試験設計です。

筆記試験の概要

情報処理技術者試験を参考にしながら、選択問題と筆記問題を織り交ぜました。

工夫したのは、プログラミング言語学習書の章立て構成を意識したことです。

■一般的なプログラミング言語学習書の章立て構成 

  • データ型(数値、文字、論理、日付)
  • hello world(テキストの入出力)
  • ファイルの入出力
  • 各種ブロック文(for / if / while)
  • 簡単なGUI(データベース接続なし)
  • 簡単なGUI(データベース接続あり)

この章立てを意識することによって、モレなく、ダブりなく、知識を確認できるためです。

また、Amazonで口コミのスコアが高い書籍の構成を、いわばテンプレートとして参考にすることで、試験問題のクオリティを楽々アップさせる狙いもありました。

注意したのは、自社内の開発標準を適宜織り交ぜ、世間一般的な知識と、自社内の知識を両方、確認できるようにした点です。

実技試験の概要

構成としては、筆記試験と同じ考えです。

ただ、実技試験では、自分プログラムを作成する問題に加えて、わざとバグをしのばせたコードをテストさせ、バグを発見し、対策をさせるという設問も含めました。

もちろん、バグとして出題したのは、過去で発生したインシデントでも、重大かつ、誰にでも起こしてしまう可能性のあるものです。

このようにバラエティに富んだ出題内容とすることで、より実務力に直結したスキルを数値化できるという効果が期待できます。

試験実施後の取り組みこそ、「本命」

試験を準備するだけでも、大変な仕事でした。

■試験実施で苦労した点 

  • 実務を丸一日ストップさせるための、業務調整をすること
  • 上位管理職を説得し、試験実施の了承を取り付けること
  • 試験の意義を現場に伝え、いたずらに序列化の不安を起こさないよう納得してもらうこと

こついった苦労をまとめるだけで、文庫本一冊になりそうな大変さがありましたが、それはまた別の機会に語ることとします。

筆者が気をつけたのは、試験実施後こそ「本命」という考えです。

まず、試験結果は、本人が分かりやすいように強みと弱点をレーダーチャートで表現して、成績表として返却しました。

試験内容を忘れてしまわないうちに、フォローアップ講習会を実施し、筆者が講師役を引き受けながら、試験で不出来だった部分を理解してもらえるようにスキル向上の機会を提供しました、

また、試験の得点が悪くても、講習会に参加し、再テストに合格したスタッフは、試験の高得点者と同等の評価にし、人事考課で不利になることのないよう、配慮を入れました。

本取り組みは、四半期に一度のペースで実施し、結果として、組織全体の技術力が「見える化」し、本社に劣らない技術力にまで組織を鍛える効果が出ました

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(おしまい)

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Ajikichi

「美味しくなければ旅じゃない」が口癖。旨いものを求め、約三十か国を食べ歩く中で、台湾・ベトナムが誇る「感動的食文化」との運命的出会いを果たす。毎年、十回ほど「外食」と称して渡航。 仕事はエンジニアをしており、デザイン思考が気になる今日この頃。

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