こんにちは。
本ブログ訪問者のほとんどは、高度区分(論文系)の情報処理技術者試験にチャレンジされる方々のようで、最近ではGoogle検索でもトップページの上位層に表示されるコンテンツが増えてきました。
記事の情報量と具体性において、Google先生が高評価してくれていることから、世間が求めている情報を、わりとズレなく発信できているのかなぁと思えるようになりました。
さて。
本記事では、ITストラテジスト(午後II)にスポットライトを当て、以下のような悩みを抱える方々にとって有益となるような情報をシェアしたいと思います。
こんな方におすすめ
- ITストラテジスト(午後II)の論文が書けるようにならず、困っている方
- 特に、「最初の一本」の論文を書こうとすると手がストップしてしまう方
目次
巷には「12時間 実務経験なし」という情報も……
インターネット上には、ITストラテジスト合格者の体験談が豊富にアップされており、様々な「勝ちパターン」を参考にすることができます。
中でも、筆者の目を引いたのは「ITストラテジスト 独学1発合格 ~勉強時間:12時間 実務経験無し~」という記事。
この記事の中身について詳しくは議論しませんが、他の記事などもちらほら拝見してみると、いわゆる「地頭が良い人なんだなぁ」という印象を受けました。
ちなみに筆者の場合、独学・一発での合格を果たせましたが、合格までの勉強時間は120時間でしたから、さほど優秀というわけでもないと思います。
こういったことを参考にすると、ITストラテジスト合格までに必要な時間は、個人差による開きが大きく、○○時間やれば大丈夫と一概に言い切ることはできないという結論が出せます。
○○時間やれば合格できると言えないからこそ、「先が見えない」午後IIの論文対策
人間、先の見えるシチュエーションであればモチベーションを維持でき、努力を継続させることもできますが、ITストラテジストのように、○○時間やれば大丈夫という指標が(個人間で大きく異なるため)明確に分からないシチュエーションでは、モチベーションを維持するだけでも大変です。
それに追い討ちをかけるのが、午後IIの論文対策が持つ「とっつきにくさ」。
■午後IIの論文対策の「とっつきにくさ」
- 論文の出題テーマは、企業経営をスコープとしているため、考慮すべきパラメータ(各種KPIや、IT施策に関する定量表現)が多くなりすぎる。論文ネタとなる数字を準備するのだけでも一苦労
- 経営とITの両方を結びつけるための説明スキルが必要。ITのことさえ説明できればいい他区分と、ITストラテジストが大きく異なるポイント
- 世間のトレンド(少子高齢化による市場縮小/労働力不足、生産拠点の海外移転、AI導入による業務効率化など)について、一般常識程度には広く浅く知っておき、どの切り口で出題されても、論理的にストーリー展開できるように準備する必要がある
筆者は、プロジェクトマネージャ試験に一発合格したことで気を良くし、「ITストラテジストも同じ方法で合格できるでしょう」という、根拠のない自信で出願した人間です。
上述したような「とっつきにくさ」は、出願前から薄々イメージできていましたが、真の意味で痛感したのは、試験勉強を一ヶ月続けても、午後IIの論文を書き出せない状況が続いたからでした。
そして、○○時間勉強すれば大丈夫と言い切ることのできない「先の見えない」シチュエーションを前にして、絶望的な気分になったのです。
午後IIの論文対策で、筆者に訪れた心境変化
時系列で、筆者に訪れた心境変化を交えつつ、試験本番までの過ごし方、論文対策の取り組みについてまとめます。
ちなみにITストラテジストの勉強を開始したのは八月中旬であり、午前II・午後Iの学習に取り組み始めていました。
9月上旬(試験当日まで五週間)
そろそろ午後IIの過去問に取り組もうと、一番書きやすそうな年度を選んでトライしますが、まったく歯が立ちませんでした。
午後Iはある程度、合格ラインを攻略する算段が見えてきていたので、午後Iの勉強時間配分を減らし、午後IIへ重点的に取り組むことを決意したのも、この時期です。
■この時期に重視したこと
- 書けない根本原因は、ネタ不足だということが分かっていた
- だから、ネタ収集(製造業のトレンドや各種KPIについての情報収集)に徹した
9月中旬(試験当日まで四週間)
独学でやることに行き詰まったので、プロジェクトマネージャ試験の教科書で有名な「みよちゃん」のYouTube動画を、片っ端からチェックしました。
■みよちゃんの動画を見て得られた気づき
- システムの導入で効率化を図るストーリでは不十分。それでは他者とようやく横並びの状態になっただけ。業界で(他社と比べて)優位になるためのIT戦略を書かないと、論文のトピックとしてそもそも失格
- 「誰が」するのか。5W1Hを明確にする。ITストラテジストは登場人物が増えるので、特に注意しないと、論文を採点する立場の人にとって、分かりづらいストーリになってしまう。明確な論述を常に心がけること
- 定量的に効果を示す。単に「投資額10億円に対し、15億円の効果が一年目で見込める」と書くのは、不十分。書かないよりマシだが、ITストラテジストのレベルになれば、受験生全員がそういうことを書いている。大切なのは、根拠を示せること。どういう根拠で「15億円」が得られるかの根拠を示すことができてようやく、合格論文の仲間入りを果たせる。その根拠について、「詰め」が十分にできているほど、合格は確実になる
一つひとつを見ると、どれも目新しいことではなく、当たり前のことに過ぎませんが、行き詰まり状態にあった筆者としては、良いタイミングで基本を忠実に見直すきっかけとなりました。
ITストラテジスト(午後II)の論文対策は、とにかくいろんなパラメータを考えながら、全体バランスを取っていく、重労働とも言える知的生産作業なので、押してダメなら引いてみるくらいの柔軟さを持てることが大切であり、あまり一人の世界に閉じこもってモンモンし過ぎないのもポイントです。
みよちゃんの動画は、あれだけ良質なコンテンツを無償で提供しているので、すごいとしか言いようがありません(まだチェックしていない方は、是非活用した方が良いと思います)。
9月下旬(試験当日まで三週間)
相変わらず、午後IIの論文「最初の一本」が書けない状態のまま、9月下旬を迎えます。
この週では、集めてきた情報(以下のリスト参照)を、いちど自分の中で整理することに重点を置きました。
■集めてきた情報
- 製造業のトレンド、各種KPI、およびその具体的な数値
- 自分でも書けそうな過去問リスト(年度と設問番号)
- 経営戦略、業務改革の入門書(文庫本程度の薄っぺらいもの)を図書館で借りて、三冊ほど目を通し、ノートに要約したもの
自分の手を使って情報を再編成することにより、理解の浅かったポイントに気づくこともでき、このことはアウトプット能力の増強にも貢献したように思います。
10月上旬(試験当日まで二週間)
まだ、午後IIの論文「最初の一本」が書けない状態のまま、とうとう十月に入ってしまいました。
ITストラテジストとしての実務経験がないにも関わらず、午後IIの論文が書けるようになるためには「視点を上げる」ということがポイントには薄々気づいていましたが、なかなか難しいことです。
実務経験なしに「視点を上げる」ためには、仮想体験に基づいて学ぶという、やや現実離れした方法を取るしかなく、これがITストラテジストの試験を難しくしている要因だと気づいたのも、この時期です。
試験まであと二週間しかないのに、午後IIがうんともすんとも言わない状況には、焦りを通り越して、いっそ潔く諦めるという選択も、だんだん考えるようになってきていました。
ペンを手にすると、あいかわらずストップした状態のままですが、ギブアップするのは悔しいので、とにかくウンウン唸り続けて一週間を過ごしました。
10月中旬(試験当日まで一週間)
「超」のつく荒削りな論文ですが、ようやく「最初の一本」を仕上げることができたのは、試験本番、一週間前でした。
クオリティ的には、合格基準まであと一歩という内容でしたが、「一本目」を書けたという自信は、大きな前進につながりました。
■「最初の一本」を書いた後の気づき
- 短く簡潔に書くスキル、長く引き延ばして(深堀して)書くスキルの両方を鍛えて、使い分ける
- 設問(ア)、(イ)、(ウ)のそれぞれについて、用意してきた論文ネタをどう結び合わせるか、試験開始後、最初の20分で判断できないと、間に合わない
- 説得力を高めるため、他者の書いたサンプル論文や、午後I過去問をもう一度点検し直して、自分の表現力を高める必要がある。
不思議なことに、「最初の一本」を書いた後は、グーンと午後IIの論文作成ハードルが低くなり、わりと流れ作業で書けるように急成長(?)。
結局、試験当日までに、五本の論文を作成することができました。
ITストラテジスト(午後II)の論文を攻略するために大切なこと
ITストラテジストだけの話じゃないかも知れませんが、論文対策は、とにかく「最初の一本」が書けるようになるまで諦めないことが最重要であり、それをクリアすれば、あとのハードルは劇的に低くなると言うのが、筆者の到達した境地です。
ITストラテジストのように、超上流工程の資格となれば、「実務経験がある」と言える人はかなり限られてくるでしょうし、事実、インターネット上の合格体験記は「実務経験なし」派の方が大多数を占めています。
「最初は無理だと思ったけど楽々合格してしまった」という、優秀な方々のアドバイスが多い中、筆者のように120時間を投入し、試験当日の一週間前までウンウン唸り続けた「凡人」の体験談は、意外と少なかったため、情報シェアしようと思い、本記事を作成しました。
少しでも多くの方が、本記事から得たアイデアをもとに合格を達成されることを願って、ペンを置きます。