目次
はじめに:かつてブイブイしていたローカル街へ
「三重(サンチョン)へ行ってくる」と台湾の友達に言うと、怪訝な顔をされた。
三重は、かつて、台湾ヤクザがブイブイいわせた街だった。
今日ではその面影すらなく、事前に情報入手しておかない限り、観光客が自らそうだと気づくことはないだろう。そんな三重、実は「B級グルメ資源」に恵まれた、食べ歩きの楽園でもある。美味しい食堂たちが、徒歩で移動できるエリア内に密集している。
とりあえず、半日かけて食べた料理たちを中心に、三重についてご紹介しよう。
グルメの街「三重」訪問レポート
台北の中心からちょっと外れた三重の街へは、バスでのアクセスが便利だ。
驚くかも知れないが、台湾のバスは、日本と違って、バス停に「居る」だけでは、止まってくれない。まるで救援ヘリコプターを見つけた遭難者のように、派手に挙手して、腕をブンブン振り回してアピールをする必要がある。

台湾のバスには「コツ」がいる
また、台湾のバスは、客が席に座るまで待つことなしに、アクセルをブォンと踏み込む。
地元民は老若男女、「サーファー並みに」と書くと少々イイスギだが、それでも大変器用にバランスを取り、動き出すバスの中、うまくイスに座っている。
今大魯肉飯|何をオーダーしても間違いなしの、「魯肉飯」名門店
早朝からオープンしている「今大魯肉飯」へ。
代表的な台湾B級グルメである、魯肉飯(ルーロンファン)だが、ここは台湾でもトップレベルのクオリティだと評される。それだけの有名店であるわりには、古ぼけて、洒落た感じがまったくしない。

「今大魯肉飯」
あくまでも、古ぼけたマンションの一階にある「フツーの店」感がムンムンしている。
台湾の屋台は、ほぼ百パーセント、料理メニューの看板が、客にしか見えない(店子には見えない)場所に取り付けられてある。一番困るのは、発音が分からない漢字があっても「指差し」オーダーできないことだ。

メニュー看板の位置から「指差しオーダー」は難しい
せめて、客と店子、両者から見れる場所に料理メニューがあると、日本人にとっては注文しやすいのだが…

オロオロと挙動不審なアジ吉の様子から、日本人だと気づいて、超フレンドリーに話しかけてくれる店のねーさん。

簡単な日本語が通じたので、大変たすかった。
日曜日の早朝であるせいか、店内はガラガラ。

冷房キンキンの店内
クーラーがキンキンに効いており、ナイアガラの滝のごとく汗を流して歩いてきたアジ吉は、命が救われる思いであった。
魚の煮付け(左下)、排骨スープ(左上)、魯肉飯(右上)、そして野菜スープ(右下)。

大充実セット
これだけ大充実のセットを注文しても、たった四百円。一皿あたりにすると、わずか百円。日本だったら、絶対こんなオトクには楽しめない。
「魯肉飯(ルーロンファン)」は、どこの定食屋へ行ってもメニューにあるほど有名な台湾料理。
これまで数十軒という食堂で魯肉飯を試したアジ吉だが、どこもかっこも似たような味で「物足りなさ」があった。それは、ブタ肉が、あまりにも小さく切られているか、あまりにも長時間煮られているかで、ほぼ行方不明の状態になっており「ブタ肉を食べたという満足感が得られない」という物足りなさであった。
ここの魯肉飯は、その点、ブタ肉が(小さすぎず、大きすぎない)絶妙なサイズに切られており、かつ、煮込み時間もバッチリで、食後に十分な満足感が得られた。

「魯肉飯」
「魚の煮付け」は、あっさり味で、日本人にも馴染めそうな一品。
こんなのを食べたら絶対ビールが飲みたくなるけど、あいにく、ビールは販売されておらず。
この店に限らず、台湾では、ビールを食事中に飲むという習慣があまり浸透しておらず、ビールを提供しているレストランは、よほど苦労して探そうとしない限り、そう簡単には見つからない。

「魚の煮付け」
「排骨スープ」は、豚肉を、椎茸・アサリ・にんにくと一緒に、骨が溶けるような圧力と時間をかけて煮込んだ逸品。

「排骨スープ」
まるで、作った人の愛情が、胃に染み渡ってくるような「暖かさ」を感じた。

本気でそう思えるほど、ここの排骨スープは衝撃的な美味しさ。
このスープを飲むだけのために航空券を買って台北いっても、損しない、後悔しないレベル。

「排骨スープ」は衝撃的な美味
お次は、「野菜スープ」。
「排骨スープ」をすでにオーダーしていたので、「野菜スープ」は注文するつもりはなかったのだが、店のねーさんに「野菜スープもおいしいヨ!」と力説されて、追加注文。朝から、まさかのダブルスープ。
「野菜スープ」は、まるで和風出汁を想像させるかのような、さっぱりしているが、コクのあるスープ。

「野菜スープ」
白ご飯を注文して、このスープかけて食べたら全米震撼の感動が待ち受けていると思う。
三重の街を、ちょっと散策
台湾には、「コンビニの数とエエ勝負をするのでは」と思うほど、いたるところに「廟」があり、老若男女、熱心に参拝する人々の姿が見られる。

台湾なら、どこにでもある「廟」
この信仰深さの根底にあるものは、一体何なのか。
台湾には、中国大陸から海を渡ってきた人々が少なくない。航海の無事を願って「媽祖」と呼ばれる海の守り神を信仰していたが、長旅を終え、無事に台湾の地へたどり着けた人々には、きっと神様へ感謝する気持ちが強く残ったに違いない。
その感謝の気持ちが、今日の台湾人の DNA にも脈々と受け継がれている故、人々の信仰心が厚いのかも知れない。
台北には、あまり風光明媚な場所はないが、こういう街の路地裏を「この道の先には何があるんやろ」と想像しつつ歩くことは、大変楽しい。

路地裏
たった二メートルにも満たない狭い道路が、はるか数百メートルも先まで続いて行く。
道路の両脇には、アパートが隙間なく並んでおり、まるで「迷路」を形成しているようにも思えてくる。

どこまでも続く路地
レトロな感じのする朝食専門店。

朝食専門店
カラフルなちらしが壁を覆い尽くす。

カラフル壁
扇風機の修理専門店。
日本だと成立しないような商売が、ここ台湾では、いくつも存在している。

扇風機修理の専門店
「りんご味の牛乳」をコンビニでゲット。
りんごの味でもなく、牛乳の味でもなく、なぜかマンゴージュースのように甘く、とろみのある飲料だった。

リンゴ味の牛乳
台湾のコンビニでは、日本では見たことのないような商品もあり、コンビニでの買い物自体が、観光要素になり得る。
灼熱の日中時間帯を歩いていると、天国のように感じる、日陰。

昼間は灼熱地獄
台湾で浸透してきた、(借りたのとは別のスタンドにでも)乗り捨て可能なレンタル自転車。観光客も利用している人が多い。

レンタル自転車
どこか懐かしいような感覚がわいてくる、路地裏の風景。

路地裏の風景
朱記花枝羹|「天職」を得た店主がふるまう極上の逸品
お次は、イカスープ、ビーフンで有名なこちら「朱記花枝羹」へ。
まるで通行路上に露店が出ているように見えるが、れっきとした店舗。

「朱記花枝羹」
店の主人は、大変な働き者。
仕事っぷりは、情熱たっぷり。客への気配り、声配りのきめ細やかさも、ハンパなかった。きっと「食堂」がこの人の天職だったのだろう。

天職と出会えた店主
「イカスープ」は、コリコリしたイカ、トロトロしたスープ。両者とも、大変美味しいのだが、あと一つ、なにか物足りない。
その「足りない」と感じさせるものこそ、別メニューとして提供されている、パサパサ乾燥したビーフンである。

「いかスープ」
コリコリ、トロトロ、パサパサの食感が口の中で奏でる「食の三拍子」、大変な美味しさだった。
三重牛乳大王|「パパイヤミルク」の名門店で至福のひととき
パパイヤミルクで有名な「三重牛乳大王」へ。

「三重牛乳大王」
通りに面した店で、ドアはなく、外気と筒抜けになる構造をしているのだが、奥行きがあって広々としている為、店内では冷房がガンガン効いている。

冷房の効いた店内
「パパイヤミルク(大)」を注文。
まるで、すりつぶして液状にしたプリンのように、トロミ、甘みがある飲料。

「パパイヤミルク」
甘さには「謙虚さ」があり、どれだけ飲んでも、すっきりさが持続しそうだった。
五燈獎|極上の豚足ごはんは、コラーゲンの嵐
お次は、豚足ごはんで有名な「五燈獎」へ。

「五燈獎」
昼食時間をさけたので店内は空いていたが、客の列もないのに、ひたすら豚肉を切り刻んで仕込んでいる店のおばさん連中。
昼食時間になると、こういう落ち着いた時間帯に仕込みをしないとサバき切れないほどの来客があるのだろう。

仕込みに熱中
豚足には三種類ある。
- 【蹄膀】脂身がいちばん良く含まれる部位
- 【中段】皮、筋、肉がバランスよく含まれる部位
- 【腳蹄】やわらかく、コラーゲンたっぷりの部位
指定しなければ、デフォルトとして【中段】がテーブルに届けられるようだった。
脂身たっぷりの【蹄膀】は太りそうで避けるとして、まずはコラーゲンたっぷりの【腳蹄】を注文。

豚足三種類
これがコラーゲンたっぷりの【腳蹄】。
表面は、半透明のプルプルした肉で覆われている。コラーゲンそのものという感じ。また、柔らかい部位の肉であるせいか、奥の奥の奥にまで、出汁が染み込んでおり、いちど箸にとった肉は、あらためて出汁をつけるために皿へ戻す必要もなかった。

「腳蹄」
台湾のレストランでは、店の奥に巨大な冷蔵庫があり、客はそこからセルフサービスで飲料を取ってくる方式になっている。

セルフサービス式の冷蔵庫
豚肉、白ご飯のコンビネーション。
この美味しさは、食がストップしなくなるという意味において、かなり危険。

白米と絶妙なコンビネーション
次は、皮、筋、肉すべてがバランスよく含まれた【中段】をオーダー。
さきほど食べた【腳蹄】と比べると、すこし硬い部位なので、肉の奥にまでは出汁が染み込んでいなかったし、若干、カスカスした食感。

「中段」
この店では、デフォルトでテーブルに届けられるのは【中段】だというが、個人的には、コラーゲンたっぷりの【腳蹄】の方が好みだった。
まとめ:あらゆるジャンルのグルメを徒歩でハシゴできるパラダイス
台北市内には美味しい店が無数にあるけれど、立地が点在しており、効率よくハシゴしづらいのが難点であった。
その点、ここ三重は、本記事でご紹介した店は、すべて徒歩で移動することができ、まさに「食べ歩き」のためにあるグルメ街であると言えよう。
トロトロの豚足ご飯から、台北トップレベルのパパイヤミルクまで、料理ジャンルは多岐に渡っており、しかも、どれもがハイレベル。是非、次回の台北旅行のTO DOリストに追加してみてはいかがだろうか。