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はじめに:基本情報や応用情報では「横並び」になるから……
こんにちは。
将来の就職活動を見据えて、工学部の学生さんを中心に、情報処理技術者試験の取得を考えている方がいると思います。
学業、サークル、バイトなど、なにかと多忙な学生生活。
資格勉強ばかりに時間を費やすわけにも行かないため、以下のような「相場」ができてしまいます。
- 手頃なところでは、基本情報技術者試験
- ちょっと踏ん張って、応用情報技術者試験
これら2種類の資格にパスしている学生さんは結構いるので、就職活動でのアピール材料としては、若干インパクトに欠ける部分も……
実は、この上位試験として、「高度情報処理技術者試験」なる8区分があります。
「高度情報処理技術者試験」とは
最難関の「ITストラテジスト試験」は、IT業界で経験を重ねたエンジニアの「集大成」的な位置づけとなっており、この資格を取得することが、ある種のステータスにもなります。
難易度が高いものから順番に並べると、以下の通り。
- ITストラテジスト試験(39歳)
- システム監査技術者試験(40.7歳)
- プロジェクトマネージャ試験(37.8歳)
- ITサービスマネージャ試験(39歳)
- システムアーキテクト試験(36.6歳)
- ネットワークスペシャリスト試験(33.5歳)
- データベーススペシャリスト試験(31.5歳)
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験(34.4歳)
カッコ内は、合格者の平均年齢(平成29年度)です。
基本情報技術者試験が25.1歳、応用情報技術者試験が29.4歳という合格者の平均年齢を考えると、高度情報処理技術者試験の合格者は、業界の最前線でバリバリに活躍している「脂が乗った」エンジニア中心だと分かります。
これだけハードルの高い資格をゲットしていれば、就職活動において、有利にアピール可能なのでしょうか?
本記事では、そんな気になる、学生さんの高度情報処理技術者試験チャレンジについて、実際に資格を保有する現役エンジニアが切り込んでみたいと思います。
学生さんの高度情報処理技術者試験チャレンジ、実態調査
合格者の平均年齢からも分かるように、高度情報処理技術者試験は、実務経験量と密接な関係があります。
合格「率」では、社会人より学生さんの方が優秀?
早速ですが、実務経験のない学生さんに、高度情報処理技術者試験をパスすることは可能なのでしょうか?
以下は、高度情報処理技術者試験の合格率(合格者÷受験者)を、社会人、学生さんで別々に算出した表です。
区分 | 社会人の合格率 (合格者数÷受験者数) |
学生さんの合格率 (合格者数÷受験者数) |
ITストラテジスト試験 | 14.8% = 698/4,726 | 9.5% = 2/21 |
システム監査技術者試験 | 15.1% = 432/2,856 | 16.7% = 1/6 |
プロジェクトマネージャ試験 | 13.1% = 1,511/11,557 | 25.6% = 10/39 |
ITサービスマネージャ試験 | 13.7% = 535/3,919 | 0% = 0/13 |
システムアーキテクト試験 | 12.7% = 700/5,524 | 20% = 3/15 |
ネットワーク スペシャリスト試験 |
13.3% = 1,636/12,315 | 21.5% = 100/465 |
データベース スペシャリスト試験 |
13.9% = 1,584/11,369 | 30.8% = 125/406 |
エンベデッドシステム スペシャリスト試験 |
17.6% = 585/3,318 | 28.9% = 22/76 |
合格者数(絶対数)では、社会人が、圧倒的多数というのは予想通りですが、意外なのは、合格「率」では、学生さんの方が好成績を残していること。
これはおそらく、学生さんで高度情報処理技術者試験に出願する方は、専門学校でバリバリに実戦を積んだり、大学でコンピュータを学んでいたりする、いわゆる「ガチ」で勉強をする方ばかりなのではないかと思います。
一方、社会人では、職場から命令されて(なかば無理矢理)受験する人も少なからずいるため、合格「率」としては、低めの数字になってしまうのでしょう。
ご参考として、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験についても、社会人・学生さん別の合格率を表にしておきます。
区分 | 社会人の合格率 (合格者数÷受験者数) |
学生さんの合格率 (合格者数÷受験者数) |
基本情報技術者試験 | 20.8% = 6,530/31,377 | 25.4% = 4,445/17,498 |
応用情報技術者試験 | 19.6% = 5,460/27,834 | 24.0% = 983/4,098 |
実際問題、学生さんが高度情報処理技術者試験に合格可能?
さきほど掲載した表を「合格者数」に注目しながらチェックしてみると、どうでしょう。
赤い太字にした5区分について、学生さんの合格者数が非常に少ないということに気づかれるでしょう。
区分 | 社会人の合格者数 | 学生さんの合格者数 |
ITストラテジスト試験 | 698 | 2 |
システム監査技術者試験 | 432 | 1 |
プロジェクトマネージャ試験 | 1,511 | 10 |
ITサービスマネージャ試験 | 535 | 0 |
システムアーキテクト試験 | 700 | 3 |
ネットワーク スペシャリスト試験 |
1,636 | 100 |
データベース スペシャリスト試験 |
1,584 | 125 |
エンベデッドシステム スペシャリスト試験 |
585 | 22 |
一方、ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、および、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の3区分については、学生さんの合格者数も、かなり多くなっており、(社会人経験がなくとも)合格可能性は十分あると言えます。
基本情報技術者試験、応用情報技術者試験と比べて、高度情報処理技術者試験の難易度は格別に高く、学生時代に合格できたら、就職活動で差別化をはかる「武器」になるでしょう。
論文試験の課される「論文系」は、学生さんにとっては攻略不可能か?
それでは、論文試験の課される5区分については、どうして、学生さんの合格者数がガクンと落ち込んでしまうのでしょうか?
理由はきわめて単純で、論文試験の出題テーマが「あなたの実務経験に基づいて記述せよ」という旨の内容だからです。

論文形式の出題で、ハードルが一気に上がる
マルバツ式の問題や、選択式の問題とは違って、論文試験となると、一気にハードルが上がります。
極めて豊かな想像力の持ち主であれば、あたかも自分が体験したかのように論文を書けるかも知れませんが、実務経験を豊富に積んだ社会人受験生と同じ舞台で勝負するのは、あきらかに不利です。
そして何より、論文系の高度情報処理技術者試験(5区分)は、入社してから十年くらいのキャリアを積んだ先輩社員が担当する業務であるため、仮に新卒社員がそのような資格を持っていたとしても、アンバランスだと思われるかも知れません。
まとめ:学生生活の記念にもなる、生涯有効の国家資格
学生さんが高度情報処理技術者試験を検討される場合、以下:
- ネットワークスペシャリスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
の中からチョイスするのが、合格実現性の観点からも、入社後に求められるスキルセットの観点からも、バランスが取れた選択肢であるというのが、本記事の結論です。
高度情報処理技術者試験は、どの区分も、合格への道のりは容易ではありませんが、一度取得すれば生涯有効の、価値ある国家資格です。
学生生活の記念にもなるので、ぜひとも勇気を出して、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。