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はじめに:仕事についての【悩み】は、日台だいたい同じだけれど、【理想】は……
友人(台湾人)と長電話(長Facebook!?)していたとき、仕事の愚痴話で盛り上がった。日本&台湾と国は違えど、年金システムが崩壊しかけていることや、年収がいっこうに増えないことなど、お互いの心配事がおどろくほど合致していた。
「仕事」に関連して、以前、ネットで読んだ「台湾サラリーマン夢の職業ランキング」(記事はこちら)の記事が気になっていたので、話題に出してみた。

アンケート結果
同ランキングによると、上位トップ3は、どれもが日本人からしてみれば意外な「職業」。
もちろん、「夢の職業」だから、意外でも構わないのだが、どうしても理解できない。
- 民宿やカフェの経営(8,122票、得票率36%)
- いわゆるネットセレブ(5,987票、同27%)
- 公務員(3,875票、同17%)
民宿やカフェなんて、初期投資ハードルが高いわりに儲からなさそうだし、ネットセレブは当たれば大きいが安定性に欠ける。
納得できそうなのは三位の「公務員」くらいだが、「夢」と言うほどのものだろうか。


友人は苦笑しながら、台湾文化トークを繰り広げてくれた。
台湾には「錢多事少離家近」という諺がある



友人の諺に含まれる三つの特徴、すなわち、錢多(お金がたくさん入る)、事少(やることが少ない)、離家近(家から近い)のそれぞれについて、これまでにアジ吉が台湾で見聞きしてきた文化を重ね合わせると、冒頭のランキング結果も、あながち間違ったものではないと思えるようになったのである。
今回は、そのストーリを発信したいと思う。
錢多:お金がたくさん入る
日本より物価が安い台湾では、初任給も、日本の半額以下。
台湾社会には、「普通に暮らしていたら、高給や昇給は期待できない」という諦めが根底にあるため、日本社会以上に、個人一人ひとりが副業をしてでもガツガツ稼ぎたいと願望を持っている。

台湾社会では、高給や昇給は「高嶺の花」と考えられている
会社員の副業は一般的で、台湾の街でよく見かける「UFOキャッチャー」も、そうである。以前、詳細記事を書いたこともあるので、興味があればどうぞ。
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こんなあり得ないアイテムまで「景品」になっちゃう、摩訶不思議な台湾UFOキャッチャー事情
目次1 似て非なる日台UFOキャッチャー事情。個性の強さでは、台式にぜったい勝てない日式2 副収入をキャッチ? 「副業」としても熱い視線を受ける、ゼッタイ儲かる?ビジネス 似て非なる日台UFOキャッチャー事情。個性の強さでは、台式にぜったい ...
台湾では、一台一台のUFOキャッチャーに「台主」と呼ばれるオーナーがいて、ほとんど働くことなく、毎月数千円以上の儲けを軽々ゲットしていると友人は言う。年間にすると、十万円近くになるので、馬鹿にはできない。
そういう文化事情を振り返ると、第二位の「ネットセレブ」は副業として取組みやすいことから、納得できる結果だと思えてきた。
事少:やることが少ない



友人があまりにも簡単そうに言い放つものだから、あっけらかんとしてしまったアジ吉。

人を使って、自分はラクするという発想
ランキングの数値を見るだけでは理解できなかったが、民宿やカフェを単に開業するのではなく、「経営者」としてかかわることに憧れる台湾人が多いのかも知れないと思った。
初期投資ハードルが高いことに変わりはないが、掃除や大変な仕事はアルバイトを雇って働かせると、「楽な仕事」という台湾人の理想に合致してくる。

「経営者」として民宿オーナーになるという発想
友人によると、民宿へ「投資」をし、そこから収入を得るというスタイルの「副業」を選ぶ人もいるらしい。民宿に人気があるのは、「経営者」や「投資」など、多様な関わり方が可能であることも影響しているように思う。
離家近:家から近い
多くの台湾人と接してきたが、彼ら彼女ら全員に共通して言えるのは、マザコン、ファザコンならぬ「家族コン」ということだ。
もう社会人の年齢なのに、親へ何時に帰宅するか、こまめにLINEメッセージを送る友人(男性)の姿を初めて見たときは、その友人のことを変わり者だと思ったが、何年も台湾へ通い続けるうちに、台湾では決して珍しくない光景だと理解できた。

いつまでも家族いっしょに過ごしたいと考えるのが、台湾文化
民宿やカフェ(第一位)は家の近くに開業すれば家族と長い時間を過ごせるし、ネットセレブ(第二位)に限っては、二十四時間自宅待機することも可能だ。
「家から近い」という台湾人の理想は、もちろん通勤を楽にしたいという気持ちもあるだろうが、ホンネは、いつでも家族とすぐに会える距離にいたいというところにあるのではないか。
まとめ:台湾文化を知ることは面白い
ランキングの数字だけ見ていては伝わらない「理由」が、台湾の文化を知ることによって、少しずつ見えてくる。
空前の台湾ブームにより、グルメや観光について特集した台湾本は多く出版されている一方、台湾人の文化に深く入り込んだ台湾本がなかなか見つからないのは残念に思う。

文化を知って、初めて見えて来る側面がある
そういった台湾本が出版されるのを待っているのではなく、自分から台湾に友達を作って、どんどん情報収集し、【アジアの何か。】で発信していきたい。
(ご参考)台湾文化をディープに学べる台湾本
以下は今年出版されたばかりの一冊だが、久々に読み応えのある「台湾本」であった。
本記事を面白いと感じていただけた方であれば、もっとワクワクしながら楽しんで、読み進められる「必読の一冊」であることに間違いない。
書籍名:台湾探見 Discover Taiwan―ちょっぴりディープに台湾(フォルモサ)体験
いわゆる「日本語世代」とされる年配者の方々へのインタビュー記事も多数収録されており、本書で活字に起こされることがなければ、次の世代へ語り継がれなかった心温まる日台ストーリも見逃せない。