台北

誕生日祝いや、刑務所の出所後に食されることもある、台湾の縁起モノB級グルメとは?

投稿日:2018年6月2日 更新日:

「許仔猪脚麺線」|マイ鍋持参の常連さんもやって来る、地元密着な「一軒」

台北・大稻埕は「慈聖宮」まで、小吃ハンティングへやって来た。個性ある「小吃」飲食店が鈴なりに営業する、知る人ぞ知る「小吃フードコート」である。

あきらかに人だかりの集中している「一軒」が目にとまったので、とりあえず、この店の行列に参加してみる。

台湾の飲食店では、持ち帰りの客と、店内飲食の客とで列が分かれていることが多いのだが、ここはいっしょくたになっている様子。店舗が小さいので、列を分けるほどのスペースが作り出せない、というのが実情なのかも知れない。

人だかり数、ナンバー1

人だかり数、ナンバー1

古ぼけた看板には「許仔猪脚麺線」とある。

創業したのはいつだろうかと思ってインターネット検索してみたら、四十年という情報もあったけれど、それが正確な情報であるかは未確認である。ただ、控えめに言っても創業四十年は下らないほどの「老舗感」は、十分ある

「伝統」を感じる看板

「伝統」を感じる看板

お客のほとんどは台湾人。

中には、見るからに「常連さん」という、片手に(家から持って来た)鍋を手に待機している人の姿も。

「常連さん」と思われる

「常連さん」と思われる

きっと、この鍋に、直接、料理を入れてもらって、持ち帰るのだろう。たしかに、そうすることによって、帰宅後、コンロにかけてすぐ温められる。ものすごく合理的だ。

カウンター席に腰掛け、店名の一部にもなっている、看板メニュー「猪脚麺線」を注文。

カウンター席に腰掛ける

カウンター席に腰掛ける

目の前で調理が繰り広げられるので、まるで「台所で食べている」気分も味わえる。迫力満点

まだ早朝だが、南国・台湾では、見ている方が同情したくなるくらい、店員さんが汗水ながしながら調理している。

やっぱり、カウンター席は素敵だ

やっぱり、カウンター席は素敵だ

一丁あがり

一杯八十元と、ちょっと高めだが、この豚肉のボリュームを見れば、誰も文句は言わない

「一番最悪」だけど「縁起がいい」という料理。いったい何物なのか

目の前に、ゴトンと置かれた器。

どれも豚肉だろうが、「コブシ」や「脚」の部位らしく、どれも大きくて,ゴツゴツ感がすさまじいハンパない迫力、圧倒されそうになる。

「猪脚麺線」

「猪脚麺線」

何をかくそう、豚肉が、これでもかというほどガッツリ投入されていることの背景には、台湾の文化的な意味合いがある。

【猪脚】に隠された文化的意味合いとは?

お気の毒だが、豚は人間に食べられる運命にありながら、「汚い」「不衛生」というイメージを持たれがちである。

その脚(コブシ)については、(豚が)自分の糞の上を歩くこともあるため、一番不衛生な動物の、一番不衛生な部位、つまり「最悪の部位」と捉えられることもある。

そんな「最悪の部位」も、台湾食文化では欠かせない、大人気のグルメとなっている。ここ「猪脚麺線」も例外ではなく、見せつけるようにガッツリ盛りつけている。

台湾文化では、「最悪の部位」をテンコ盛りにしたから、これ以上悪い方向へ向かうことはないので、むしろ、縁起が良いという意味合いに派生した、とのこと。

誕生日パーティはもちろん、刑務所から出所後、新しい生活に向け更正を誓って「一口目に食べる料理」としても知られている。

豚肉のカタマリを「発掘」すると、下から出てくるのは、ソーメンのように細い麺

豚肉のカタマリに隠された「麺線」

豚肉のカタマリに隠された「麺線」

台湾では、「麺線」と呼ばれているが、この食材にも、ちょっとしたストーリーがある

【麺線】に隠された文化的意味合いとは?

麺線は、ソーメンそっくりの食感だが、かな〜り長い麺である。

この「長い」の意味が派生して、「長生き」のシンボルにもなって、台湾食文化では、ポピュラーな料理ジャンルとなっている。

多少、食べづらいことがあろうと、もし短くカットしようものなら、人生を短くしてしまうようなものだ、という感覚が台湾人にはあるのかも知れない。

「縁起の良さ」をあらわす「猪脚」と、「長寿のシンボル」を意味する「麺線」

これらを、ニンニクと豚骨ベースのスープに絡めて、アツアツでいただく。台湾では、よく小籠包に使われているスティック状の細い生姜が、トッピングとして加えられており、全体の味を引き締める効果を出している。

このプルプル感

このプルプル感

思わず、ギョッとした

長い長い麺を必死にすすっていると、背後からニュ〜ッと、手とともに「器」が伸びてきたのだ。後ろを振返ると、おじさんが立っている。

背後から、ニュッと「器」が伸びて来た

背後から、ニュッと「器」が伸びて来た

実はこの店、スープをおかわりし放題なのだ。

日本人にとっては、少しクセが強すぎるかも知れない、豚エキスたっぷりのスープを、台湾の人々は、こぞっておかわりしている。

「格闘技」に近い食後感。超ディープな台湾B級グルメを完食して

「麺線」と聞いて、軽めのB級グルメを想像していたが、テーブルに届いたのは、巨大な肉塊が六つくらい入った、人生で見たこともない迫力の一杯であった。

汗をかきながら、格闘という言葉に近い状況で、一杯を平らげたが、ぜんぶ食べ終わる頃にはバテてしまい、息もゼェゼェ完食するだけでも体力が必要だけど、台湾のディープな食文化を味わうには、格好の「一軒」であることに、違いはない。

ここまで全部知ってしまったあなたには、試す勇気が残されているだろうか。

店名 許仔猪脚麺線
住所 台北市保安街49巷17号

ブログランキング

(おしまい)

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

Ajikichi

「美味しくなければ旅じゃない」が口癖。旨いものを求め、約三十か国を食べ歩く中で、台湾・ベトナムが誇る「感動的食文化」との運命的出会いを果たす。毎年、十回ほど「外食」と称して渡航。 仕事はエンジニアをしており、デザイン思考が気になる今日この頃。

オススメ記事

「韓国のマチュピチュ」こと、甘川文化村 1

目次1 はじめに:国内航空券よりも安い、釜山行きチケット2 「チョリャンミルミョン(草梁ミルミョン / 초량밀면)」地元の超人気店3 「甘川文化村」釜山のマチュピチュとも呼ばれるアート村4 「チャガルチ市場」飲ん兵衛のオアシス5 部屋呑み| ...

てへぺろ? 2

目次1 はじめに:朝の食事なら、萬華区(万華区)が良い1.1 なぜ萬華区(万華区)か?2 萬華区(万華区)エリアの朝食スポット5選2.1 「阿偉正宗咖喱飯」昭和の給食、素朴なカレー2.2 「周記肉粥店」オカワリ必至、おかゆがススム君2.3 ...

3

目次1 はじめに:数時間前まで「馬祖列島って何?」だった筆者が、出発を決意1.1 そうだ、「馬祖」行こう1.2 インターネット検索できないことだらけ。逆にそれって、チャンス?1.3 本記事のコンテンツについて2 馬祖列島を魅力的にする15の ...

家族団らん 4

目次1 はじめに:ハノイ随一のインスタ映えスポットとは?1.1 トレインストリートへの行き方1.2 本当にインスタ映えするのは「電車」ではない1.3 ハノイの「目覚め」2 「トレインストリート」訪問レポート2.1 「リビングルーム」になった ...

時空旅人 2018年9月号 Vol.45 [ 台湾 見聞録 ー 日本が残した足跡を訪ねて ー] 5

目次1 はじめに:ひさびさに「アタリ」の台湾特集誌が出たという直感でポチる2 【時空旅人 2018年9月号 台湾 見聞録】読書レビュー2.1 本書の構成スタイル2.2 日台ストーリの描かれ方2.3 「永久保存版資料」としての価値もある、【目 ...

6

目次1 午前六時台に、西門から街歩きをスタート2 「恋愛成就」の神様がいる廟、早朝から働いて暑さを回避する台湾の人々3 朝食は、外で買って食べることが浸透している「朝グルメ先進国」台湾4 めくるめくB級美食グルメに舌鼓4.1 「清粥小菜」| ...

暖色系のランプが照らす、薄暗い市場。地元の「すっぴん姿」、日常感が溢れる一コマ 7

目次1 台湾・板橋(バンチャオ)|グルメ食べ歩きの開始前に、市街地を観光2 台湾・板橋(バンチャオ)|「生炒魷魚」にて絶品グルメのイカスープに舌鼓3 焼き餃子、鍋にペタペタ貼って調理するから、中国語では「鍋貼」4 台湾・板橋(バンチャオ)| ...

図書館前の池に咲いていた花 8

目次1 台湾・北投(ベイトウ)|公私クサクサ、ちょっとした「傷心旅行」としてスタートした、ひとり温泉旅2 台湾・北投(ベイトウ)|「漢奇肉羹店」で全三種類の麺にトライ。すべてが「ナンバーワン」になる安定の美味しさだった3 台湾・北投(ベイト ...

-台北
-

Copyright© アジアの何か。 , 2024 All Rights Reserved.